マチュー・ブレイジィのデビューが生んだ新生シャネル ー SS26コレクションレポート

シャネルは伝統と革新が交錯するフランスの名門メゾン。その歴史に新たな1ページを加える出来事が2025年10月、パリで行われました。新アーティスティック・ディレクター、マチュー・ブレイジィが手掛ける初のシャネルコレクションです。ファッション界で最大級とされる仕事を与えられたブレイジィのデビューは、単なるショーを超えて、多様な物語と可能性を提示しました。

歴史あるシャネルに新風 ーマチュー・ブレイジィとは

1970年代生まれでベルギー出身のマチュー・ブレイジィは、これまでボッテガ・ヴェネタやメゾン・マルジェラなど数々のブランドで実績を積み、その独自の美意識と構築的なデザインで高い評価を得てきました。シャネルのアーティスティック・ディレクター就任は、彼自身にとってもブランドにとっても大きな挑戦と進化の始まりでした。

自由と継承の対話 ー コレクションのコンセプト

「今回のショーは“自由”の物語なんです」。ブレイジィが執り行ったのは、創業者ガブリエル・シャネルとの仮想的な三部作の対話。女性が自ら自由を着こなす、そのためのワードローブの提案です。機能性と官能性を分かちがたく組み合わせ、“シャネルウーマン”をアップデートしています。

パワーのパラドックス:メンズ的要素と新しい女性像

スーツジャケットや精緻なパンツといったメンズライクなテーラリングは、シャープな輪郭を演出しながら、現代女性の積極性とエレガンスを強調。これまでのフェミニンなイメージと力強さとの新たな融合です。

デイウェアではシャネルのクラシックが再解釈されています。たとえば2.55バッグは“クラッシュ&チェリッシュ”な加工で持つ人の歴史を感じさせ、使い込まれたような質感が愛情深く添えられています。また、よれたカメリアやソフトなニットスーツが知的かつ柔らかな表情を生み、アール・デコ建築や伝統的なシャネルの精緻なラインを思い起こさせます。

国境なきドレス ー マテリアルとシルエットの実験

  • ごく繊細なシースルーニット
  • 鮮やかなシルクの裏地を配したウエア
  • 定番のバイカラートゥのシューズ
  • バロックパールやガラス細工の“惑星”モチーフのジュエリー

素材や装飾も挑戦的でした。透明感のあるニットとコントラストを効かせたシルクの裏地、伝統と未来を繋ぐアクセサリーなど、幅広い実験が盛り込まれています。最終的にたどり着いたのは“ユニバーサルドレス” —— 国や文化にとらわれない普遍的なドレス像です。

セレブリティたちがショーに集結

この歴史的な瞬間を目撃しようと、ペドロ・パスカルマーゴット・ロビーティルダ・スウィントンソフィア・コッポラニコール・キッドマンといった世界的セレブリティやクリエイターたちが会場に華を添えました。その姿は、シャネルの影響力がいかにグローバルに及ぶかを体現しています。

  • ペドロ・パスカル:その端正な出で立ちが話題に
  • マーゴット・ロビー:クラシカルとモダンの融合スタイルで登場
  • ティルダ・スウィントン:唯一無二の個性を強調するファッション
  • ソフィア・コッポラ:監督ならではの繊細な美意識とシャネルの親和性
  • ニコール・キッドマン:貫禄あるエレガンスを披露

ショー後の会場は、熱気と期待に包まれました。ファッション関係者のみならず、世界のメディアやSNSでも終始話題が絶えませんでした。

クラシックの冒険的解釈と、機能性の追求

今回のコレクションの特徴は、クラシックアイテムに込めた遊び心と、現代的な利便性の両立と言えるでしょう。たとえば、バッグの内側には伝統のバーガンディ色のライナーが覗き、細部へのこだわりを通じて“歴史を包み込む”姿勢が見られます。

流行やトレンドへの迎合ではなく、“自分のためのエレガンス”をアップデートした点にも注目です。着る女性自身が自己決定し、自信を持って新しい時代を歩む。そんなメッセージが全編を貫いています。

今後への期待とシャネルの進化

ブレイジィのデビューは、単なるデザインの刷新に留まりません。“シャネルとは何か”という問いへの新しい答えを提示しました。過去の遺産へのリスペクトと現代への鋭い感性、そして未来への希望が見事に融合しています。

パリでのショー会場の熱狂を経て、世界のファッション市場はブレイジィのシャネルがどのような進化を遂げていくのか、ますます注目しています。シャネルウーマンの“自由”を象徴するSS26は、既に歴史に刻まれることとなりました。

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