ゼレンスキー大統領、ロシアへの厳しい警告 「侵攻やめなければクレムリンも標的に」
ウクライナ情勢深刻化する中での大統領発言の背景
2025年9月25日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアによるウクライナ侵攻が続く現状において、世界各国と国連に向けて改めて強いメッセージを発信しました。アメリカ・ニューヨークで開催された国連総会での演説、さらに米ニュースサイト・アクシオスのインタビューにおいて、ゼレンスキー大統領はロシアに対し「もし侵攻をやめなければ、ロシア大統領府(クレムリン)も攻撃の標的にする」と警告しました。
この発言は、これまでのウクライナの“自制的な攻撃政策”を転換しうる重大な表明と言えます。また同時に、ゼレンスキー大統領は「戦争が終結すれば、権力に執着せず大統領を退く用意がある」と語り、終戦後の国内の民主的プロセスへの意欲も示しました。
国連総会での訴え―「ウクライナの悲劇は始まりに過ぎない」
ゼレンスキー大統領は、国連総会において「ウクライナは最初の犠牲に過ぎない。今やすでにロシアのドローンがヨーロッパ上空を飛んでいる」と述べ、戦争がウクライナ一国の問題に留まらないことを強調しました。また、ロシアの侵攻がヨーロッパ全体に拡大しかねないリスクについても明確に警鐘を鳴らしました。
- 「プーチンはこの戦争を拡大し続けるつもりだ」と言及し、ヨーロッパを中心にロシアの領空侵犯や軍事的対立が頻発している現実を訴えました。
- 「平和を望むのであれば、ロシアとの経済的つながりか、それとも戦争被害者と連帯するか、各国に選択を迫っている」とも発言し、国際社会の積極的介入を強く訴えました。
- さらに「国連が紛争を止められない現状」を批判し、国連の改革や地球規模の安全保障体制の強化の必要性を論じています。
また、「AI(人工知能)が加わった史上最も破壊的な軍拡競争が進行している」とし、AI兵器の国際ルール整備の緊急性も訴えました。
「クレムリン標的」発言の詳細とその意図
ゼレンスキー大統領は、アクシオスのインタビューで「ロシアが戦争をやめなければ、従来攻撃の対象外としてきたロシア大統領府(クレムリン)も標的にする可能性がある」と明確に述べました。
- 「彼らは防空壕の場所を把握しておくべきだ。必要だからだ。彼らが戦争をやめないのなら、いずれにせよ必要になるだろう」と、ロシア政府首脳層に強烈な警戒心を促しました。
- 「われわれはテロリストではない。一般のロシア市民を攻撃するつもりはない」と述べ、戦争犯罪や民間人被害を避ける意志もしっかり表明しています。
- 一方で、ロシア国内奥深くへの軍事圧力を高めるため、より強力な米国製長距離兵器の供給を望んでいるとも示唆しました。
この発言は、ロシア側に対する抑止力の一環であり、今後の戦況においてウクライナが取り得るオプションの幅広さを見せつけるものでした。
戦争終結が最優先:「大統領職への執着なし」
強硬な対ロシア姿勢を見せる一方で、ゼレンスキー大統領はウクライナ国内外に向けて、「私の目標は戦争を終わらせることであり、権力の座にとどまることではない」と発言しています。
- 「公職選挙に立候補し続けるつもりはない」と言明し、戦争終結後には大統領選への不出馬を明言しました。
- これには、戒厳令下で実施できない大統領選の正当性に疑念を持つアメリカ・トランプ政権らに向けた配慮も含まれていると考えられます。
- また、「平和が訪れれば、すぐにでも権力の座を離れる」との発言もあり、リーダーとしての責任と誠実さをアピールしています。
ゼレンスキー氏は、国家指導者としての野心や利害以上に、ウクライナ国民の安寧と持続的な平和の実現を最優先課題と明言しています。
ロシアの脅威―ウクライナ侵攻は「世界規模」と警告
ゼレンスキー大統領は、ロシアの侵略行為が今や単なるウクライナ問題ではなく、ヨーロッパ全体、ひいては国際秩序を揺るがす安全保障上の脅威だと繰り返し訴えています。
- 「ロシアがこの戦争を引き延ばしつづける間、沈黙しないでほしい。どうか支援を続けてほしい」と各国に支援の継続と対ロ圧力の強化を要請しました。
- また、「国連やG7、G20の強い外交的・経済的リーダーシップの重要性」も重ねて語りました。
- 「沈黙」は国際法の無力を示すだけでなく、将来的な直接的被害を各国にもたらす可能性があるとの危機感も示しています。
ウクライナ農家がロシア製のドローン攻撃に日々晒されている現状や、ロシアによる民間施設への攻撃の激化、さらには人工知能技術の軍事転用など、現場の生々しい状況も含め、世界に向けて「命と国際法秩序を守ろう」と強く呼びかけました。
“平和”か“侵攻継続”か、世界の岐路
ゼレンスキー大統領の一連の発言は、ウクライナの戦争がいかに国際社会の平和と安定に直結しているかを浮き彫りにしています。
- 各国に対し、「貿易や経済的利益を優先し続けるのか、あるいは人命や平和の実現を共に目指すのか」という根本的な選択を突きつけました。
- 「国際社会が沈黙しパッシブな姿勢をとり続ければ、ロシアの侵略はウクライナを越え拡大する」との懸念を示し、世界的な連帯の必要性を改めて訴えました。
- また、AIを含む新たな脅威への迅速な国際的ルール作り、社会全体の自主防衛意識の醸成など、未来志向の対応も強調しています。
戦争が長期化する中で失われる命や経済的損失を前に、人類全体の危機管理能力が問われ、問題の核心が浮き彫りとなっています。
今後の展望、国際社会に求められる役割
ゼレンスキー大統領の警告と強い意志は、ウクライナの現状を伝えるだけでなく、世界中に向けた“目覚め”のメッセージとも言えます。
今後、ロシアとウクライナの軍事・外交的な動向はもちろん、欧米や日本を始めとする国際社会の対応、そして国際機関による平和構築努力の進展が大きなカギを握ることは間違いありません。
- 軍事的支援や経済制裁に加え、外交的圧力、AI軍事利用の規制、情報戦への対策など、多層的な国際安全保障枠組みの構築が急務です。
- 一人ひとりが「私たちにできること」を考え、ウクライナと共に「命と平和」を守る主体的な行動が試されています。
ウクライナの未来、ヨーロッパの安全保障、そして世界平和への道筋――。ゼレンスキー大統領の発信は、それら全ての問いかけでもあります。
国際社会がどのような決断を下すのか、引き続き注視が必要です。