町田ゼルビア、アジア初参戦――AFCチャンピオンズリーグエリート2025/26、ホーム野津田で歴史的初戦
2025年9月16日、町田市立陸上競技場は、これまでにない高揚と緊張感に包まれていました。FC町田ゼルビアが、アジアクラブ王者を決める
アジアへの扉を開いた町田ゼルビア
昨季J1で初昇格を果たし、堂々の3位でアジア挑戦権を獲得した町田ゼルビア。彼らの特徴は、経験豊富な昌子源を中心とした3バックの安定感と、ボール奪取から縦に速い攻撃へのシフト。前線の相馬勇紀・西村拓真の日本人コンビ、ナサンホ・オセフンの韓国人コンビの4人が絶大な存在感を放ち、破竹の8連勝で国内リーグ戦線でも優勝争いを繰り広げてきました。この布陣がそのままアジアの舞台で通用するか、注目が集まります。
町田市立陸上競技場、ACLE仕様で迎えた初戦
ACLE参戦にあたり、町田市立陸上競技場ではAFC規定に基づいた座席割りや応援エリアの運用など、通常のリーグ戦とは異なるスタジアム運営が行われました。全席指定となり、一部の席は使用不可となるなど、観戦スタイルそのものにも変化が生まれました。町田市民はじめ地域サポーターたちの間にも、「アジアの舞台」がすぐそばにやってきたという実感が広がりました。
- 入場者数:4,798人
- 天候:曇り
- 気温:27.3℃
- 湿度:67%
試合展開――緊張と経験値の差
町田ゼルビアは、アジアの舞台を強く意識した序盤、「立ち上がりから硬さがあった」と黒田剛監督は後に振り返っています。ACL出場9度目で2013年大会準優勝の実績があるFCソウルに対し、町田は自分たちの攻撃リズムを掴み切れませんでした。前半終盤には、VARによって判定が覆るなど、国際舞台特有の流れが町田を翻弄した場面もありました。
後半15分、町田のビルドアップをFCソウルが中盤でカット。右サイドの元イングランド代表MFジェシー・リンガードの展開から、マルコ・ドゥガンジッチが決めて失点。その後FW西村拓真、MF下田北斗を投入して攻勢に出る町田。後半35分、望月ヘンリー海輝が押し込んで同点。試合はそのまま終了し、勝ち点1を積み上げることになりました。
マッチレポート:戦術と個の力、町田に訪れた新たな“問題”
今季、町田が攻撃の武器としていた“縦に速い攻撃”。これがアジア舞台では意外な弊害となることも明らかになりました。ACLではボール仕様も異なり、球際の強度や駆け引きでもJリーグと違った面が浮き彫りに。前述のVARによる判定変更や、FCソウルの選手のフィジカルと応酬に困難を感じる場面も多かったといわれます。
さらに、町田の選手やスタッフは「情報は入っていた」と事前準備の重要性を認識していたものの、実際のフィールドでは相手の戦術やクセを見抜くまでに時間を要しました。ACLという新たな舞台では、町田の武器が“落ちてしまう”(効果を発揮しづらい)シーンもあったという指摘は、今後への課題です。
監督コメントと選手たちの反応
黒田剛監督は「初出場のプレッシャーをすごく感じた。単純ミスでペースになかなか持っていけなかった」と言い、後半の選手交代で自分たちの良さがある程度出せたという認識を示しました。「同点ゴールを決めて逆転できる場面もあったが、一つミスするとカウンターにつながる局面も多かった」と、アジアの壁を肌で感じています。
また、「体の強さや球際の強さを感じた。これからすべての試合でそれが基準になるのだろう」と今後への覚悟も吐露。選手にとってこの一戦は、勝ち点1の価値以上にアジア舞台で戦う自信と、さらなる成長機会となる大きな一歩でした。
観戦するサポーターと町田の街の反応
歴史的な初戦の熱気は、町田市全体にも波及しています。これまでJリーグで積み重ねてきたチームの応援文化が、アジアの舞台に拡がったことで、町田市民は海外クラブとの対戦や国際規定に則ったスタジアム体験など、非日常感を味わう機会になりました。
入場時のゲート指定、グッズやユニフォーム着用エリアの分け方など、普段とは異なる規則やルールも市民の関心を集めました。サポーターの間では「いつもの応援席が使えない」「旗が視界に入る」といった声もありましたが、それもアジア初参戦の“洗礼”として受け止め、熱心に応援する姿が随所に見られました。
今後への展望――町田ゼルビアの課題と成長
- ボールや環境の違いへの対応
- フィジカル面・球際の強度の基準を変化させる必要性
- 勝敗だけでなく経験値そのものを積むことの重要性
- 応援文化やスタジアム運営の新たな課題
- “落ちてしまう”場面への具体的対策
勝ち点1という結果は、単なる数字以上の意味を持っています。町田ゼルビアは「アジアの壁」に挑みながら、自らの武器を進化させる機会を得ました。今シーズン続くACLEで、町田がどんな戦いを見せるか――。地域、クラブ、選手すべての成長曲線が、これからさらに注目されることでしょう。
まとめ
町田ゼルビアのアジア初参戦、FCソウルとの歴史的一戦は、スコア以上の価値をこの街とクラブにもたらしました。戦術や応援、スタジアム運営――様々な面で新たな課題を抱えながら、町田はアジア舞台で“町田らしい戦い”を模索し始めています。次なる戦いでも町田から目が離せません。