マンチェスター・ユナイテッドに吹き荒れる激動――アモリム体制が直面する現実
■揺れる名門、苦境のなかにいるマンチェスター・ユナイテッド
サッカーファンなら誰もが知るマンチェスター・ユナイテッド(以下マンU)が、前例のない苦悩の只中にあります。2025年シーズンはプレミアリーグ第4節を終えて1勝1分2敗。順位は14位、さらにカラバオ・カップ(リーグカップ)では4部グリムズビー相手にPK負けを喫し、まさかの早期敗退となりました。この成績は、プレミアリーグ創設以来、クラブ最低レベルと言っても過言ではありません。33年ぶりとも報じられる大不振に、現地メディアもクラブOBも、さらには数多のファンまでもが苛立ちを隠しません。
■赤裸々な内部告白――「私たちにはアイデンティティがない」
クラブ内部からも危機意識がにじみ出ています。フットボールダイレクターが「私たちにはアイデンティティがない」「まるでジェットコースターのような、非常に厳しい日々だ」と率直に現状を吐露。マンUは長年、その伝統的なサッカー哲学と強固なチーム文化で世界中のファンを魅了してきました。しかし、ここ数年は指揮官交代や戦術の大幅変更、新戦力獲得とスカッド再編が繰り返され、「マンUらしさ」という軸が揺らいでいるのです。
- 低迷が続く中で、統一したプレースタイルや明確な方向性が見出せなくなっている
- 新しい監督や選手が投入されるたび、チームの戦術や役割分担も大きく変わってしまう
- 過去の栄光への期待と、現実とのギャップが、スタッフ・選手・サポーター全員の心理的負担となっている
■就任1年目のアモリム監督――徹底した戦術哲学に周囲困惑
騒動の中心にいるのが、ルベン・アモリム監督。彼はポルトガルリーグ時代から注目を集める若手指揮官でしたが、就任以来31試合で31ポイントしか積み上げられていないのが現実です。4バックが伝統だったマンUにあって、アモリム監督は3バックシステムを強硬採用。この“型破り”戦術がチームの成績不振の大きな要因ではと疑問視されています。
注目すべきは、アモリム監督自身が「誰にも戦術は変えさせない。教皇ですら私のやり方を変えることはできない」と発言していることです。現地メディアや一部サポーターは「何てことだ!」と驚愕し、長年愛されてきたマンUの“DNA”と現体制の間で溝が深まるばかりです。批判の声が日増しに高まる中、「私には自分の哲学がある。簡単には曲げないし、責任も全て自分で取る」と、アモリム監督は一歩も譲る気配を見せていません。
- 伝統の4バックから、指揮官の信念に基づく3バック戦術へ積極的転換
- 攻守の連動やバランス面で混乱が見られ、選手も適応に苦しんでいる
- 「哲学を貫く」という信念は立派だが、短期的な成績悪化という現実もクラブ全体を圧迫している
■オーナー・フロントと監督――不穏な空気と「普通」を強調するやりとり
クラブ共同オーナーのジム・ラトクリフ氏がアモリム監督との緊急会談に乗り出す展開となるなど、上層部も危機を察知。メディアは指揮官解任論を連日取り上げていました。しかし、アモリム監督はこの会談について、「新契約を提示された!」と冗談を交えつつ、あくまで「サポートを再確認し、これまで通り長いプロジェクトとしてやっていくという話だった」と明言。オーナーも「これは私にとって3年目のプロジェクトだ」と繰り返し、直接の解任警告や緊急事態対応ではなく、プロジェクトとしての継続性にこだわる姿勢を示したようです。
- フロントと監督の間には深刻な緊張感が漂いつつも、表面上は「通常運転」を強調
- 選手や後方スタッフとのコミュニケーションも含め、あくまで「普通の会議」であると装っている
- 世間では解任危機が騒がれているが、本人は「特別なことではない」と冷静に対応している
■猛烈な批判とファンの失望、クラブOBも我慢の限界
マンUといえば、イングランドサッカーの象徴とも言える名門。しかし今、「結果が出なければ意味がない」「伝統を無視するな」といった声が、メディアのみならずクラブOBやファンからも噴出しています。SNSや現地紙は、過去何十年も体験してこなかった危機的状況を憂い、監督やフロントの手腕に大量の批判と失望を浴びせています。
英国著名紙も一斉に「このままではクラブのアイデンティティが崩壊する」「世界中のファンの夢も消えかねない」との論調で紙面を埋めており、「クラブの誇り」「勝者のメンタリティ」といったキーワードが頻繁に登場。伝統を壊しかねない危機感が広がっています。
- かつての栄華を知るOBは「これではチームがバラバラになる」と警鐘を鳴らす
- サポーターからは「クラブが何を目指しているのかわからない」「選手起用や戦術の説明責任を果たしてほしい」と、透明性や説明責任を求める声が急増
- その一方で、一部には「長期的な視点でプロジェクトを応援すべきだ」と現体制支持の声もあるが、現実の成績低迷がそのバランスを崩しつつある
■今後の展望――チェルシー戦で流れを変えられるか?
混迷を極めるマンUは、このあとホームで強豪チェルシーと激突します。アモリム監督は「これがサッカー。マンUは世界で最も大きなプレッシャーがかかるクラブだ」と、自身と選手たちに発破をかけており、次の一戦でシーズンの潮流を大きく変えられるかが注目されています。
いずれにせよ、アモリム体制の成否が揺れる今、「監督の哲学と伝統・組織文化の衝突」「成績不振と内部統制」「ファンからの信頼回復」――多くの難題がクラブを覆っています。今後、マンUは危機を乗り越え名門復活を果たせるのか。その歩みから、今後もサッカーファンの目が離せません。