丸亀製麺から漂う「ブラック企業臭」の正体と最新人事制度

丸亀製麺とは ―うどんチェーン最大手の今―

丸亀製麺は、全国展開する讃岐うどんのチェーン店として知られており、運営元は上場企業であるトリドールホールディングスです。2025年現在も業績は非常に好調で、2025年4~6月期の連結決算は43億円(前年同期比2.9倍)の純利益をあげ、3年ぶりに過去最高益を更新しました。国内外に多くの店舗を展開し、客足も順調に伸びていることが伝えられています。

大胆すぎる人事制度 ―店長年収2000万円の衝撃―

  • 2025年9月17日、丸亀製麺を運営するトリドールHDが店長の最大年収を520万円から2000万円へ引き上げるという新たな人事制度を発表しました。
  • この制度により、一般的な業種では考えにくい年収2000万円の店長が誕生する可能性が生まれました。
  • 「ハピカンキャプテン」という新たな役職が導入され、店長以外のスタッフへの業務分担も進められます。導入から3年で300名のキャプテンを育成、そのうち年収2000万円クラスは10名を目指しています。
  • 外食産業全体が人手不足と賃上げの波にさらされるなか、競合である他チェーン「すかいらーくHD」なども同様の取り組みを始めており、丸亀製麺の施策は業界内外で大きな話題を呼んでいます。

「ブラック企業臭」の正体とは?

丸亀製麺の年収2000万円人事は一見働き手に好条件のように見えますが、業界では「ブラック臭が漂う」とも指摘されています。その背景には以下のような要素が挙げられます。

  • 管理監督者制度の活用:新制度では「管理監督者」として位置づけることで、労働基準法上の労働時間規制や残業手当などの適用が除外される可能性があります。これは同業の「餃子の王将」など他外食チェーンで課題になったこともあり、長時間労働やハードワークを当然とする風土の温床となりやすいです。
  • 経営トップによる求心力と現場体制:トリドールの粟田社長はカリスマ性が高く、社員の忠誠心や「社長のために頑張りたい」「会社を盛り上げたい」と強い責任感を持つ社員が多い反面、長時間労働や身体的負担を惜しまない職場体制も存在します。
  • 外食産業の構造的課題:「お金が稼げるなら死ぬほど働いてもいい」と考える人が一定数いる一方、劣悪な就労環境への社会的批判は根強く、丸亀製麺でも人事刷新がどこまで働き手の幸福に結びつくかは課題です。

それでも応募殺到?刺激的な人材確保策

前述のようなハードな実態がある一方で、年収2000万円のインパクトは絶大です。物価高や人手不足が続くなか、「高給」「成長」「裁量大」というキーワードに惹かれて応募が殺到することは間違いないでしょう。既存店長には高いモチベーションが芽生え、店舗運営への責任感も増すことが期待されています。

本場・香川県での“片思い”と地域戦略

一方で、讃岐うどんの本場・香川県との関係にも注目が集まっています。香川県では「本当の讃岐うどんらしさ」を追求する声が強く、丸亀製麺も地域での人気・認知度アップに苦心しています。エリア限定でいりこ出汁など本場仕様の味へのこだわりを強めることで、地縁性を高める策を講じています。

トリドールHDの成長と株主還元、「買い」なのか?

  • 直近の業績は絶好調で、2025年4~6月期は純利益43億円という圧倒的な数字です。
  • 外食大手として今後も継続した成長が見込まれるものの、人件費増加が利益を圧迫するリスク、働き方改革による現場の混乱など課題にも注目すべきです。
  • 株式市場では、こうした高待遇策により優秀な人材を確保し、継続的成長への道筋を示す姿勢が好意的に受け止められる一方、過度なコスト増や社会的な働き方問題への懸念もあり、一概に「買い」と決めつけるには慎重な視点も必要です。

日本流うどんのグローバル展開 ―ハワイ・ワイキキ店が大躍進

丸亀製麺は国内市場だけでなく、海外戦略も加速しています。中でもハワイ・ワイキキ店は2020年代前半から継続的な売上首位を記録し、現地でも日本流うどんの魅力を広く広めています。麺を目の前で打つライブ感、現地テイストも折り込んだメニュー開発、スタッフの丁寧な接客などが、異国での成功のカギとなっています。

  • ワイキキ店では「つるっと食い込む日本流」のキャッチフレーズ通り、現地住民や観光客を問わず行列が絶えません。うどん文化の海外浸透や日本ブランドへの関心の高まりに拍車をかけていると言えるでしょう。
  • 丸亀製麺は今後もグローバル展開を強化しつつ、「日本のおいしい」を世界に発信し続けます。

まとめ ―「高年収」と「働き方」、そして丸亀の未来

丸亀製麺の「ブラック企業臭」とされる実態には、外食チェーンならではの課題が色濃く表れています。それでも注目を集めるのは、抜本的な人事制度の改革と高年収のインパクト、さらにグローバル展開での成功といった幅広い挑戦です。

一方で、働く人が真に幸せになれる組織体制となるか、人材と現場のバランスを保ちつつ、長期的な成長と社会的評価を両立できるかどうか。丸亀製麺のこれからの歩みが多くの業界関係者、そして消費者から見守られています。

丸亀製麺の未来に求められるのは、「高年収」「やりがい」だけでなく、健全な労働環境と働き甲斐の両立。今後の動向に引き続き目が離せません。

参考元