ノースサファリサッポロ、20年の歴史に幕─閉園と動物たちの未来
閉園を迎える「ノースサファリサッポロ」―その歩みと現状
札幌市南区豊滝にある動物展示施設「ノースサファリサッポロ」が2025年9月30日をもって閉園することになりました。この施設は2005年7月に開園し、「日本一危険な動物園」というユニークなキャッチコピーで、全国から多くの観光客を集めてきました。特に動物との近距離でのふれあいや、他では経験できない体験型イベントを数多く展開し、その斬新さが話題となっていました。
しかし、施設のほとんどが無許可建築であることが明らかとなり、行政指導を受けた結果、運営会社である有限会社サクセス観光は閉園と全建物の撤去を決断しました。また経営責任を受けて代表取締役が辞任し、新たに現園長が後任として就任しています。
「日本一危険な動物園」—特徴的な体験型施設の歴史
- ノースサファリサッポロは、20年以上にわたり一般的な動物園とは異なるアプローチで注目されてきました。来園者はコアラやフクロウなどの動物と近づくだけでなく、時にはワニやヘビ、猛獣と直接触れ合える体験を提供していました。そのため、同園を訪れる多くの人々には忘れられない思い出となっています。
- 開園当初から、自然豊かな環境や動物と人との共生を重視する理念を掲げており、毎年訪れる家族連れや学校の遠足、観光客にとって憩いの場でもありました。
- また、ご当地グルメや季節ごとのイベント、動物ショーなども実施され、訪れるたびに新しい体験を楽しめる工夫がなされてきました。
閉園決定までの経緯
ノースサファリサッポロ閉園の発表は2025年3月10日でした。その後、行政指導が強まり、違法建築や各種法令違反が相次いで報道されるようになり、動物福祉への視点も含めて大きな社会問題となります。閉園決定後は最後の営業期間となり、多くのファンや観光客が惜別の思いで園を訪れています。
- 来園者からは「閉まってしまうのは寂しい」「動物たちが心配」といった声も寄せられています。
- 閉園後の動物の扱いについては、「動物たちの行き先が決まってからの撤去が正しいのではないか」と現状を案じる意見も多く聞かれます。
閉園後に残る動物たち—その運命と課題
園内には300頭以上の動物が飼育されています。最も注目されているのは、20年前の開園時から飼育されているヒグマ35頭の存在です。これらの大型野生動物は一般的な動物園や施設への引き取りが難しく、将来の受け入れ先や福祉に大きな社会的関心が寄せられています。
- 動物たちの移動は現在「調整が進んでいる」とされており、園当局は受け入れ先の確保・動物福祉の観点からも慎重な対応を行っている状況です。公式ホームページにも「ご心配への謝罪」が記されており、動物やスタッフ、来園者への誠意をもって対応することが繰り返し強調されています。
- 北海道内外の動物園や保護団体、個人が移動先の受け入れ候補となっていますが、希少動物や猛獣のために慎重な健康管理や専門的な環境整備が不可欠となります。
- 移動先が決まらない場合の対応や、終生飼養等についても議論されています。特にヒグマのような大型肉食獣は、施設の受け入れ態勢や飼育スペース、飼養員の専門性が厳しく問われます。
動物福祉と社会的責任—閉園に伴う課題
ノースサファリサッポロは、他所にない体験型アトラクションを提供してきた一方で、危険動物との距離の近さや無許可建築等、リスクと課題が常について回りました。閉園にあたり特に注目されるのは、残された動物たちが今後どこでどのように飼養されるかという動物福祉です。
- 過去にも、日本全国で動物園閉鎖後の飼育動物の行方が社会問題となった事例は少なくありません。動物にとって暮らしの場の変化はストレスを伴いますが、一部の団体や専門家が「終生飼育」や「段階的な環境移行」など、より配慮された移動を求めています。
- 閉園までに十分な調整期間が設けられたことで、動物たちの受け入れ先探しや医療管理、輸送計画などの準備が進められています。公式発表でも「すべての動物の安全な移動先確保に最大限努めている」としています。
地域と社会への影響―「ノースサファリ」閉園で失われるもの
施設の閉園により、地域経済や観光への影響も指摘されています。札幌市南区の観光スポットとして20年もの間親しまれてきたノースサファリサッポロは、地元の雇用や交流、観光振興にも大きな役割を果たしてきました。その損失は単なる娯楽施設の消滅に留まらず、社会問題や動物福祉について新たな課題を問いかけるものとなります。
公式からの謝罪と感謝、そして「動物たちの未来」
- 公式ホームページでは、20年間支えてきたファンや来園者、地域社会に心からの謝意が述べられています。「厳しい自然の中で共に歩んできた動物とスタッフ、そして訪れる皆様の応援が宝物だった」とのメッセージが掲載されており、運営の誠意が伝わります。
- いま最も求められているのは、閉園後の動物たちひとつひとつが「安心できる新しい居場所」を得られることです。そのために、園と関係各所が協力し合い、スムーズな移行が実現することが待たれます。
これからの展望―動物たちへの想いと地域の課題
動物たちの移動調整は今なお継続中ですが、札幌市当局および受け入れ予定各施設との連携が強化されています。多くの人々が注目しているヒグマ35頭をはじめ、園に残る動物たちの命と福祉が尊重されるよう、最後まで見届ける必要があります。今後も社会全体で強い関心と行動が求められる課題です。
- ノースサファリサッポロの閉園は、「動物を展示する施設のあり方」や「現代における動物福祉」の重要性を再認識する契機となりました。20年の歴史と、そこで育まれた命との向き合い方を社会全体で考え直す試金石です。
- 地域活性や観光資源としての価値をどう受け継ぐか、そして動物たちの新しい未来をどう守っていくか、引き続き注目が集まっています。
まとめ―ノースサファリサッポロが残したもの
ノースサファリサッポロは、独創的な動物体験を通じて人々の記憶に深く刻まれてきました。20年間にわたり多くの命と向き合い続けたスタッフと、支えてきた全ての人々の思いが、閉園に伴って新たな課題と希望を生み出しています。残された動物たちの行く先を見守りつつ、動物福祉と地域の未来について考え続ける機会となるでしょう。