東海道新幹線、AIを活用した車内防犯カメラ映像の検証を本格開始

東海道新幹線を運行するJR東海は、2025年11月よりAI技術を用いて車内防犯カメラ映像を分析する新たな検証を開始することを発表しました。本取り組みは、車内の安全性と顧客サービス向上を目指すもので、N700S車両の一部車両で先行実施されます。

車内防犯カメラ活用の背景と目的

日本の新幹線は世界的にも高い安全性と定時運行性を誇り、多くの利用者の信頼を得ています。しかし近年、社会の変化や事件・トラブルなどを受けて、「安心して電車に乗れる環境づくり」は鉄道各社共通の大きな社会課題となっています。
その中で東海道新幹線は早い段階から防犯カメラを車両に設置。今回はこの防犯カメラの映像データをAIで分析し、乗客の年代や性別、利用目的(ビジネス・観光・インバウンド等)などを推計できるか検証します。

検証の具体的な内容と期間

  • 実施期間:2025年11月1日(土)~11月14日(金)
  • 区間:東京駅~新大阪駅間を運行する車両
  • 対象車両:N700S車両の1号車・6号車・8号車
  • 利用する映像:客室内防犯カメラの映像

検証は、上記期間・区間・車両のみに限定され、AIが防犯カメラの映像から年代・性別・ご利用目的などを統計的に推計できるかが主なテーマとなります。
取得された映像データは、防犯目的および検証にのみ使用され、厳正に管理。検証終了後には速やかに削除されます。

AI分析技術導入の意義と期待される効果

従来の車内防犯カメラは、録画・記録を主目的として活用されてきました。しかし今後は、AIによってリアルタイムに状況を解析したり、乗客構成の傾向把握を行うことで、より質の高いサービスとセキュリティ対策が期待されています。

  • 異常時の早期発見・対応
    リアルタイムでAIが異常行動や混雑度を検知することで、スタッフが迅速に対応できる体制を構築。
  • 乗客サービスの最適化
    年代や利用目的を統計的に推測することで、ダイヤ編成や予約システムの改善、観光・ビジネス利用者への情報発信などに役立てる。
  • 国際化対応
    インバウンド(訪日外国人旅行者)の動向を把握し、案内表示や多言語サービス強化へのヒントとする。

鉄道各社に広がる「AI × 防犯カメラ」活用

鉄道各社は近年、防犯カメラの設置を急速に進めており、東京都内でも主要4社が全車両への設置を完了、2026年度までにはほぼ全社で設置が終わる見通しです。

これまでの映像「録画・証拠保全」から、AIによる「リアルタイム分析」「異常検知」へと活用方法が進化しており、事件や事故の未然防止、運転士・乗客の「見守られている」安心感の向上が期待されています。

プライバシーへの配慮と情報管理

技術の高度化に伴い、「プライバシー保護」に対する利用者の不安や懸念も指摘されています。今回の東海道新幹線の検証では、取得したすべての映像データは厳正に管理され、検証終了後に完全に削除されることが明記されています。また、映像解析も個人を特定しない統計的な推計のみに絞っており、顔や動作の個人特定には利用されません。

  • 撮影対象箇所の事前告知:撮影対象の号車やカメラ位置が公表され、利用客は撮影を避けることも可能
  • 目的外利用の禁止:防犯上の目的と検証以外には一切使用しない
  • 検証後の速やかなデータ削除:不要なデータは保持しない

今回の試みは、技術活用とプライバシー保護の両立に向けたモデルケースの一つとして注目されます。

東海道新幹線のさらなる安全・サービス向上施策と連動

安全・安心への取り組みは本件だけではありません。東海道新幹線ではこれまでも

  • 全車両への防犯カメラ設置
  • プラットホームの耐震化や防災設備の強化
  • 完全自動運転(GOA2クラス)導入に向けたシステム開発
  • 有人見守り体制やバリアフリー対応

など、ハード・ソフト両面から取り組みが進められています。画像認識技術による安全確認支援装置や、チケットレス化、新サービスの導入など、顧客利便性と安全意識の両立を目指している点が特徴です。

利用者の声と社会的な意義

実際に車内防犯カメラのAI分析に関しては、「防犯の強化」や「安心できる車内づくり」への期待が大きい一方、「映像利用の範囲」や「情報の安全な管理」については慎重な対応を求める声もあります。
公共交通機関全体での「セキュリティとプライバシーの両立」モデルとして、東海道新幹線の今回の検証が社会にもたらす意義は非常に大きいといえるでしょう。

まとめ

東海道新幹線で進むAIを使った車内防犯カメラ映像の分析検証は、日本の公共交通における安全性・利便性の向上に向けた大きな一歩です。
最新技術の活用と顧客のプライバシー配慮のバランスを重視し、利用者が「安心して移動できる社会」の実現へと、今後も着実に歩みを進めていく姿勢が示されています。

参考元