ニューヨークの街角に広がる「実家のような安心感」――現地ブックオフの内装に感じる日本のぬくもり

2025年9月22日、SNSを中心に話題となったのは、アメリカ・ニューヨークに存在するブックオフの店舗風景。その内装がまるで日本の店舗そのものだと多くの人々を驚かせ、「実家のような安心感」を呼び起こす温かな話題が広がっています。本記事では、現地ブックオフを訪れた人々の声や、店内の様子を細かくご紹介しながら、なぜここまで日本の空気が漂うのか、その理由に迫ります。

ニューヨークのブックオフ、見た目はやや違えど…”中身”は完全に日本?

外観からは、白と黒を基調としたシックなデザインが印象的なニューヨークのブックオフ。日本国内のカラフルなブックオフの看板とは趣が異なり、ニューヨークの町並みに自然と溶け込んでいます。そのため、何も知らずに通りかかると「ただ名前が同じだけの違う店」と思ってしまうかもしれません。

しかし一歩店内へ入ると、その空間は一変。ぎっしりと詰まった日本語の書籍、赤地に白文字のインデックスプレート、棚上部のジャンル分けプレート…。そこには、まさに日本のブックオフそのものの世界が広がっています。Xでこの光景を紹介したユーザー「でめきん」さんの投稿には、「いつもの見慣れた光景がそこに」「実家のような安心感」「日本からそのまま持ってきたような空間」といった感動の声が次々と寄せられ、共感の大きさを物語っています。

2階建て店舗の内訳と圧倒的な”日本感”

店舗は2階建てで構成されており、1階は日本語の書籍をメインに扱うフロア、2階は洋書を扱うフロアに分かれています。店全体としては立地柄、洋書の割合が高くなってはいるものの、1階の日本語コーナーは「めちゃくちゃブックオフ」な熱気に包まれていました。

  • 文庫、新書、一般書籍
  • 漫画(少年漫画から青年漫画まで幅広く)
  • フィギュアやねんどろいど、フィギュアアーツなど日本製のグッズ
  • 英訳された漫画作品

フィギュアのラインナップには、日本では見かけない海外メーカー製の日本アニメ・ゲームキャラクターも混在しており、コアなファンにも嬉しい構成となっています。小説作家では司馬遼太郎、森博嗣、綿矢りさ、山田悠介といった日本で人気の名前が並び、ジャンルを超えて多様な日本カルチャーが集約している点も大きな魅力です。

現地スタッフ&現地客、日本人は少数派の不思議な”日本空間”

ここまで日本の本やカルチャーに溢れていれば「在住日本人向けの店舗」と思うのが自然ですが、実際は様子が異なるようです。訪問した「でめきん」さんによると、平日の夕方で店内はさほど混雑しておらず、店員や客層は日本人然とした人は少なく、多くが現地ニューヨーカーのようだったとのこと。つまり、日本の文化や書籍を愛する現地住民を中心に親しまれていることがうかがえます。

店内を流れるBGMも、日本のブックオフでおなじみの「本を売るならブックオフ」のアナウンスや有線放送ではなく、現地の流行音楽やラジオが流れているため、異文化融合の不思議な心地よさが漂います。

「立ち読み文化」はニューヨークにはあるの?

日本のブックオフの象徴ともいえる「立ち読み文化」。コロナ禍では一時的に中断されていましたが、2023年には再び立ち読みが解禁され、自由に本を手にとって読む光景が戻りました。ニューヨークのブックオフでも同じような雰囲気なのかを確かめてみましたが、現地店舗では立ち読みの姿はあまり見られないようです。

  • 現地利用者は本をじっくり吟味してから購入する傾向が強い
  • アメリカの書店文化では、黙って立ち読むよりも、店員との会話やリコメンドが重要視される傾向も
  • 本棚間のスペースやレイアウトが、日本のような「長時間滞在専用」には作られていない

このように、内装や品揃え、書籍配置といった根幹は完全に日本式でありながらも、細部で現地の文化や習慣に合わせた違いが垣間見えます。

「実家のような安心感」を支える細やかな演出

なぜこれほどまでに日本を感じるのか――それはやはり、日本人なら誰もが親しみを覚えるインデックスやジャンル分け、書棚の高さや配置、日本語の表記、そしてぎっしりと並ぶ漫画や小説の山に集約されます。郷愁や懐かしさ、旅先や異国でこそ強く感じる「文化のホーム感覚」。こうした点が、「実家のような安心感」と呼ばれる大きな要因でしょう。

また、店舗を訪れた日本人や現地日本カルチャー愛好者だけでなく、さまざまなバックグラウンドを持つ利用者が「新しい発見」や「異国体験」を味わえる特殊な空間でもあり、それが多くの人々の心をひきつける理由となっています。

海外ブックオフの”普通のすごさ”、これからも続くか

本来、海外に進出する日本のチェーン店舗は、現地商習慣や顧客層に合わせ、内装やサービスを大きくカスタマイズするのが一般的と言われます。例えば飲食店であれば、現地独自メニューや現地スタッフによるサービス教育、その土地ごとのインテリア・エクステリア…。「本当に同じ店?」と疑ってしまうほど文化的差分が生まれるのが普通です。

その中で、ニューヨークのブックオフは「日本の感覚」をほぼそのまま海外に持ち込んだ稀有な事例といえるでしょう。日本人の利用者はもちろん、現地の人にも「日本式の本屋」「日本カルチャー発信基地」として確かな存在感を放ち続けています。

SNSの反響をみても、「変わらないこと」の価値が、利用者に愛される最大の秘訣として受け止められているようです。「何年経っても帰ってきたくなる場所」、それこそが「実家のような安心感」の本質だといえるのではないでしょうか。

おわりに――日本の心が息づくニューヨークのブックオフ

遠く離れた異国の地・ニューヨークに、日本の「当たり前」がぎっしり詰まったブックオフが存在する。その事実に、多くの日本人、そして日本文化を愛する世界中の人々が、心からの安堵と驚きを感じています。ただ商品の品揃えや内装を真似るだけでなく、「本と人をつなぐ場」として同じ匂いがする――そんな空間で生まれる交流や感動は、今後も日米の架け橋となっていくことでしょう。

私たちが日常の中で見過ごしていた「実家のような安心感」。それを世界のどこかで体現してくれる、ニューヨークのブックオフはまさに”文化の灯台”。この心温まる話題をきっかけに、今一度身近なブックオフや、自分にとっての「安心できる居場所」を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

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