はま寿司の学生アルバイトが労働組合を結成 〜現場で何が起きているのか〜
はじめに
2025年9月19日、回転寿司チェーン大手の「はま寿司」で働く学生アルバイトたちが、ついに自らの労働組合(回転寿司ユニオンはま寿司本部)を結成しました。この動きは、同業他社である「スシロー」の労組活動と連携したもので、働く環境をより良くし、正当な権利と待遇を求める若い世代の声として大きな注目を集めています。この記事では、学生たちが労組結成に至った背景や、どのような課題が現場に存在したのか、そして今後の展望について、分かりやすく丁寧に解説します。はま寿司で働くみなさんだけでなく、同じような環境で働く全ての人にも読んでほしい内容です。
労働組合結成の経緯
2025年夏以降、東京、埼玉、北海道、長野のはま寿司各店舗で働く多くの学生アルバイトやフリーターが「回転寿司ユニオン」へと次々に加入しました。この動きの中心となったのは、もともとスシローで2022年に結成された「回転寿司ユニオン」です。結成時にはスシローで働く大学生が中心でしたが、はま寿司でも同じような労働課題が顕在化する中、今年6月にはま寿司本部が立ち上げられ、ついに正式な組合として記者会見でも発表されました。
- 働く学生が自発的に連携し、組合化へと動き出した
- 最初の団体交渉から、制度の是正に早くも成果が出始めている
切実な現場の声〜なぜ組合に?
労働組合の構成員は、学業や趣味と両立しながらアルバイトを続ける現役大学生や若者たちです。たとえば、埼玉県内のはま寿司でアルバイトをしている大学1年生のMさん(19歳・匿名)は、以下のように現場の悩みを語っています。
「趣味の音楽活動や配信活動のため、どうしてもお金を必要としていました。従業員割引でお寿司が安く食べられることも魅力でしたが、実際に働いてみると未払い賃金の問題や、人手不足で忙しい時間帯に必要人数より少ない体制で作業を強いられるなど、現場が想像以上に大変だと感じました。例えば、本来2〜3人で担当すべきポジションを1人で回すことも多く、本当に大きな負担でした」。
こうした状況から、Mさんは労働組合へ加入を決意。初の団体交渉でも達成感や手ごたえを感じられたと話しています。交渉の結果、会社側も悩みに耳を傾けてくれるようになり、職場環境の改善や相談しやすさにつながった、と前向きな意見も聞かれました。「ただし、問題は完全には解決していません。これからも仲間たちと一緒に声を上げ、環境改善を進めたい」と語ります。
最大の焦点:「1分単位」の賃金計算へ
今回の団体交渉で、はま寿司側が大きく対応を変えた点があります。それが賃金の「1分単位」計算です。
- 従来、はま寿司では「15分単位」で賃金が計算されていました。
- この制度では、たとえば1分遅刻しただけでも14分間分の賃金が切り捨てられてしまうといった問題点が指摘されていました。
- この切り捨て方式によって、働いた時間に見合わない賃金しか受け取れず、学生たちにとって大きな不条理となっていました。
労働組合は、こうした「1分遅刻で14分間分の賃金カット」という仕組みの見直しを強く要望。団体交渉の結果、はま寿司側が年度内(2025年度中)にも「賃金を1分単位で計算する」見直しを実行すると約束したのです。
過去の未払い賃金の支払いも要求
さらに労働組合は、既に切り捨てられてきた分の過去の未払い賃金の補償も求めています。会社側もこうした要求に対して前向きな姿勢を見せており、これから具体的な対応策が決まっていく見通しとなっています。
学生アルバイトの労働環境、まだまだ残る課題
大手飲食チェーンにおけるパート・アルバイト従業員の労働条件は、近年多くの注目を集めています。はま寿司の現場では、
- 慢性的な人手不足
- 忙しい時間帯のシフト厳守のプレッシャー
- 業務量と賃金のバランス
- 相談しづらい雰囲気
といった、さまざまな課題が指摘されてきました。今回の団体交渉でいくつかの改善が約束されたとはいえ、働きやすい環境づくりにはまだ多くの取り組みが必要です。
今後の展望〜若い力による現場改善の動き
注目すべきは、今回の組合結成の中心に若い学生たちがいることです。これまでは「声を上げづらい」「自分は非正規だから…」という意識も根強く、実際に団体行動に出る人は限られていました。しかし、今回のように同じ現場で同じ悩みや違和感を共有した仲間同士が結束し、労組として交渉力を持つことで、
- 会社側が現場の声を直接聞きやすくなった
- 現実を知る機会が増えた
- 今後も全国の店舗や他チェーンにも広がる可能性が生まれた
労働問題やアルバイトの権利について、「学ぶ」「主張する」「改善を勝ち取る」という流れが、若い世代から自然に根付きつつあるのが現代の特徴です。
まとめ ~一人ひとりの声が社会を変える力
はま寿司の学生アルバイトによる労働組合結成は、飲食チェーンや小売業界全体にとっても非常に大きな意味を持ちます。以前は「あきらめ」や「我慢」が常識だった現場が、今や学生自身の手によって声を上げ、ルールや環境を変えていく時代となりました。
今回の改革は、まだ始まったばかりです。しかし、賃金の1分単位計算化や未払い賃金問題の是正に向けた動きは、同じように働く他の人たちや、これからアルバイトを考えている若い人にとっても希望になるでしょう。
労働法や労働組合活動は、決して特別な人だけのものではありません。一人ひとりが自分の働き方に疑問を持ったとき、今回のはま寿司の学生たちのように仲間と声を合わせることで、大きな変化を生み出すことができるのです。
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