2025年インフルエンザ予防接種シーズン本格始動
2025年10月7日、全国各地の医療機関でインフルエンザ予防接種が本格的に開始されました。今年は新型コロナウイルスとの同時流行が懸念される中、医療機関では早めの接種を強く推奨しています。
予防接種開始時期と接種スケジュール
多くの医療機関で10月1日から接種を開始しており、最適な接種時期は10月中旬から11月末とされています。これは、ワクチンの効果が現れるまで約2週間かかり、効果が約5ヶ月持続することから、インフルエンザの流行ピークである12月から3月に備えるためです。
接種回数については、13歳以上は1回接種で十分とされていますが、13歳未満は2回接種が推奨されており、2-4週間の間隔を空けて接種することが求められます。特に初回接種の子どもについては、必ず2回接種することが重要です。
経鼻インフルエンザワクチンの注目と注意点
今シーズンの話題の一つが、従来の注射型ワクチンに加えて「点鼻ワクチン」と呼ばれる経鼻インフルエンザワクチンの存在です。この新しいタイプのワクチンは、鼻腔内に噴霧することで接種でき、注射の痛みを避けることができるため、特に小児への接種において注目されています。
しかし、経鼻ワクチンには注意すべき点もあります。従来の注射型ワクチンと比較して、効果の持続期間や対象年齢に制限がある場合があり、医師との十分な相談が必要です。また、鼻づまりや上気道感染症の症状がある場合は、接種を避けるべきとされています。
小児科での予防接種体制強化
小児科医院では、インフルエンザ予防接種の受け入れ体制を強化しています。接種期間は2025年10月1日から12月27日までとする医療機関が多く、混雑を避けるため予約制を採用するクリニックが増加しています。
特に混雑が予想される時間帯として、平日朝9時頃、平日15時以降、土曜日、そして10月・11月の期間全体が挙げられており、保護者には早めの予約と計画的な接種を呼びかけています。
ワクチンの効果と安全性について
厚生労働省のデータによると、インフルエンザワクチンの予防効果は約50-60%とされています。「100%ではない」ことに疑問を持つ方もいらっしゃいますが、この数字は非常に重要な意味を持ちます。
ワクチンの効果は発症予防だけでなく、重症化予防という点で非常に優秀です。具体的には、相対的に60%のリスク減少効果があり、かかっても軽症で済む可能性が高くなります。特に高齢者では82%の死亡予防効果が確認されており、入院リスクの軽減にも大きく貢献しています。
副作用と安全性への配慮
ワクチンの副作用について、多くの方が心配されていますが、実際には軽微な副作用が主で、重篤な反応は非常に稀です。よくある軽い副作用として、10-20%の人に接種部位の赤みや腫れ、軽い発熱(37度台)、倦怠感、筋肉痛などが見られますが、これらの症状は2-3日で自然に治まることがほとんどです。
重篤な副作用については、アナフィラキシー反応やギラン・バレー症候群などが挙げられますが、その発生率は100万回に1-2回程度と極めて稀です。有害事象報告率は13.7件/10万回接種、うち重篤1.36件/10万回接種とされており、これは通報ベースの数字であり、実際の発生率はこれよりも低いと考えられています。
新型コロナウイルスとの同時接種
2025年秋の重要なポイントとして、新型コロナウイルスワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種が可能であることが挙げられます。日本感染症学会など複数の専門学会は、冬の流行に備え、2025年10月から始まる新型コロナワクチンの定期接種を強く推奨しています。
2025年秋からのコロナワクチンは、流行株であるNB.1.8.1系統に対応しており、重症化や死亡リスクを抑える効果が期待できます。医師と相談し、計画的な接種を検討することが推奨されています。
mRNAインフルエンザワクチンの開発状況
将来に向けた展望として、コロナワクチンで話題になったmRNAワクチン技術を用いたインフルエンザワクチンの開発が進められています。現時点(2025年9月)で日本で承認・接種可能なmRNAインフルエンザワクチンはありませんが、開発は最終段階まで進んでいます。
主要な開発グループとして、モデルナ社(米国)、ファイザー社(米国)、第一三共(日本)が挙げられ、海外の最終臨床試験では、現在使われている標準的なインフルエンザワクチンと比較して、発症予防効果が約27%高いという結果が出ています。
ただし、副作用が強めに出る傾向はあるものの、重篤な有害事象の発生率は既存のワクチンと差がないとされており、日本で接種されるようになるまでには、少なくともあと1〜2年はかかる見通しです。
医療機関での取り組み強化
東京ビジネスクリニックをはじめとする都内の医療機関では、インフルエンザ予防接種の外来での接種を本格的に開始しています。多くのクリニックが混雑を避けるため、事前予約制を導入し、待ち時間の短縮と感染リスクの軽減を図っています。
医療機関では、事前問診により卵アレルギーがある方、過去にワクチンで副作用が出た方、免疫抑制剤を服用中の方などについては、個別に医師との相談を実施しています。
日々の感染症予防対策の重要性
予防接種に加えて、日々の生活習慣も感染症予防には欠かせません。こまめな手洗いと消毒により、ウイルスが手についた状態で口や鼻から侵入することを防ぐことができます。外出先から帰宅後や食事前には、石鹸を使って丁寧に手を洗うことが重要です。
今シーズンは新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行が懸念される中、早めの予防接種と日常的な感染対策の両方を組み合わせることで、より効果的な感染症予防が期待できます。医療機関では引き続き、計画的なワクチン接種を呼びかけています。