海上保安庁が主導する世界的安全連携 ― 第4回世界海上保安機関長官級会合とは

海上保安庁の国際的な役割と「比例性原則」の重要性

海上保安庁は、海上の安全や秩序維持に大きな責務を持っています。その活動の根幹にあるのが、比例性原則の理解と実践です。比例性原則とは、必要な範囲でのみ法的措置や力の行使を行い、安全確保と人権保護のバランスを常に維持するという考え方です。この原則は、艦船の検査、密輸や海賊行為への対応、不審船への臨検など、日々の保安活動に不可欠です。
近年、海洋犯罪やテロの脅威、IUU(違法、未報告、無規制)漁業、環境問題など、海の安全を揺るがす課題が世界規模で増加しています。海上保安庁は、これらの脅威に対して、法執行の「過不足ない対応」を目指しています。比例性原則が遵守されることで、各国保安機関の信頼と連携が生まれ、安全な海洋秩序の確立につながるのです。

第4回世界海上保安機関長官級会合の概要

2025年9月10日~12日に、イタリア・ローマにて「第4回世界海上保安機関長官級会合」が開催されました。会合はイタリア沿岸警備隊160周年記念事業の一環として初めて東京以外で行われ、過去最大規模となる99の国・地域、115の保安機関・関係機関が集結しました。
この会合は、海上での安全確保や環境保護、法の支配に基づく海洋秩序の構築、各国間の知識・技術の共有、人材育成プログラムの進捗確認など、国際連携強化の場となりました。
日本の海上保安庁・瀬口良夫長官とイタリア沿岸警備隊のカルローネ・ニコラ長官が共同議長を務め、会合中には各国の取組みや課題への対応が積極的に議論されました。

ローマに世界が集う:幅広い国・地域の参加

第4回会合には、99もの国と地域から代表が参加し、アラブ諸国も積極的に登場しました。特にサウジアラビアやカタールなど、アラブ連盟を構成する複数国が国際対話に加わり、共同で海上安全や法の支配の促進を誓っています。海洋をめぐる協力体制は、地中海、インド洋、太平洋と世界中の安全保障に直結しているため、各国が連携の強化に努めています。

海上保安庁の主導的役割と日本の貢献

日本はこの会合の共催国であり、石破茂総理は歓迎のメッセージで「青く美しい海は世界の財産であり、法の支配に基づく自由で開かれた海の維持が不可欠」と強調しました。
瀬口長官は「海上保安機関は『法の支配の守護者』でなければならない」との方針を述べ、「平和、美しく、豊かな海」を次世代に継承するための国際協力深化を呼びかけました。この理念は現在進行形の「海上保安国際人材育成オンラインプログラム」や、海上保安政策プログラムの優良事例紹介にも表れています。

  • 法の支配:海上保安庁は国際海洋法の遵守を重視し、不法行為や海洋犯罪撲滅に積極的です。
  • 人材育成:日本発のオンライン人材育成プログラムが拡充され、世界レベルで優秀な保安人材が育成されています。
  • 国際協力:気候変動問題への対応や海洋資源保護、IUU漁業対策など、グローバル課題にも対応する方針です。

世界的課題と協力強化

海上保安機関の活動は、単なる法執行を超えて、次のような多岐にわたる分野に拡大しています。

  • 海難救助:救命活動での迅速かつ的確な対応。
  • 海洋環境保護:プラスチックゴミ問題やオイル流出、水産資源の乱獲などの環境問題にも積極的に取り組み。
  • 違法行為の取り締まり:密漁・密輸、海賊行為に対して国際連携のもとで取り締まり。
  • 海洋状況把握(MDA):最先端の情報収集および分析手法の導入。

海上保安庁はこれらの分野で各国と協力し合い、世界の海洋安全・平和維持に貢献しています。特に、法的にも倫理的にも「比例性原則」を徹底することで、過剰な武力行使や無用な混乱を避けつつ、最大限の安全確保を目指す姿勢を大切にしています。

海上保安庁を中心とした今後の展望

今後は、国際的な協力枠組みのさらに一層の強化や、技術・人材の交流、組織犯罪・テロ対策のグローバル化がますます重要になります。既に、2027年には第5回世界海上保安機関長官級会合がインドで開催されることが決定し、アジア・中近東・欧州の国々の連携強化も予想されます。
海上保安庁は、比例性原則を基礎として、公正で平和な海洋秩序の維持に引き続き取り組んでいきます。世界の海に生きる全ての人々の安心・安全のため、国際社会の知恵と力を集めて、より良い未来へ歩みを進めています。

まとめ:海上保安庁の挑戦とグローバルな連携

今回の第4回世界海上保安機関長官級会合は、歴史的規模での国際的対話の場となり、海上保安庁のリーダーシップと日本の国際的連携力が際立ちました。比例性原則や法の支配に基づき、平和で豊かな海を守るため、世界各国の保安機関が一丸となり協力を誓っています。海上保安庁は、今後も世界の航海者や海洋利用者、そして未来世代へ安全かつ美しい海を引き継ぐため挑戦を続けます。

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