BCPがペルーで史上初の仮想通貨バンキングパイロット「CriptoCocos」を開始
ペルー最大手の銀行、BCP(Banco de Crédito del Perú)は2025年10月、ペルー国内初となる銀行公式の暗号資産(仮想通貨)売買プラットフォーム「CriptoCocos(クリプトココス)」のパイロット運用を開始しました。
本記事では、この斬新なバンキングパイロットの概要、ペルー・金融業界への影響、規制動向、および利用条件や今後の展望について、できるだけ分かりやすく解説します。
注目ポイント
- CriptoCocosのパイロット運用開始:ビットコイン(BTC)とUSDC(ステーブルコイン)が対象
- ユーザー待機リストの開設:参加希望者の募集が公式に始動
- 規制サンドボックス下での運用:SBS(ペルー銀行・保険監督庁)の監視のもと試験導入
- パイロット初期募集規模:最大5,000名が参加予定
- 資産保管はBitGo Trust Companyによるカストディ
- 暗号通貨の利用用途・参加条件・今後のペルー金融への反響を詳述
新サービス「CriptoCocos」の特徴と運用体制
BCPによる「CriptoCocos」パイロットは、
ビットコイン(BTC)およびUSDC(米ドルに連動する仮想通貨)
の売買プラットフォームであり、
銀行公式としてはペルー初、南米諸国でも先駆的な取り組みです。
このパイロットは規制当局SBSの主導する
「レギュレトリーサンドボックス」
制度の下で、消費者保護・リスク管理・透明性を担保しつつ運用されます。
ユーザーは、この公式サイトで待機リストに登録し、審査を経て参加資格を得ます。審査通過者は最長20日以内にパイロットへの招待・参加が認められる予定で、
総参加者規模は最大5,000名
を目標としています。
利用可能な資産:ビットコインとUSDC
- ビットコイン(BTC):世界で最も知られる分散型暗号通貨
- USDC:Circle社の発行する米ドルに裏付けられたステーブルコイン。主に越境決済・送金・リスク分散目的で活用されています。
プラットフォームの取引を「BitGo Trust Company」が厳重にカストディ(資産の信託・保管)し、BCP自身は仮想通貨のポジションを持たず、あくまで「顧客の指示に基づく仲介役」となる運用体制です。
システム内は
クローズド回路(環境)
で外部リスクを最小化。各取引には1%の手数料が設定されています。
参加条件と利用フロー
- BCPの口座保有歴が最低6ヵ月以上
- 「信用格付け」基準をクリアしている(信用情報が「正常」と分類)
- 口座残高が3,000米ドル相当以上
- 提供される「仮想通貨知識テスト」に合格(基礎的なリテラシー要件)
- PEP(重要な公的地位にある人物)およびその家族は不可
選ばれたユーザーは、CriptoCocos内でBTCやUSDCを購入・売却・保存でき、現時点では「資産運用・貯蓄用途」が主ですが、今後は
USDCを使った銀行間決済や店頭払い
など決済用途への拡大も視野に入っています。
ペルーの仮想通貨規制および本パイロットの意義
現状ペルーでは、暗号資産売買に関する明確な法規制やライセンス制度は存在しません。唯一の規制は「暗号資産サービス事業者(VASPs)」に対する
マネーロンダリング(AML)への対策義務のみとなっています。また、証券取引市場法により情報公開・市場の透明性・市場乱用禁止などは定められていますが、
仮想通貨自体は公的な監督・保証対象外。
このため、今回のCriptoCocosのような大手銀行による実証実験は、
「暗号資産の規制のあり方」や「消費者保護ガイドライン策定」に大きな影響を及ぼす可能性が高いです。
取引のリスク(詐欺や激しい価格変動、マネロン利用の危険性等)を的確に評価・コントロールする指針が進むものと見られています。
なぜ今、ペルーで暗号資産取引のパイロットが必要なのか?
- 既存金融への不信・インフレリスクへのヘッジ意識
- 出稼ぎ送金や越境決済の利便性向上(安価で即時性高いUSDC活用)
- ペルー金融システム全体のデジタル化推進、オープンバンキングへの布石
- グローバルなフィンテック基準・AMLへの対応強化
ユーザー・金融業界へのインパクト
このCriptoCocosはBCPの信用力を背景に、
仮想通貨投資の「信頼できる入り口」として、従来のウェブ/スマホ型海外取引所と一線を画します。
既存の取引所に対する規制の未整備や詐欺事件・資産凍結などのリスクに不安を抱える個人/法人にとって、公的銀行が仲介・資産保管するサービスは
安心感・透明性・規制順守といった利点が大きいです。
一方で、市場全体の仮想通貨利用状況は現時点で必ずしも盛り上がっているとは言えません。
SMV(ペルー証券市場監督庁)は「仮想通貨取引には監督・保証なし、投資家は充分な注意が必要」と数年にわたり警告してきました。
金融業界内部でも、「どこが規制を管轄すべきか」(SBSとSMVで分担議論)、
「AML・KYC基準強化のみで十分か」、取引実態把握・税制整備の遅れといった課題が指摘されています。
規制当局・業界関係者の見方
-
法律事務所Damma Legal Advisors弁護士アルバロ・カストロ氏は
「銀行が仮想通貨流通に関わることで、これまでにない役割分担や規制枠組みが不可欠。
今回のパイロットから得る実際的なノウハウは大きな意義を持つ」と見解を述べています。 -
将来は「銀行エコシステム内でのUSDC決済」「他銀行への拡大」も期待されており、
パイロットの成果いかんで当局は
新たな規制案(仮想通貨業界向けの網羅的ルール)
の策定を意識する見通しです。
BCPの経営基盤と今後の成長性
BCPは2024年末時点で自己資本比率15.9%を維持し、
世界的なバーゼルⅢ規制水準を上回る十分な健全性と流動性を確保しています。積極的なデジタル化投資や「見える化」「取引即時性」向上にも取り組んでおり、業界内のフィンテック先進銀行としてリードする立場を強化しています。
CriptoCocosのノウハウは将来、ペルーのみならず周辺国銀行の仮想通貨導入モデルにも活用される可能性があり、新たな「金融イノベーション拠点」としての地位確立が期待されています。
まとめ:BCPのCriptoCocosがもたらすもの
- 銀行公式の仮想通貨売買サービスという信頼感・利便性
- 規制サンドボックス活用で「ペルー型仮想通貨取引枠組み」を形成する実証実験
- 金融包摂、送金・決済コスト削減、利用者保護ルール強化を通じたイノベーション促進
今後への展望と課題
現時点ではあくまで「パイロット(実証実験)」であり、正式なライセンス事業・全顧客展開には規制法整備や運用実績の検証が不可欠です。
しかし、BCPのCriptoCocosが示す新しい金融のかたちは、ペルーのデジタル金融進化を象徴するものとして、今後も注目を集めるでしょう。