観測史上3例目の恒星間彗星「3I/ATLAS」、火星付近を通過—宇宙探査機が注目

前例のない天体の接近、世界中が注目

2025年10月、太陽系に史上3例目となる恒星間彗星「3I/ATLAS」が飛来し、火星付近を通過します。この彗星は、これまでに知られているどの太陽系内の彗星とも軌道が異なり、強いハイパーボリック軌道(開いた軌道)を持っていることから、太陽系外からやってきた物体であると特定されています。今回の飛来は、宇宙探査の分野において歴史的にも貴重な観測機会となります。

発見の経緯と彗星の概要

3I/ATLASは2025年7月1日、チリに設置されたNASAのATLAS(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)望遠鏡によって最初に報告されました。直後に世界の複数の観測施設で過去のデータが調査され、発見直後よりその異常な軌道から恒星間天体であることが高い確率で示唆されました。

  • 発見時の地球からの距離:約6億7000km
  • 明るさ:約18等級(非常に暗い)
  • 軌道の離心率:約14(通常の彗星は0に近い)
  • 接近方向:いて座(銀河中心方向)から飛来

発見からわずか1日足らずで、世界中の天文学者たちによる追加観測と過去データの掘り起こしが行われ、100回以上の観測記録が集まりました。

彗星名の由来と分類

  • 3I/ATLASの「3I」は「interstellar object(恒星間天体)」の略で、史上3例目という意味です。
  • 「ATLAS」は発見した観測計画名に由来しています。
  • 国際天文学連合の小惑星センターにより、正式名称が付与されました。

太陽系内での移動と火星への接近

この彗星は2025年10月30日に太陽への最接近(近日点)を迎えます。その際、太陽から約1.4天文単位(au、約2億1000万km)—これはほぼ火星軌道の内側—まで接近する予定です。一方、地球には最大でも約2億7000万km(1.8au)までしか近づかず、地球へは脅威になりません。

  • 火星への最接近日:2025年10月3日頃
  • 火星からの距離:約3000万km(1月あたり)
  • 地球からの最接近距離:約2億7000万km(1.8au)
  • 近日点:2025年10月30日、太陽から約2億1000万kmの位置

どんな観測が行われるの?

今回の“火星付近での彗星通過”は、既存の火星探査機にとって絶好の観測チャンスとなります。特にESA(欧州宇宙機関)の火星周回機など、複数の宇宙機が彗星の様子を詳細に観測する計画が進められています。

  • 火星軌道上の探査機は、地球よりはるかに近くから直接観測できる
  • 物理的・化学的な特性、彗星表面物質やガスの分析が期待される
  • 火星周回機だけでなく、近くを通過する木星探査機なども遠距離観測に参加予定

恒星間彗星の意味と科学的価値

恒星間彗星とは、他の恒星系から太陽系に飛来した彗星を指します。これまでも2017年に発見されたオウムアムア(1I/2017 U1)、2019年発見のボリソフ彗星(2I/Borisov)がありました。3I/ATLASはこれに次ぐ3例目となり、その軌道解析により「太陽系外から来た」ことが確定しています。

このような彗星は、

  • 太陽系外の物質(ダストや氷など)を直接観測できる
  • 太陽系形成以前の情報を知る手がかりとなる
  • 彗星が恒星系間をどのように移動するかのシナリオ理解が進む
  • 地球外生命や有機物の拡散過程の研究などへの応用も期待

彗星の物理的特徴は?

現時点では物理的サイズや組成はまだ確定していませんが、世界中の望遠鏡が可視光・赤外線などを用いて継続して観測中です。9月までは地球からも望遠鏡で観測可能、10月に太陽近傍を通過した後は観測不可となりますが、12月初旬には太陽の向こう側から再び現れて追加観測が行われる予定です。

今後の観測計画と期待される成果

  • 火星・木星の探査機による至近距離からの高分解能撮影とスペクトル解析
  • 地球上の望遠鏡による、接近時の彗星の明るさやコマ構造、尾の変化の連続観測
  • 彗星の軌道計算と出自についての解析(いて座方向から飛来し、過去の軌道を遡ると恒星間出身であると判明)

また、このような接近の観測データは、今後の恒星間天体発見につながる装置や手法の向上にも役立つと期待されています。

恒星間彗星「3I/ATLAS」は地球に影響を与えるか?

結論として、3I/ATLASは地球に物理的な影響や危険を及ぼすことはありません。最接近時でも、地球からは約2億7000万km離れています。ただし、天文学・惑星科学の研究においては非常に大きな意義を持つ飛来です。

まとめ

  • 史上3例目の恒星間彗星3I/ATLASが、2025年10月に火星付近を通過します
  • NASAやESAを中心に複数の宇宙探査機や地上望遠鏡による大規模な観測体制が敷かれています
  • 地球外からの彗星を直接間近で観測できる世界初の機会であり、天文学的にも貴重なデータが集まる見込みです
  • 彗星自体は地球に影響や危険を与えることはありません

この貴重な恒星間彗星の飛来を通して、私たち人類は宇宙の成り立ちや、他の恒星系の物質の性質について、さらに理解を深めることが期待されています。

参考元