羽田アクセス線「中央線直通」を巡る現状と課題──都知事の期待と三つの改良工事とは
中央線が羽田空港へ直通する構想は、東京都心と西東京、さらには多摩地域への空港アクセスの充実を目指して注目が集まっています。東京都の小池百合子知事も2025年2月26日に
「JR羽田アクセス線西山手ルートを中央線・埼京線に接続し、多摩方面への空港アクセスを強化したい」と公言し、一気に関心が高まりました。
今回のニュース記事では、この羽田アクセス線中央線直通構想の意義や実際の運行イメージ、さらに実現に立ちはだかる三つの課題(改良工事)について、わかりやすく解説します。
1. 羽田アクセス線「中央線直通」構想の全体像
羽田空港アクセス線(JR東日本が計画)は、田町駅付近から東京貨物ターミナルを経由し、羽田空港まで新たな線路を整備し直通運転を目指す壮大な鉄道プロジェクトです。
- 東京都心から羽田空港まで乗り換えなしの直通運転が実現すれば、「アクセス時間の大幅な短縮」と「利便性向上」が見込まれます。
- ルートは東海道線田町駅付近より地下に分岐し、東京貨物ターミナル駅を経て羽田空港に至ります。
- 中央線直通構想では、さらにこのアクセス線をりんかい線・埼京線を経由して新宿駅、そこから中央線側に単線連絡線をつなぎ、多摩方面への直通も視野に入れています。
多摩地域や西東京に住む多くの方が、羽田空港へ快適にアクセスできるようになることで「観光客・ビジネス利用者の増加」と「生活圏価値向上への寄与」が強く期待されています。
2. 都知事の期待と具体的な効果
- 既存ルートでは中央線沿線から羽田空港に行く場合、東京駅か品川駅で乗り換えが必須でした。
- もし「中央線直通」が実現すれば、例えば立川から羽田空港まで51分、八王子から64分で到達できる見込みです。
- 直通運転の利便性はもちろん、沿線の暮らしの利便性や出張・旅行時のストレス軽減など、生活全体に好影響が広がります。
こうした背景から、小池都知事も羽田アクセス線西山手ルートの中央線・埼京線接続に大きな期待を表明されているのです。
3. 直通実現への三つの改良工事とその課題
理想的な「中央線直通」ですが、現実には三つの大きな改良工事が必要になります。どれも簡単ではなく、技術面・コスト面・運行計画など複数の課題が存在します。
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①新宿駅の改良
新宿では埼京線から中央線に乗り入れるための連絡線があるものの、現状は単線でキャパシティが限られています。本格的な直通運転には、「渡り線の複線化」やホーム配置の見直しなど大規模な改良が不可欠です。 -
②連絡線の複線化
埼京線と中央線を結ぶ連絡線は、現状一部単線区間が残されており、直通列車の増発やダイヤの安定化のためには「複線化工事」が必要です。 -
③折り返し設備の移設
中央線の新宿駅には列車折り返し用の設備があり、今後の直通ダイヤ設定にはこの設備の移設や増設も検討課題となります。限られた用地での施工や既存ダイヤへの影響緩和が大きなチャレンジとなるでしょう。
これらの工事には高いコストが見込まれます。さらに費用負担(JR東日本・東京都・国)についても、明確な枠組みの構築が必要です。
JR東日本も「西山手ルートについては実現に向け関係者と協議を行っている段階であり、具体的な運行計画は今後の検討課題」と公式コメントをしています。
4. 直通列車がもたらす将来的な展望
もし上記3つの課題を解決して「羽田方面直通特快」が定着すれば、西東京側の経済や観光振興だけでなく、羽田空港の国際化の推進、沿線の価値向上など、幅広い経済効果が見込まれています。
鉄道技術的な観点からも、「地下トンネル工事」「線路の転用・複線化」「大規模駅改良」など日本の鉄道技術や都市インフラ整備力を象徴するプロジェクトとなることでしょう。
- 羽田空港から中央線特快が走れば、将来的には成田エクスプレスとも連携可能となり、「羽田&成田のどちらにも繋がる中央線」という大きな利便性を創出します。
- 空港アクセスが劇的に改善されることで、国際競争力の強化、駅周辺の再開発や新たな産業誘致も促進される可能性があります。
- 一方で投資リターンや既存ダイヤへの影響、沿線住民の声といった課題への対処も不可欠です。
5. 羽田空港アクセス線の今後の進展
アクセス線全体としては2031年度の開業を目指し、工事が進行中です。このうち「中央線直通」がどの段階で盛り込まれるかは、今後関係各者の協議および技術的検討の進展次第です。
中央線沿線の皆さんにとっても、単なる「空港アクセス」以上に、地域の価値や生活の質を左右する大きなテーマとして、今後も関心をもって見守るべきプロジェクトだと言えるでしょう。
6. よくある質問
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Q: 羽田アクセス線「中央線直通」はいつ開業しますか?
A: アクセス線自体は2031年度開業を目指していますが、中央線直通が同時に実現するかは、今後の協議・工事進捗次第です。 -
Q: 現在の羽田空港への中央線からの所要時間は?
A: 現在は東京駅や品川駅での乗り換えが必要ですが、直通が実現すれば立川~羽田が約51分まで短縮される見込みです。 -
Q: 西山手ルートとは何ですか?
A: 田町・東京貨物ターミナル方面から、大井町周辺でりんかい線のトンネルに合流し、埼京線経由で新宿・中央線方面に直通する新ルートです。 -
Q: 都知事が注目した「三つの改良工事」とは?
A: 新宿駅の改良、連絡線の複線化、折り返し設備の移設の三点です。