東京科学大学と政策研究大学院大学が包括連携協定を締結

2025年10月1日、東京科学大学(Science Tokyo)と政策研究大学院大学(GRIPS)は、科学技術イノベーションの創出と人材育成を目的とした包括連携協定を締結しました。この協定は、両大学が持つ専門性を活かし、日本の科学技術政策の高度化を図る重要な取り組みとして注目されています。

締結式は東京科学大学大岡山キャンパスにおいて開催され、政策研究大学院大学の大田弘子学長と東京科学大学の大竹尚登理事長によって協定書への署名が行われました。この包括協定は、研究・教育・運営の3つの領域にまたがる幅広い連携を実現するものです。

両大学の目指す方向性

東京科学大学は、複雑な社会課題や未知の危機に対し、開かれた大学として国内外・産官学の知を結集してその解決を図り、「善き未来」を創造することを目標としています。一方、政策研究大学院大学は、日本を代表する政策研究・教育の拠点として、社会課題に取り組む産官学のハブとなることを目指し、科学技術イノベーション政策に力を注いでいます。

今回の連携により、科学技術分野における政策の視点強化を図る東京科学大学と、科学技術分野の知見を採り入れることで政策研究・教育の深化を期待する政策研究大学院大学が、それぞれの強みを生かした協力体制を構築することになります。

具体的な連携内容

この包括連携協定では、以下の4つの主要な連携事項が定められています。

1. 研究面での連携
科学技術と政策が関連する分野における共同研究を推進します。特に注目される取り組みとして、「ミッション志向型トランスフォーマティブ研究およびイノベーションの推進方策」「世界をリードしている技術シーズの市場展開を可能とするオープン・クローズ戦略」「高度科学技術イノベーション人材の需給や育成」などの重要課題への取り組みが予定されています。

2. 教育面での連携
学生間の交流を含む教育面での連携を進めます。両大学の学生・教員による交流イベントやセミナーでの相互作用、公務員向け研修コースの充実、履修証明プログラムへの最先端技術の知見導入が計画されています。将来的には、共同による新科目や教育課程の新設も視野に入れています。

3. 大学運営面での連携
事務職員の人事交流や研修の共催等、大学運営面での協力も行います。これにより、両大学の運営基盤の強化を図ります。

4. その他の連携
産業界との連携や国際交流等、幅広い分野での協力関係を築きます。

戦略的な研究推進の枠組み

研究面での連携では、政策研究と科学技術研究を融合する共同研究の推進が重要な柱となります。両大学はそれぞれの研究成果を生かした共同研究を進め、科学技術・イノベーション政策に関する政策ニーズへの対応や積極的な政策提言を行っていく予定です。

また、科学技術と政策研究の共通理解から、日本が戦略的に注力すべき重点課題を明確化することも重要な取り組みです。政策研究大学院大学が科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業(SciREX事業)等で蓄積してきた政策研究の知見と、東京科学大学が有する科学技術に関する知見とを融合させ、より確度の高い未来洞察の手法や研究戦略の策定、イノベーションシステム形成の枠組みを開発します。

I4Cを活用した新たな取り組み

特に注目される取り組みとして、東京科学大学の分析組織であるI4Collective(I4C:アイ・フォー・シー)への協力が挙げられます。政策研究大学院大学がSciREX事業で培ってきたネットワークをさらに発展させる場としてI4Cを活用し、研究会やワークショップ等を共同で実施することが予定されています。この取り組みにより、異なる視座を組み合わせた社会的対話を推進していきます。

日本の科学技術政策高度化への貢献

この包括連携協定は、単なる大学間の協力を超えて、日本全体の科学技術政策の高度化に大きく貢献することが期待されています。科学技術研究と政策研究という異なる分野の専門知識を融合させることで、これまでにない新しい視点からの政策提言や研究成果が生まれる可能性があります。

東京科学大学は、東京医科歯科大学と東京工業大学が2024年に統合して誕生した新しい大学です。この新しい大学が持つ革新的な研究力と、政策研究大学院大学が長年培ってきた政策研究の実績が組み合わされることで、日本の科学技術イノベーション分野における新たな可能性が開かれることになります。

今後の展開と期待

両大学は、この包括連携協定を通じて、双方の研究・教育のポテンシャルを大幅に拡大させることを目指しています。科学技術と政策の両分野に精通した人材の育成、実効性の高い政策提言の実現、そして日本の科学技術イノベーション力の向上に向けて、積極的な取り組みを展開していく予定です。

この連携により、学術界だけでなく産業界や政府機関との連携も強化され、日本の科学技術政策がより実践的で効果的なものとなることが期待されています。また、国際的な競争力の向上や、社会課題の解決に向けた新たなアプローチの開発にも大きく貢献することでしょう。

参考元