新たな時代を迎える緑内障治療――革新的な点眼薬と早期発見の重要性
2025年に入り、緑内障および高眼圧症の治療と、その早期発見対策において大きな変化が起こっています。本記事では、最近承認された新しい点眼薬、交通事故対策に直結する視野障害の早期発見、そして多くの人が不安に感じる「眼底検査」の見方について、やさしく徹底解説します。日々の生活や健康管理に役立つ最新情報をお届けします。
緑内障ってどんな病気?
緑内障は、視神経が障害され、徐々に視野が狭くなっていく進行性の病気です。初期には自覚症状が乏しく、多くの場合、気づかないうちに進行しています。しかし、一度失われた視野は残念ながら元に戻すことができません。そのため、早期発見・早期治療が極めて大切です。
- 40歳以上の20人に1人が発症するといわれており、高齢になるほどリスクが高まります。
- 主な治療目的は眼圧のコントロールで、進行を遅らせることに重点が置かれています。
- 治療法には点眼薬をはじめ、レーザー治療や手術もありますが、「失われた視野を元に戻す」ことはできません。
2025年に登場した新しい点眼薬――治療の選択肢がさらに充実
2025年8月、日本国内でセタネオ®点眼液0.002%(一般名:セペタプロスト)が緑内障・高眼圧症治療薬として承認され、患者さんや医療関係者から大きな注目を集めています。この点眼液は、創製を小野薬品工業が、製造販売を参天製薬が担当しています。
- 1日1回、夜に1滴点眼するだけで高い効果が期待でき、続けやすさも特徴です。
- 従来の主な点眼薬(ラタノプロストなど)はFP受容体のみをターゲットにしていましたが、セタネオ®はFP受容体とさらにEP3受容体にも作用する日本初の点眼薬です。
- この新規作用機序により、これまでよりも幅広い患者層で眼圧降下が期待できます。
- 副作用は比較的軽く、眼の違和感や軽い充血が一時的に見られる程度とされています。
ネタルスジル――3つのメカニズムを持つ新薬も続々登場
2025年7月には、同じく参天製薬からネタルスジルメシル酸塩(開発名:STN1013900)が緑内障・高眼圧症治療薬として承認申請され話題になりました。
- 房水(ぼうすい)の排出・産生・流出路の流れやすさを、同時に3つの機序でコントロールします。
- 従来の点眼薬で十分な効果が得られなかった方や、眼圧の変動が気になる患者さんにも効果が期待されており、治療の幅が大きく広がると考えられています。
- 併用による眼圧コントロールの向上や、長期的な維持効果も国内試験で示されています。
- 副作用は現時点で軽度にとどまる報告が多く、安全性にも配慮されています。
なぜ、これほど新薬が登場しているの?
緑内障の治療薬は、症状や進行状況、ご自身の生活スタイルによって最適なものが大きく異なります。1剤のみで十分な効果が得られないケースも少なくありません。そこで、異なる作用機序を持つ新薬の追加や、既存薬との併用が活発に検討・利用されるようになりました。
新規点眼薬の登場は、患者さんごとの病状や生活習慣に合わせて効果的な治療法を選択できるというメリットにつながります。治療の幅が広がることで、「続けやすい治療」「自分に合った治療」の実現がますます進んでいます。
視野障害の早期発見は“命を守る”――交通事故対策にも
緑内障による視野障害は、進行しても日常生活で気付きにくく、気付いたときには視力や視野の大部分を失っていることが少なくありません。しかし、視野が狭くなっていると、最も深刻なリスクとして交通事故の増加につながります。
- 歩行中や自転車・自動車運転中に「急に人や自転車が現れた」と感じるのは、実は視野障害が進行しているサインかもしれません。
- 警察庁・保健当局は近年、緑内障による見落とし事故や交差点での巻き込み事故などについても注意喚起を強めています。
- 早期発見は、ご自身だけでなく家族や周囲の命を守るうえでも極めて重要です。
眼底検査の見方――緑内障をはじめとした病気の早期発見ポイント
「眼底検査の結果って、どう見ればいいの?」そんな疑問を持つ方も多いことでしょう。眼底検査では、視神経乳頭や網膜の状態を詳しく調べます。特に緑内障では、以下のポイントに注意を払います。
- 視神経乳頭の陥凹(くぼみ)の拡大や変形――これが緑内障の代表的診断サインです。
- 乳頭周囲の網膜神経線維層(RNFL)が薄くなっている――進行の程度を示します。
- 出血や変色がないか――他の眼疾患との区別や合併症の発見にも役立ちます。
検査結果は必ず担当医が詳しく説明してくれます。自己判断せず、医師の説明に耳を傾けてください。また、緑内障以外にも糖尿病網膜症や加齢黄斑変性など、眼底検査で発見できる疾患は多岐にわたります。定期的な検診が健康寿命延伸のカギです。
日常生活で今すぐできる、緑内障と視野障害の自己チェック
- 検査や治療の自己中断は絶対に避けて
- 視野が狭く感じる、見落としが多い、階段や障害物が見えにくい――そんなときは必ず眼科受診を
- 運転や自転車走行の前に、両目で周囲をしっかり確認しましょう
新しい時代の緑内障医療――“人生100年時代”の安心のために
私たちは今、緑内障医療の大きな転換点を迎えています。新しい点眼薬の登場、早期発見支援体制の拡充、国民的な交通安全意識の高まり――こうした動きが相まって、これまで以上に「見える喜び」を長く守り続けられる時代が訪れています。
緑内障は早期発見・早期治療、そして続けやすい治療がカギです。「まだ若いから大丈夫」「自覚症状がないから平気」そんな思い込みが、一生の視力を左右します。ぜひこの機会に、ご自身とご家族の健康を見つめ直してみてください。
これからも最新情報をやさしく、わかりやすくお伝えしていきます。一人ひとりがよりよい毎日を過ごせるように――緑内障早期発見、治療の選択肢拡大、そして安心・安全な社会を目指して、一緒に歩んでいきましょう。