トランプ大統領、ノーベル平和賞受賞ならず
2025年10月10日、ドナルド・トランプ米大統領がノーベル平和賞を受賞できなかったことが明らかになりました。トランプ氏は以前から「自分がノーベル平和賞に最もふさわしい」と公言しており、世界の指導者たちにも自身の功績を積極的にアピールしてきました。しかし、今回の結果を受けて、米ホワイトハウスは「ノーベル委員会は平和よりも政治を優先している」との批判的なコメントを発表し、波紋を広げています。
トランプ氏の主張と推薦者たち
トランプ大統領は、自身のノーベル平和賞受賞への強い意欲を隠していません。「多くのことでノーベル賞を受賞するつもりだ」「4回か5回は受賞すべきだった。私は7つの戦争を終結させた。これまでの大統領や首相で、これに匹敵することを成し遂げた人物はいない」と繰り返し主張してきました。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ノルウェー・ノーベル委員会にトランプ氏を推薦した数少ない世界の指導者の一人として知られています。ネタニヤフ首相は「平和賞にあなたを推薦している。それは十分に値するものだ」とトランプ氏に伝えたとされています。
トランプ氏が主張する「7つの戦争終結」
トランプ大統領が自身の功績として挙げている「7つの戦争の終結」には、カンボジアとタイ、コソボとセルビア、コンゴとルワンダ、パキスタンとインド、イスラエルとイラン、エジプトとエチオピア、そしてアルメニアとアゼルバイジャンの紛争が含まれています。
トランプ政権はこれらの実績を強調していますが、専門家の間では評価が分かれています。一部の停戦はわずか数日しか続かず、和平合意が長期的に持続するかどうかは不透明な状況です。それでも、トランプ氏の支持者たちは「彼は多くの平和合意を世界中で結んできた」として、受賞に値すると考えています。
アメリカ国民の反応
BBCの取材によると、首都ワシントンを訪れたアメリカ人に対して、トランプ氏がノーベル平和賞を受賞するために何を実現すべきかを尋ねたところ、さまざまな意見が寄せられました。
ある市民は「ガザでの平和を実現してほしい」と語り、中東情勢の安定を期待する声がありました。別の市民は「彼が最も簡単にできることの一つは、注目を集めていないが完全な混乱に陥っているハイチの問題に取り組むことだ」と提案しました。
トランプ氏の支持者からは肯定的な意見も聞かれました。「彼の第一期政権では中東の平和に非常に近づいていた。2016年の選挙戦で掲げた道を続けていけば、受賞の可能性は十分にある」という声や、「彼は世界の多くが戦争を望んでいる中で平和を求めている。優れた候補者だと思う」といった評価がありました。
一方で、懐疑的な意見も少なくありません。「いいえ、そうは思わない。彼は平和を愛する人物ではない」「受賞すべきではないと思う」という否定的な声も聞かれ、アメリカ国内でも意見が二分していることがうかがえます。ただし、「何でも起こり得る」という慎重な見方を示す人もいました。
ノーベル平和賞の選考基準とオバマ元大統領との比較
ノーベル平和賞の名の由来となったスウェーデンの発明家アルフレッド・ノーベルの遺言によれば、平和賞は「国家間の友好関係のために最も多くの、あるいは最も優れた仕事をした人物」に授与されるべきとされています。
前任者のバラク・オバマ元大統領は、就任1年目の終わりにノーベル平和賞を受賞しました。授賞理由は、核不拡散の推進とイスラム諸国との関係改善への努力が評価されたものでした。トランプ政権は、「彼(トランプ氏)はそれよりもはるかに多くのことを達成している」と主張しています。
今年の受賞を逃した理由
2025年のノーベル平和賞には338件の推薦がありました。ノルウェー・ノーベル委員会の5人のメンバーが平和賞の受賞者を選考する責任を負っていますが、委員会の大多数はトランプ氏に対して公に反対の姿勢を示してきたとされています。
しかし、トランプ氏が今年の受賞を逃した主な理由は別のところにあります。今年の賞の推薦締切は1月だったため、トランプ氏がホワイトハウスに復帰してから受けた推薦は、2026年10月に発表される来年の賞に向けてカウントされることになります。つまり、今年の受賞の可能性は、タイミング的な要因により元々低かったのです。
ホワイトハウスの反応と今後の展開
受賞を逃したことを受けて、米ホワイトハウスは「ノーベル委員会は平和よりも政治を優先している」との批判的な声明を発表しました。この発言は、委員会の選考プロセスに対する不満を露わにしたもので、国際的な注目を集めています。
トランプ大統領の憤りがどこに向かうのか、世界中が注視しています。過去にも、自身に対する批判や不利な決定に対して強く反応してきたトランプ氏だけに、今回の結果がどのような影響を及ぼすのか、外交関係や国際協調の場面での態度に変化が現れる可能性も指摘されています。
ノーベル平和賞受賞への道のり
一部の市民が提案したように、トランプ大統領がノーベル平和賞を受賞するためには、より具体的で持続可能な平和の実績を示す必要があるでしょう。「核兵器の廃絶に向けた真剣な取り組み」を求める声もありました。
中東情勢、特にガザでの平和実現は多くの人々が期待する重要な課題です。また、国際社会から十分な注目を集めていない地域紛争への取り組みも、評価につながる可能性があります。トランプ氏の支持者が指摘するように、第一期政権で進めていた中東和平プロセスを継続し、具体的な成果を上げることができれば、来年以降の受賞の可能性は高まるかもしれません。
国際社会の評価
トランプ大統領の外交政策に対する国際社会の評価は複雑です。一方では、伝統的な同盟国との関係を重視し、複数の地域で紛争解決に向けた取り組みを進めてきたことは事実です。他方では、その手法や発言が物議を醸すことも多く、国際協調の枠組みから距離を置く姿勢も見られました。
ノーベル委員会の選考は、単なる表面的な成果だけでなく、その過程での姿勢や長期的な影響も考慮されます。トランプ氏が主張する「7つの戦争の終結」についても、その持続性や実質的な効果が問われることになるでしょう。
まとめ
トランプ大統領のノーベル平和賞受賞への強い意欲は明確ですが、今年の受賞は実現しませんでした。推薦締切のタイミングという技術的な要因もあり、来年以降に向けて改めて挑戦することになります。
ホワイトハウスの「ノーベル委員会は政治を優先している」という批判は、今後の国際関係にも影響を与える可能性があります。トランプ氏の憤りがどのような形で表れるのか、そしてそれが外交政策にどのような影響を及ぼすのか、世界中が注目しています。
2026年のノーベル平和賞に向けて、トランプ大統領がどのような平和外交を展開していくのか、その動向から目が離せません。ガザでの平和実現や核軍縮への取り組みなど、国際社会が期待する課題に対して、具体的で持続可能な成果を示すことができるかどうかが、受賞への鍵となるでしょう。