ダイバーシティ経営がもたらす日本企業の転換点──人手不足社会を支えるDE&I推進の今

社会の大きな変化と「ダイバーシティ」経営の重要性

近年、日本社会は少子高齢化にともなう人手不足という大きな課題に直面しています。このような労働人口減少の流れは、企業の持続的な成長や競争力確保の観点から由々しき問題として捉えられています。ダイバーシティ経営、すなわち多様性を生かした経営戦略は、今やあらゆる業種・企業規模を問わず、欠かせない視点となっています。
さらに、近年の人的資本開示義務化や、想定外の事象が次々と起こる「VUCA時代」を生き抜くためにも、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の実効的な推進が求められています。

ダイバーシティ経営がもたらす価値と企業の挑戦

ダイバーシティ推進の真の目的は、単なる多様な人材の採用にとどまりません。個々の価値観やライフスタイル、スキルを業務や組織風土に活かし、「目に見えない価値観やスキル」こそが、イノベーション創出や企業変革のカギとなると言われています。
ダイバーシティ経営に注力することで、社員一人ひとりが自分らしく働き、その力を最大限に発揮できる環境づくりが進んでいます。結果として、組織の持続的成長のみならず、社会全体の競争力や豊かさにも寄与しています。

最新の取り組み:DE&I推進支援サービスの登場

2025年9月、「DE&I推進支援サービス」が新たに公開され、注目を集めています。このサービスは、以下の4領域に体系化され、企業の多様性経営推進を多面的にサポートします。

  • DE&I推進アセスメント調査
    国際規格やグローバルベンチマークを参照しながら現状診断を行い、企業ごとの強みと課題を明らかにします。
  • DE&I推進コンサルティング
    企業ごとのフェーズ(導入期・定着期・発展期)に合わせ、戦略立案から制度設計、経営層との連携に至るまで一貫支援します。
  • 実践的施策支援
    セミナーや体験型プログラムを通じて意識改革・行動変容を促し、現場での実効性ある定着を図ります。
  • 振り返り・効果測定
    施策後の効果測定とフィードバックを行い、更なる改善策を提案します。

電通やデロイトなど大手企業の推進事例

大手広告会社・電通グループは、2025年にDEI領域専門イノベーション支援タスクフォースとして「dentsu DEI innovations」を設立。クライアントの多様性課題を深く理解し、事業の現場と連携して様々なソリューションを提供しています。
また、コンサルティング大手のデロイト トーマツ コンサルティング(DTC)は、日本企業に特化したDEI推進コンサルティングを展開。DEI推進の7つの要素を基盤としたコンサルティングにより、経営戦略と整合した多様性経営の実現に取り組んでいます。

「DEI推進の手引き」や無料情報公開の動き

DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)や健康経営、人事分野への実務支援として、Cradle社による「DEI推進の手引き」無料公開など、知識の裾野を広げる取組が活発化しています。こうしたガイドブックや実例集の公開は、初心者から経営層・人事担当まで、幅広く活用可能で、企業内外の理解醸成・スキル向上にもつながっています。

見えない多様性への配慮──価値観・スキルの活かし方

ダイバーシティと一口に言っても、多様性は目に見える部分(性別、年齢、国籍など)だけではありません。価値観や考え方、人生経験、働き方の志向など、目に見えない多様性こそが大きなポテンシャルを秘めています。
しかし、こうした多様性の活用は、単なる制度導入や人材登用だけでは不十分です。多様性の本質を理解し、誰もが尊重される企業文化の構築、心理的安全性の確保、経営層による継続的なコミットメントなどが不可欠だと言われています。

女性活躍推進・障害者雇用など具体的テーマでの進展

DE&I推進の中でも、日本企業にとって長年の課題である「女性活躍推進」や「障害者雇用・多文化共生」などに注力する企業が増えています。特に女性活躍推進においては、従来の『女性全体』ではなく『個人』にフォーカスを当て、管理職層の増加や能力開発を短期間で実現するための現場支援プログラムが拡大しています。障害者雇用や多文化共生についても、独自のネットワークやノウハウの蓄積・発信が進んでいます。

ダイバーシティ経営推進のためのポイント

  • 現状把握と課題発掘:アセスメントで自社の強み・弱みを可視化
  • 経営層のコミットメント:企業ビジョンとして多様性推進を明確に発信
  • 現場主導・体験型プログラム:座学だけでなく体験やロールプレイによる実施
  • データ基盤の活用:定量・定性データに基づく施策設計と効果測定
  • ソリューションの多様化:コンサルティング、ネットワーク活用、ガイドブック提供など包括的支援

ダイバーシティ推進がもたらす未来

日本社会におけるダイバーシティ経営推進は、もはや一過性の流行ではなく、社会・経済変化への持続的な対応策となっています。今後も人手不足が続く中で、性別、年齢、国籍にかかわらず、ありのままの自分で活躍できる組織を増やすことが、企業の成長と社会の幸福の両立に大きく寄与します。

実践的な支援サービスや現場支援型のコンサルティング、ガイドブックの無料公開といった取組がさらに広がることで、ダイバーシティの本質的な定着とイノベーティブな企業文化づくりが加速していくでしょう。

参考元