ドジャースに吹く逆風と新たな希望──ベン・ロートベットが担う捕手陣再編の舞台裏

不運続く捕手陣、主戦捕手スミスが重傷

2025年9月下旬、ロサンゼルス・ドジャースに巡り合わせた試練が再び大きな注目を集めています。きっかけは、主戦捕手のウィル・スミスが右手の亀裂骨折で長期離脱となったことです。スミスはピッツバーグ・パイレーツ戦でファウルチップを手に受け、その後も痛みが引かず、13日に負傷者リスト(IL)入りを余儀なくされました。X線やMRI等、初期検査では目立った異常は見つからなかったものの、症状は改善せず「重傷なのでは」と報じられるに至ります。これにより、ポストシーズン進出を決めているドジャースにとって、スミスの復帰時期は「極めて不透明」となっています。

“急造正捕手”ベン・ロートベットとは

この突如あいた大きな穴を埋めているのが、7月末にレイズから移籍してきたベン・ロートベットです。27歳の彼は、トレード直後から控え捕手としてメジャー契約を結ぶ異例の昇格となりました。8月初旬には、控え捕手だったダルトン・ラッシングも自打球で右膝を痛めてIL入りとなり、以降はロートベットが捕手として大半の試合で先発マスクを託されています。

  • スミスとラッシングの同時離脱で「唯一の選択肢」となったロートベット
  • ドジャース加入後は圧倒的な守備力と投手陣管理力を発揮
  • 打撃も躍進し、打率.320・OPS.814という成績を記録

首脳陣・選手からの信頼厚く──鮮烈デビューの記録

ロートベットがドジャース・デビュー戦で見せたパフォーマンスは想像を超えるものでした。デビューから5試合で2度も九回までノーヒットノーランをリード。さらに、先発捕手として出場した13試合では投手陣の防御率1.73とリーグ1位の成績を支え、チームの安定した戦いぶりの屋台骨となっています。特に大谷翔平投手との初めてのバッテリーでは、5回を無安打無失点に導くなど大きな手ごたえと信頼感を双方に残しました。

  • 大谷翔平投手とのバッテリーで初回から8人連続で初球ストライクを要求
  • 投手陣との入念な準備とコミュニケーション重視の配球が高評価
  • 打撃でも中前適時打を放つなど攻撃でも存在感

バックアップ捕手は誰か? 不安は払拭されるのか

では、正捕手不在の今、ドジャース捕手陣のバックアップは誰になるのでしょうか。現時点でスミスの復帰時期は依然不透明であり、ラッシングも3A(トリプルA)での調整を始めたばかりです。チームはワイルドカード・シリーズを見据えたロースター策定に頭を悩ませています。公式記者は「ロートベットは限られた出場機会の中で控え捕手として検討に値する活躍を見せている」と評価。一方、マイナー契約オプションがないため、スミスやラッシングが復帰すれば「DFA(事実上の戦力外)」という厳しい現実もちらつきます。

また、投手陣のやりくりにも大きな影響が出ています。大谷翔平が二刀流登録のため投手枠を柔軟に運用できるとはいえ、長いポストシーズンを戦い抜くには複数のバックアップ捕手の存在が不可欠です。MLB公式も「ワイルドカード・シリーズではスミス復帰が不透明な場合、3人の捕手体制も検討する」としています。

チーム内外の反応──大谷翔平・監督・編成本部長のコメント

選手や首脳陣も「痛手」を否定しません。編成本部長のアンドリュー・フリードマンは「彼が復帰するまで、全力で(スミスの穴を)カバーしていかないといけないね」と語り、現場一丸となっている現状を強調します。

  • 大谷翔平は「バッテリーを組んでみて、ロートベットが投手の“良い球”を引き出す工夫が光る」と絶賛
  • 監督・コーチ陣も「投手とのミーティングや準備態度、配球の的確さがチームにも良い影響を与えている」とコメント

救援陣にも試練──グラテロル今季絶望

捕手だけでなく、投手にも暗雲が立ち込めています。リリーフの要であるブルスダー・グラテロルが「今年中の復帰はない」と公式に発表されました。編成本部長は「必要な投球量を積み上げるのが難しい」と説明し、層の薄い救援陣への負担増を認めています。ポストシーズンの長丁場を見据えて「守備バッテリーの連携・信頼」がより一層問われる局面となっています。

乗り越えるべきラストシーズン──“13年連続ポストシーズン進出”への挑戦

9月の大部分を「本来の正捕手不在」という異常事態で戦いながらも、ドジャースは直近12試合で9勝3敗と持ち直し、13年連続となるポストシーズン進出も決定させました。選手たちは口々に「こういう試練の中でこそチームの結束が強まる」と前向きな姿勢を見せています。「今できる全力を尽くし、お互いを信頼して戦うだけ」と、ロートベット自身も力強く語っています。

今後の展望──ロートベットの進化とチームの岐路

前例のない困難に見舞われながら、急造捕手ベン・ロートベットは「守備」でも「打撃」でも躍進し、捕手陣再建の中心となっています。現状では
ピークパフォーマンスを維持するため、スミスの様子、ラッシングの完全復帰、そして救援陣との連携を「一戦ごとに最善」を尽くすしかありません。ポストシーズンでの声出しや守備・投手運用の細部まで、ロートベットの慎重かつ積極的なリードが勝負を左右しそうです。

今後のドジャースの戦いは、ロートベットの更なる覚醒・信頼の深化、そして正捕手や主要戦力の復帰といった不確定要素の中で、どこまで勝ち抜けるかが大きなポイントになります。野球の神様も「試練の秋」にどんな結末を用意しているのでしょうか。「控え捕手は誰か」「ロートベットはこのままドジャースの正捕手として名を残せるか」──ファンも含めて全員が注目する勝負の時間は、すでに始まっています。

参考元