悪天候と重なる注目の一戦:マルセイユ対PSG「ル・クラスィク」延期の背景

リーグ・アンの伝統の一戦「ル・クラスィク」が悪天候で延期

2025年9月21日に予定されていたリーグ・アン第5節オリンピック・マルセイユ(OM)対パリ・サンジェルマン(PSG)による伝統の「ル・クラスィク」が、マルセイユ地方を襲った激しい悪天候のため、突如延期となりました。試合会場となるスタッド・ヴェロドローム周辺では大雨、雷雨、強風、さらには洪水警報も発令されており、観客・選手・関係者の安全確保の観点から極めて異例な決定がなされました。フランス気象局によると、最大風速55km/hもの突風や、一部地域では120mmを超える降雨が予想されていたことから、地元当局はリスク回避を優先した判断でした。

延期決定の舞台裏:生じた混乱と調整

試合開催数時間前、ブーシュ=デュ=ローヌ県知事が安全面の大きなリスクにより試合の延期を公式発表しました。多くのサポーターが会場入りへ向かっていた最中のニュースは、SNSでも瞬く間に拡散。リーグ・アン運営(LFP)は現地9月22日(月)午後8時に試合を翌日に順延すると発表しました。

  • マルセイユは今季序盤、リーグで不安定な成績(2勝2敗)で注目を集めていました。
  • PSGはリーグ1で好調なスタート(4連勝)を切っており、不敗記録の更新が期待されていました。
  • 過去12シーズン、マルセイユはホームでのPSG戦で勝ち星がなく(3分9敗)、屈辱の歴史更新のタイミングとなっていました。

この延期決定に対し、LFPの公式発表まで現場は混乱し、ファン、選手、クラブ関係者全員が難しい調整に追われる形となりました。後日発表された新たな開催日時は、多くの事情を考慮した上で選定されましたが、「ル・クラスィク」という一大イベントが本来の日曜日ではなく、平日夜開催となったことでファンの間からは「仕事・学校との両立が難しい」「スタジアムに行けない」などの声も上がっています。

異例!バロンドール授賞式との“日程被り”問題

さらに今回の延期は、サッカー界最大の個人賞「バロンドール授賞式」との衝突という前代未聞の事態も招きました。パリ・サンジェルマンは昨季チャンピオンズリーグ優勝チームとして、9名の選手とルイス・エンリケ監督が複数部門でノミネートされていました。しかし試合と授賞式が同時開催となり、PSG関係者はバロンドール授賞式に出席できなくなりました。

  • PSG側は試合時間の調整に動くも、マルセイユ側がリーグ規定通り「延期翌日の指定時間から再開」を主張。
  • ファンや関係者からは「どちらを優先すべきか?」「歴史的な試合か、世界的な授賞式か」という議論が噴出。
  • LFPも最終的に規定遵守を選びました。
  • バロンドール候補:デンベレ(フランス)、ドゥエ(フランス)、クヴァラツヘリア(ジョージア)、ジョアン・ネヴェス(ポルトガル)らが出場。

この“日程被り”は、パリで開催されるバロンドール授賞式本番にも影響を及ぼし、PSGの関係者が出席不可となる異例の対応が取られました。「試合とともに歴史が動く瞬間」として、世界的にも報じられました。

安全への最大限の配慮と、サッカー文化の尊重

今回の「ル・クラスィク」延期の一連の流れからは、選手・観客の安全確保が最優先とされる現代サッカーの意識が鮮明に示されました。天候によるリスクを真剣に捉え、地方当局やリーグ運営、クラブが緊密に連携しながら慎重な判断が下されています。さらに、「ル・クラスィク」の社会的・文化的意義を重視し、ファンへの敬意から日中開催を避けるなどの配慮があった点も大きな特徴と言えます。

試合順延による各チーム・ファンの反応と今後の注目点

  • マルセイユのデ・ゼルビ監督は「悪天候の中で選手の怪我リスクを避けるのは当然」とコメント。チームのコンディション調整に苦心している様子です。
  • PSG陣営は「連戦による調整の難しさ」「バロンドール候補出場不可の残念さ」を口にしています。今後のリーグ1制覇、欧州カップ戦の展望にも影響が出る可能性も伝えられています。
  • サポーターの間では、「スタジアムでの応援の機会損失」や、「平日夜開催への不満」も見受けられるものの、悪天候での安全配慮を理解する声も多く挙がっています。

今回の延期が示すフランスサッカー界の課題と可能性

この延期を受けて、フランスのメディアでは「大規模イベントと他重要行事との日程調整」「悪天候リスク対応」「選手の権利や安全と伝統サッカー文化のバランス」などの課題が改めて議論されています。今後は、リーグ日程や授賞式の調整のほか、悪天候対策の強化、ファン・観客への情報提供の徹底など、多面的な対応が求められるでしょう。

さいごに

「ル・クラスィク」の延期は、フランスサッカー界が直面する課題や、観客・選手・クラブ・メディア・イベント主催者それぞれの想いと葛藤が浮き彫りとなった象徴的な出来事でした。“歴史的な一戦”が無事開催されること、そしてこの困難を経て新たなサッカー文化が育まれることが、多くのファンや関係者にとっての願いです。

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