障害を乗り越え、土俵に立つ―友風が魅せる「勝敗を超えた」力士の魂

はじめに:勝敗を超えて語られる友風の相撲人生

友風想大――彼の名は、ここ数年で大相撲界において特別な意味を持つようになりました。
2025年秋場所、彼は単なる勝ち負け以上の何か――「障害を乗り越え、再び土俵に上がる」その生き様で、多くの人々に深い感動を与えています。
舞の海氏が「思い出しますよ、車いすで運ばれていったあの姿を」と語るほど、彼の復帰劇は壮絶でした。
この記事では、友風の波乱に満ちた相撲人生、障害との向き合い方、土俵で表現する不屈の魂について、最新の取材や報道をもとに詳しくお伝えします。

プロフィールと経歴

  • 本名:南 友太(みなみ ゆうた)
  • 生年月日:1994年12月2日
  • 出身地:神奈川県川崎市川崎区
  • 身長・体重:185cm・183〜179kg
  • 所属部屋:中村部屋(入門時は尾車部屋、後に二所ノ関部屋)
  • 最高位:西前頭3枚目(2019年9月場所、11月場所)

スポーツ万能な少年時代、空手・バスケットボール・柔道など様々な競技を経験し、高校で相撲に打ち込みました。
日体大進学後、2017年夏場所で初土俵を踏み、2018年九州場所で新十両、19年春には新入幕。
2019年名古屋場所では年6場所制以降で最速タイの14場所目で初金星を挙げた実力者です。

突然の大怪我、そして絶望

彼の相撲人生に暗雲が立ち込めたのは、右膝下に大怪我を負い、切断寸前の重傷を負った2019年以降です。
怪我の様子は衝撃的で「車いすで運ばれていった姿」を今も多くの関係者・ファンが強く記憶しています。
最初の病院で「もう土俵には上がれません。歩けるようになるかを考えましょう」と宣告され、本人も引退を覚悟。
5ヶ月もの入院生活で、将来の想像もつかなくなっていたと言います。

  • 当時、競技復帰は絶望的な重傷。
  • 日常生活さえ元に戻れるか不安だった。
  • 母親の看病や、リハビリ仲間の子どもたちから勇気をもらった。

しかし彼は、装具や治療を受けながらリハビリに耐え、少しずつ歩行を回復。その果てに再び稽古へと戻ります。

障害者手帳を携えた現役力士へ

リハビリ再開後も、右足には腓骨神経麻痺の後遺症が残り、装具なしでは歩行にも支障が出る状態。
2021年2月には身体障害者5級(軽度の身体障害)に認定され、現在も障害者手帳を保持しています。
復帰後も、右膝から下のしびれは消えることなく、土俵の上では「障害を受け入れて戦う」毎日が続いています。

  • 日々、部屋に寄って治療を受けてから帰宅。
  • 周囲の理解とサポート、母親や指導者、中村親方(元嘉風)からの励ましを受け、稽古の質を工夫。

新しい師匠・二所ノ関親方からは「怪我がなければ大関もあり得た」と励まされ、同様の怪我で引退した中村親方からも特別指導を受けました。「科学的な稽古」にも取り組み、無理なく力を発揮できる環境が築かれていきました。

勝敗を超えた「生き様」こそ、現在の友風の価値

2025年9月、秋場所。友風は3度目の対戦となる明生に初白星を挙げます。
「怪我をする前の自分よりは強くない。それでも全盛期でも勝てなかった相手に、ハンデがある体で勝てた。障害を受け入れ、土俵に立てていることが誇り」と語った友風。
彼の取組後には、毎日治療に通いながらも、土俵に上がる姿そのものが多くの人に希望を与えています。

  • 障害者手帳をもつ現役幕内力士という唯一無二の存在。
  • 日々、「勝つ」という目標の枠を超え、「土俵に戻り、戦えること」そのものに意味がある。

自身の復活劇に「障害を受け入れて戦える今が誇り」と語る友風の姿は、多くのスポーツファンや障害を持つ人への勇気となっています。
障害や逆境に直面する時、彼が見せた「悩み・努力・乗り越える」姿は、まさに「勝敗を超えた」スポーツの価値そのものです。

周囲の目、力士仲間たちとの絆

友風の復活劇は、身近な力士たち、指導者、そして相撲ファンの間にも大きな衝撃と感動を与えています。
舞の海氏の「車いすで運ばれていった姿を思い出しますよ」というコメントが象徴するように、ただの戦績や番付を超えた存在として見られています。
中村部屋の仲間たちは、毎日治療を受けに戻る彼を温かく迎え、励ましあう雰囲気が出来上がっています。
また、障害に向き合う中で得られた新たな友人や支援者との出会いも、彼の人生を豊かにしています。

障害や逆境が教えてくれたもの

友風は「自分より小さな子どもがリハビリをつらそうにせず頑張っている姿に勇気をもらった」と語ります。
世の中には、表に出ない苦労や痛み、困難と日々向き合う人がいます。友風は、自分の経験を通じ「障害や困難があっても必ずしも人生が止まるわけではない」と身をもって証明しています。

  • 「諦めるな」というより、「悩み、向き合う姿に価値がある」ことを伝える。
  • 障害者と健常者の間にある「見えない壁」への気づきや、社会の理解を広げる存在。

土俵の上では全力でぶつかり合いながら、取組外では黙々と治療と向き合い、障害者手帳を持つ現役力士として「できること」「できないこと」を冷静に見つめ続けています。

まとめ:友風が紡ぐ、未来へのメッセージ

大相撲という伝統と格式の中で、「障害」というハンデをもって戦い続ける友風―。
彼の「勝敗を超えた物語」は、スポーツや障害、努力や失意、そして再生の象徴でもあります。
これからも彼が見せてくれる「諦めない生き方」、「自分なりの土俵で戦い続ける姿」が、多くの人の励みになることでしょう。

関連記事・参考情報

  • 友風「ハンデがある体で勝てた。障害を受け入れて戦えている」(スポーツ報知・2025年9月19日報道)
  • 友風想大 – Wikipedia(2025年9月場所終了時点の情報)
  • 舞の海氏コメント「思い出しますよ、車いすで…」等

参考元