ウクライナ軍総司令官が語るロシア軍の「大規模攻勢失敗」
2025年9月25日、ウクライナ軍総司令官であるオレクサンドル・シルスキー氏が首都キーウでメディア取材に応じ、ロシア軍が今春から夏にかけて実施した大規模攻勢について「作戦は失敗に終わった」との見解を公にしました。この発言は、ロシアによる継続的な侵攻が続く中、ウクライナの戦況や今後の展望を占う上でも非常に大きな意味を持っています。
ロシア軍の攻勢計画、その実態
ウクライナ東部ドネツク州を中心に、ロシア軍は今年の春から大規模な攻勢作戦を展開してきました。シルスキー総司令官の推計によると、戦闘に参加しているロシア軍の総兵力は約71万人に上ります。前線は約1,200kmにおよび、過去1年間でその長さは200kmも拡大しました。
特に戦闘が激化したのは、東部ドネツク州のポクロウシクやドブロピリャといった要衝です。ロシア軍は歩兵を小規模なグループに分け、複数の前線で同時に突撃を行うなど、これまでにない攻撃手法も取り入れてきました。しかし、これらの戦術にも関わらず、ロシア軍による占領地の拡大には至らず、ウクライナ側が前線の主導権を握り続けている状況が明らかとなっています。
ロシアの大規模攻勢失敗の要因
- 火力差を埋めるウクライナ軍の防衛力
ロシア軍はウクライナ軍に対しておよそ2倍の砲撃を行っているものの、ウクライナ軍は効果的な防衛と統制を徹底することで、大規模な領土喪失を防いできました。これは、専門的な指揮体制や現地部隊同士の密接な連携、最新装備の活用が鍵と言えます。 - 前線の統制と兵站の強化
シルスキー総司令官は「前線はウクライナの統制下にある」と断言しています。これは、供給網の維持や部隊の再配置など柔軟な対応によって、ロシアの激しい砲撃や地上攻撃を抑え込んでいることを意味します。 - 多様化するロシア軍の攻撃に対応
ロシア軍は歩兵の小グループによる同時突撃など、これまでとは異なる戦術も取り入れていますが、ウクライナ軍は地域ごとに適切な戦術で応じ、複数の戦線で粘り強く抵抗を続けています。
戦況の現状と今後の課題
現在ウクライナの前線は長大化しつつあり、戦線の維持には兵士の士気や物資輸送、情報戦など複合的な要素が重要となっています。ロシア軍による砲撃やドローン・ミサイル攻撃も依然として脅威であり、各地で激戦が続いていますが、ウクライナ軍の基本的な防御態勢は崩れていません。
また、西側諸国からの支援が戦況に大きく影響することも指摘されています。砲弾やミサイル、電子戦装備など多様な軍事援助が途切れることなく続き、ウクライナ軍の防衛力を下支えしています。
「失敗」と評価されたロシア軍の作戦
今回の「大規模攻勢の失敗」声明には、軍事的な意味だけではなく、国際社会やウクライナ国民への強いメッセージが込められています。シルスキー総司令官は、前線支配の維持と継戦能力の高さを内外に示すことで、これからもウクライナ政府と軍の結束、そして市民の信頼を得ようとしています。
戦うウクライナの現場――東部前線の現状
ウクライナ東部ドネツク州のポクロウシクやドブロピリャでは、連日激しい砲撃や市街戦が続いています。住民の多くは避難を余儀なくされ、インフラも損傷を受けていますが、ウクライナ軍が陣取る前線はほとんど崩されていません。こうした中、前線の兵士たちは限られた物資や人員で任務を続けており、非常に過酷な状況での防衛戦が続行されています。
また、近年は情報戦が激化しており、SNSやメディアを通じて敵味方両陣営がさまざまな情報を発信し合う状況にあります。国際社会に対する発信や支援要請も、今や戦術的な武器の一つとなっています。
国際社会の支援とその影響
ウクライナ軍の持続的な防衛と反撃には、西側諸国を中心とした国際支援が不可欠です。アメリカやEU諸国、日本などからは軍事的・経済的・人道的協力が続けられています。兵站補給の安定化や電子戦装備の供給など、現代戦において不可欠なサポートが多方面でなされています。これらの支援が潤滑に行き届くことで、ウクライナ軍は現状を維持しつつ攻勢への転換も狙いやすくなると考えられています。
今後の展望――ウクライナ軍が見据えるもの
シルスキー総司令官の発言からは、長期戦への備えと、国土防衛への不動の決意がうかがえます。ロシア軍の大規模な攻撃が頓挫したとはいえ、戦争の終結は見通せず、ウクライナとしてはさらなる体制強化と国際支援の継続、そして国内の士気維持が不可欠です。
また、一般市民の安全確保や避難支援、インフラ復旧といった民生面での対応も引き続き大きな課題です。更なる攻撃が予想される中で、住民の命と生活を守る取り組みも重要となっています。
まとめ：前線維持の中で示された希望
今回のウクライナ軍総司令官による「ロシア軍の大規模攻勢計画の失敗」発言は、困難な状況下でも前線を守り抜くというウクライナ軍の強い意志と能力に裏付けられています。国際社会からの継続的な支援が重なり、ウクライナ軍の防衛力強化につながっていることも明白です。
戦争が長期化する中でも、前線の士気や国民の団結、西側諸国との連携を武器に、「主導権はウクライナ側にある」ことをはっきり示す結果となりました。これからも、困難な戦況の中で希望を失わず防衛を続けるウクライナの姿勢に、世界が注目し続けています。
