元関脇・妙義龍の断髪式に寄せて――振分親方、新たな門出と仲間たちの絆
妙義龍の歩みと「振分親方」襲名
2025年10月5日、元関脇・妙義龍の断髪式が両国国技館で華やかに執り行われました。日本体育大学時代に国体で優勝し、平成21年5月、境川部屋に入門。幕下15枚目付出しで大相撲初土俵を踏みました。その後、十両昇進をきっかけに四股名「妙義龍」と改名。以来、彼は「花のロクイチ組」の一人として、華麗な技で本場所を沸かせてきました。
怪我による休場で番付を三段目まで落としながらも、平成23年7月場所には十両復帰を果たし、さらに十両優勝を重ねました。平成24年一月場所では東前頭5枚目として初の技能賞を受賞し、「技の妙義龍」の呼称に相応しい活躍を見せます。その後も6度の技能賞獲得、複数の金星など、数々の名勝負と記録を残しました。2024年9月場所を最後に現役を引退し、「振分親方」を襲名、新たな道を歩み始めます。
現役時代の輝き、そして信念
妙義龍の現役時代を語るうえで外せないのが、横綱・白鵬との初対決で白星・金星を挙げた取組です。名横綱を敗り、土俵中に響く大歓声は、今も多くの相撲ファンの心に深く刻まれています。直向きに稽古と向き合い続け、幾度の苦難にも屈することなく、粘り強く土俵に立ち続けた姿は、後輩はもちろん、多くの後援者に親しまれてきました。
特に「技術の妙義龍」として六度の技能賞を受賞した点は、幕内力士の中でも稀有な存在感を放っています。足技、立合い、投げ、攻守全てに妥協せず、進化を続ける姿勢からも、相撲への深い情熱が伝わります。引退会見では、白鵬戦での初白星・初金星を「思い出の取組」として挙げています。
断髪式――感動と感謝の瞬間
両国国技館で開かれた断髪式には、数多くの相撲関係者や友人、後援者、ファンたちが集まりました。力士としての最後の儀式であるこの日、振分親方は新たな決意を固めた様子でした。「新たな気持ちでまた一歩を踏み出したい」と会見で語った姿は、多くの来場者の心に感動を与えました。
晩年は怪我に悩まされながらも、七度の十両優勝、幕内での熾烈な勝負、数々の名勝負を見せ、ファンの記憶に残り続けています。この日に向け、多くの関係者が妙義龍のこれまでの努力と功績をたたえ、盛大に送り出しました。
横綱・大の里からの感謝の言葉
注目は、日体大の後輩であり現横綱の大の里が、振分親方(妙義龍)へ贈った言葉です。
- 「先輩はいつも気にかけてくださって、緊張する稽古場でもやわらかい声で話しかけてくれました。」
- 「結果が出ないときも、迷う自分に“焦らず自分の相撲を取りなさい”と優しく背中を押してくれました。」
このようなやりとりを通じて、妙義龍が後輩たちから大きな信頼を寄せられていたことが分かります。大の里も、「先輩のおかげで今の自分があります」と話し、振分親方となった妙義龍との縁に感謝しました。
断髪式参加者たち――元力士たちの再会
断髪式の場には、元松鳳山ら旧友や現役・OB力士も多数集結しました。特に、明るく個性的な風貌で知られる元松鳳山はピアスを光らせて登場し、「イケオジ化」と話題になりました。かつて同じ時代を戦った力士たちが一堂に会し、彼を送り出しました。
仲間たちとのエピソードや昔話、土俵の苦楽を分かち合った思い出話は深い絆を感じさせます。妙義龍の相撲人生を支えてきた多くの人々が、その門出を温かく祝福しました。
振分親方の今後――後進育成と新たな挑戦
断髪式にて心新たに語ったのは、「選手時代の経験を活かし、後進の力士たちに技術や心構えを伝えていきたい」という決意でした。今後は指導者として、部屋付き親方として相撲界に貢献していく意欲を示しています。
どんな状況でも懸命に取り組み、敗れてもなお努力を惜しまなかった妙義龍。その誠実さと温かな人柄は、今後も多くの力士や若者にとって目標となることでしょう。
ファン、関係者へのメッセージ
最後に振分親方は、支えてくれた全ての人へ感謝を述べ、「ここまで力を尽くせたことに、ただただ感謝しかありません。今後とも相撲界の発展に少しでも貢献していきたい」と会場に向けて語りかけました。
妙義龍としての足跡は、数多くの熱戦や名場面、記録だけでなく、人としての温かさや後輩思いの姿からも多くの人々に希望と勇気を与えてきました。振分親方の“第二の相撲人生”に、これからも大きな期待が寄せられます。