スターダム女子プロレス、新時代への躍進と「運命」の絆——吏南、木村花さん、TCSの思い出
スターダムといえば、いまや日本のみならず世界から注目を集める女子プロレス団体です。2025年9月、スターダムのベルトに“運命”というドラマが宿りました。その渦中にいるのは、かつての人気ユニット「TOKYO CYBER SQUAD(TCS)」のメンバーとして活躍した吏南選手です。新人時代から経験してきた苦しみや葛藤、そして大きな飛躍。その歩みには、早世したリーダー・木村花さんの影響、仲間たちとの絆、そしてプロレスへの真摯な思いが詰まっています。
「運命のベルト」——吏南とTCSの再会
2025年9月10日後楽園大会、スターダムのアリーナが熱狂に包まれました。この大会のメインイベント終了後、吏南、小波、フキゲンです★がアーティスト・オブ・スターダム王座を獲得。小波が「この3人でベルトを獲ったのは運命」と発言したとき、会場には歓声と感動が広がりました。吏南はTCS時代の決めポーズ「イエッサー!」を控えめに披露し、かつてのユニットへの深い思いを見せました。この3人は、故・木村花さんをリーダーとして活動していたTCSの元メンバー。その日ばかりは、かつての日々が鮮やかに蘇ったのです。
ヒールから仲間へ——吏南の試練と成長
吏南のプロレス人生は、苦難とともに始まりました。彼女は羽南三姉妹の末っ子として、まだ中学生の頃にスターダムでデビューしています。しかし、初のドラフト会議では最後まで誰にも指名されず、会場にいた観客も本人すらも気まずい空気に包まれました。そんな中、「泣いている子でもいいんだよ」と手を差し伸べてくれたのが木村花さんでした。TOKYO CYBER SQUAD(TCS)は、彼女にとって“居場所”であり、そして「プロレスを続けさせてくれた原動力」でもあったのです。
「花さんがいなかったら、プロレスをやめていた」。そこまで語るほど、木村花さんの存在は大きかったと吏南は振り返ります。TCSには、小波、ジャングル叫女、琉悪夏(旧名・ルアカ)、DEATH山さん(現・フキゲンです★)ら個性派が揃っており、競い合いながらも励まし合う日々を送りました。それぞれが自分に自信を持てるよう、花さんは一人ひとりを徹底的に鍛え、技だけでなくプロレスラーとしての誇りまでも育んでくれたのです。
厳しい練習と“体で覚える”教え方
TCS時代、吏南は「こっぴどく怒られながらも、何度も技を教えてもらった」と語ります。とりわけ印象的なのは「卍固めを100回練習した」エピソードです。花さんは“繰り返して覚える”というスタイルで手取り足取り指導し、できるまで見守る姿勢を貫きました。本人は「こういう努力の仕方は今まで知らなかった」と話します。まさに「身体で覚える」型破りな指導法が、吏南のベースとなったのです。
- 木村花さんから直接叱咤され、挑戦し続ける精神を身につけた
- TCS解散後も、その教えは吏南の中で大切な財産となった
- 幾多の困難を乗り越えた経験は、同世代レスラーにも希望を与えている
学級委員から“ヒール”キャラクターへ——吏南のトンデモ人生
“学級委員だけど喧嘩上等”——このフレーズが示す通り、吏南はリング外でも“異端”で通っています。普段は真面目な学級委員。なのにリングに上がればナチュラルヒール。人生そのものが「ギャップの連続」なのです。プロレスデビューは11歳と早く、最年少のキッズレスラーとして華々しく登場。しかし、世間からは「本当にプロレスラーなの?」と半信半疑で見られたことも。「正当なプロレスとして認めてほしい、その思いがいまのエネルギー」と語っています。
この“ギャップ”の裏には、TCSメンバーや木村花さんとの日々、そしてユニット解散という挫折もありました。吏南は「悩みもあったけれど、TCSだからこそ支え合えた」とも振り返ります。逆境をポジティブに変える力、それこそがスターダムの伝統、そして吏南自身の魅力です。
同世代レスラーやファンとの絆——ライバル上谷沙弥の存在
スターダムには「上谷沙弥」選手という、吏南にとって良きライバル・良き仲間がいます。試合では激しいバトルを繰り広げますが、リングを離れれば互いに支え合う存在。「喧嘩上等」と言いつつも、真剣勝負の中で信頼を積み重ねた間柄です。女子プロレスの“令和世代”を牽引する2人の友情と闘志は、スターダムをますます盛り上げています。
- リング内外で支え合う、同世代女子レスラーたちの強い絆
- 「トンデモ人生」で悩みぬいたからこそ、仲間の大切さを痛感
- ファンとの交流もしっかり大切にし、“応援が自分の力になる”と笑顔を見せる
これからのスターダムと新時代のリーダー像
令和の女子プロレスは、個性豊かな才能が次々登場し「競い合い、引き立て合う」ダイナミックな時代となっています。Sareee選手のように“令和のアントニオ猪木イズム”を受け継ぎ、徹底抗戦の姿勢を貫く選手もいれば、吏南のように「友情や教え」を大切にしながら成長を続ける選手もいます。新旧世代が交差しながら、団体としても魅力を日々進化させているのです。
吏南は新しいチャンピオンとなった今、「TCSの思い出を胸に、これからも闘い続ける」と語ります。“運命のベルト”を手にした少女は、仲間の教えとファンの声援を背負い、自らの新時代を切り拓こうとしています。その姿は、木村花さんが遺した「繋がり」の証明であり、すべての女子プロレスファンへの勇気のメッセージでもあります。
おわりに——吏南が残す、未来へのメッセージ
最後に吏南は「木村花さんとTCSから学んだこと、そして今の仲間と切磋琢磨してきた日々は、自分の原点です。ファンの応援があるからこそ、私は何度でも立ち上がれます」と語りました。プロレスの魅力はリング上の闘いだけにとどまりません。世代や立場を超えて「繋がっていく心」。それこそがスターダム、ひいては女子プロレス界の大きなテーマなのです。
- これからもスターダムは“多様な個性”で女子プロレス界をリードします
- 団体の歴史や故人の教えを大切にしつつ、新たな夢を育てていく——そんな令和の闘い方に今、注目が集まっています