アフガニスタン全土でインターネット遮断、タリバン政権の決定が人々の生活に与える影響
2025年9月15日、アフガニスタンで政権を握るタリバンは、国内でインターネットの遮断を開始しました。この措置によって、光ファイバーを使ったネット接続は主要都市を含む広範囲で停止し、政府機関だけでなく家庭や民間企業でもWi-Fiの利用ができなくなる事態となりました。
インターネット遮断の背景と理由
今回の遮断は、公式には「不道徳を防ぐため」と説明されています。タリバンは以前から、ポルノやネット上での男女の親密行為などに強い懸念を示し、検閲や規制を強化してきました。情報の自由や個人の権利に対するさらに厳しい弾圧の一環とみる声も多く上がっています。とくに2021年にタリバンが再び政権を掌握して以降、女性の権利や反対意見への抑圧がますます強まっています。
影響を受けるアフガニスタンの人々
- 経済活動の制約: インターネット遮断は、仕事や教育の機会を著しく限定しています。タリバン政権下で多くの女性が職業生活から締め出されたため、オンラインで翻訳や事務作業などの在宅仕事で家族を支えてきた人たちにとっては死活問題です。
- 女性にとっての生命線: 2022年のさらなる制約以降、女性たちは「自宅からオンラインで仕事をすることが唯一の収入源」と感じています。遮断により、「家族を養えなくなる」瀬戸際に立たされる女性が増加しています。
- 情報へのアクセスの喪失: 国家として国際社会から孤立する中で、残された「外の世界との窓」であるインターネットが遮断されたことで、多くの市民は「最後の希望」を失うのではないかと恐れています。
遮断の具体的な状況と対応
タリバンによる光ファイバーネット遮断は大半の都市で進行していますが、首都カブールなど一部地域ではまだ完全には実施されていません。また、モバイルインターネットについては料金が高く、接続も不安定ながら、一部の地域で利用可能となっています。
米国務省をはじめとする国際社会の反応
- 経済・人権への懸念: 米国務省の報道官も「極めて憂慮すべき事態」との認識を示し、ネット遮断がアフガニスタンの国民生活と経済活動に大きな悪影響を及ぼしていると指摘しています。
- 人道的観点からの批判: 情報の遮断がもたらす危機的な状況に対し、タリバンは「弾圧を止め、無条件でインターネットアクセスを回復すべき」と訴える声もアフガニスタン国内外で高まっています。
タリバン政権下でのさらなる規制強化
2024年10月には、タリバンが「人間と動物を含む生き物の描写を禁止」する条例の施行も開始しています。これには、「コンピューターや携帯電話で生き物の動画や写真を作成・視聴することも含まれる」ため、ネット上の情報や表現の自由が一層狭められています。
市民の声――現場からの証言
- マリアムさん(仮名)の場合: 北部の都市マザリシャリーフに住み、翻訳者としてオンラインで働いていたマリアムさんは、インターネット遮断後「家族を支えられなくなる」と語ります。生活の維持どころか、情報や仕事の機会すら失いつつある現状を報告しています。
- ソラヤさん(仮名)の場合: カブール在住のソラヤさんも同様に、外国の団体のため自宅で仕事をすることで生計を立てていました。彼女は、「アフガニスタン女性は既に困難な状況にある。遮断により、家族を守るための手段まで奪われてしまう」と訴えています。
アフガニスタン社会への影響
このインターネット遮断によって、アフガニスタン人の社会的・経済的自立への道がさらに閉ざされる形となり、多くの市民や若者、特に女性が将来に希望を見いだせない状況となっています。市民が自由に情報を収集し、外部と交流する手段が制約されることで、社会はさらなる閉塞感と孤立を深めています。
今後の課題と展望
- ネットアクセスの完全停止の懸念: 現在は地域によってモバイルインターネット残存していますが、遮断が全国に広がると教育や医療、ビジネスの機会までもが奪われることになります。
- 人権擁護活動の難化: 情報が遮断されることで、国際社会や人権団体による状況把握や支援が困難となり、国内の声を外に届けること自体が難しくなります。
- 女性・若者の未来: 情報へのアクセスが絶たれれば、女性や若者が世界と繋がる希望や、個人の人生の選択肢が著しく狭まる恐れがあります。
最後に
このような状況下で、アフガニスタン国内外からは「インターネット遮断の即時解除を求める声」が日々高まっています。市民は弾圧の連鎖の収束と、生活の最低限の自由が回復されることを切望しており、今後のタリバン政権による対応や国際社会の動向から目が離せません。