NBAが6年ぶりに中国に復帰――民主化ツイートをきっかけとした中国市場の空白を終え、2025年NBAチャイナゲームズがマカオ開催へ
2025年10月、バスケットボールファン待望の朗報が届きました。アメリカのプロバスケットボールリーグ(NBA)が、中国での開催が実に6年ぶりに復活します。2019年以降、政治的な出来事が影響した中国市場での「空白期間」を経て、2025年10月10日・12日の2日間、マカオのヴェネチアンアリーナを舞台に「NBA China Games 2025」が開催されます。本記事では、今後の話題性、試合の舞台裏、そして両国にとっての意義までをやさしく詳しく解説していきます。
何が起きていた? NBAと中国の「6年間」
2019年、当時のヒューストン・ロケッツのゼネラルマネージャー、ダリル・モアリー氏がツイッター上で香港の民主化運動を支持したことが発端となり、NBAとの関係が急激に悪化しました。NBAコミッショナーであるアダム・シルバー氏がこのツイートに対する処分をしなかったことに中国側が反発、中国国内でNBAの試合中継が中止されたり、コラボレーションがストップしたりする事態に発展しました。このいわゆる「NBA中国凍結」状態は、2025年の今回の開催まで実に6年間続いていたのです。
この間、NBAは中国市場と距離を置き、アジアでは主に日本などでグローバルゲームを展開してきました。しかし、中国のバスケットボールファンやNBA関係者にとっては、再開の機会を待望する「空白の期間」でありました。
復活の背景――政治とビジネスの複雑な糸
今回のNBAの中国復帰は、単にスポーツイベントが再開するだけの話ではありません。その背景には、NBAと中国、そしてマカオの統合型リゾート(IR)を運営する「サンズチャイナ」(Las Vegas Sandsの子会社)の複雑な戦略が絡んでいます。サンズチャイナはNBA中国のオフィシャルIRパートナーであり、今回のイベントのオフィシャルプロモーターも務めています。
さらに、サンズチャイナの親会社であるラスベガス・サンズのオーナー一家が、昨年末にダラス・マーベリックスの株式を取得し、そのCOO(最高執行責任者)がチームのガバナンスに携わるなど、NBAとカジノ資本との関係がますます深まっています。また、ブルックリン・ネッツのオーナーは中国のIT大手アリババの会長、ジョー・ツァイ氏であり、中国ファンにとっては特別な存在感を持つチームでもあります。こうした人脈や資本のつながりが、NBAの中国市場復帰を後押しした面もあるでしょう。
2025年NBAチャイナゲームズ開催概要
- 開催日:2025年10月10日(金)、12日(日)
- 開催地:マカオ・ヴェネチアンアリーナ
- 出場チーム:ブルックリン・ネッツ×フェニックス・サンズ(2試合)
- 主催:サンズチャイナ(Las Vegas Sandsグループ)
- 特徴:NBA Fan DayやNBA Caresコミュニティ活動など、体験型イベントも充実予定
マカオでのNBAプレシーズンゲームは、前回は2007年にクリーブランド・キャバリアーズ対オーランド・マジックがコタイアリーナで行われて以来18年ぶり、中国本土では2019年ロサンゼルス・レイカーズ対ブルックリン・ネッツ以来6年ぶりとなります。中国やアジアのバスケットボールファンにとって、待ちに待ったイベントとなるのです。
マカオ開催の意義――観光・経済効果とNBAの戦略
マカオは「東洋のラスベガス」とも称される世界有数の観光・カジノ都市であり、世界的なイベントの誘致に積極的な自治体です。今回のNBAチャイナゲームズも、マカオ政府とサンズチャイナが密接に連携した「国家的事業」として位置づけられており、単なる試合開催にとどまらず、都市全体を巻き込む一大プロモーションとなっています。
また、マカオでの開催は、中国本土での開催とは異なる意味合いも持ちます。中国の法規制や政治状況を考慮しつつ、国際的なバスケットボールファンを集客できる「緩衝地帯」としての役割をマカオが担うことになります。サンズチャイナ傘下のIRにはNBAフラッグシップストアも先行オープンするなど、バスケットボールの熱気を一年中楽しめる環境づくりも進んでいます。
両国のファン、そして世界へのメッセージ
今回の試合に出場するブルックリン・ネッツとフェニックス・サンズは、いずれもスター選手を擁する人気チームです。ネッツの中国資本とのつながりや、サンズの躍進する若手軍団は、現地ファンの期待をさらに高めるでしょう。
また、今回の試合は単なるプレシーズンゲームにとどまらず、NBAが再び中国市場に本格的に回帰する「象徴的なイベント」となります。NBAはこれを機に、中国でのファン拡大やビジネスチャンスの再開を本格化させる方針で、今後3年間の連続開催も計画されています。2026年にも中国でさらに2試合が予定されているとの情報もあります。
一方、中国のバスケットボールファンにとっては、6年ぶりの本場NBAとの「再会」となります。現地メディアやSNSでも大きな盛り上がりを見せており、チケット発売や関連イベントの詳細が注目されています。
今後の展望――スポーツと政治、ビジネスの行方
2025年NBAチャイナゲームズの成功は、NBAと中国の今後の関係を大きく左右するでしょう。もし今回のイベントが順調に運営され、大きな経済効果と社会的インパクトを生み出せれば、NBAの中国における地位はさらに強固なものとなるはずです。
ただし、NBAが中国市場でビジネスを展開する上では、今後も政治的・社会的なリスクが常につきまといます。2019年の出来事は、グローバル企業が「言論の自由」と「中国市場」の狭間でいかにバランスを取るべきかという課題を浮き彫りにしました。今後のNBAの動向は、スポーツビジネスに携わるすべての関係者にとっても、大きな示唆となるでしょう。
まとめ――ファン、選手、そして世界の期待を背負って
「NBAが中国に帰ってきた」。このニュースは、バスケットボールファンだけでなく、スポーツビジネス、観光業界、メディア関係者にとっても非常に大きな意味を持ちます。長く続いた空白期間を経て、再びアジアの熱気にNBAが触れる瞬間――2025年10月のマカオは、世界中の注目を集めるでしょう。
詳細なチケット情報やイベントスケジュールについては、今後サンズチャイナやNBAオフィシャルから随時発表されます。中国本土やアジア各地からの観客、バスケットボールを愛するすべての人に、この「歴史的な再始動」を見届けてほしいと思います。