TDK株価が大幅続伸、モルガンMUFG証券の「トップピック」選定で投資家の注目集まる
2025年9月17日、東証プライム市場に上場するTDK株式会社(銘柄コード:6762)の株価が大幅に続伸し、投資家の関心を集めています。同日の取引では、前日終値2,021.5円から一時2,113円まで上昇し、終値は2,092.5円(前日比+71円、+3.51%)となりました。
モルガンMUFG証券が目標株価を大幅引き上げ
この株価上昇の背景には、米系大手証券会社であるモルガンMUFG証券による投資判断の見直しがあります。同証券は9月17日付けで、TDKに対する「強気」レーティングを継続しつつ、目標株価を従来の2,100円から2,600円へと大幅に引き上げました。これは約24%の上方修正となり、市場では非常にポジティブな評価として受け止められています。
さらに注目すべき点は、モルガンMUFG証券がTDKを「トップピック」に選定したことです。トップピックとは、証券会社が最も投資価値が高いと判断した銘柄に付与する特別な位置づけであり、機関投資家をはじめとする投資家にとって重要な投資判断材料となります。
TDKの業績動向と市場環境
TDKの2026年3月期第1四半期決算を振り返ると、同社は増収減益という複雑な業績となりました。売上高は5,357.53億円(前年同期比3.3%増)と順調な成長を示した一方で、営業利益は564.19億円(同2.5%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は414.62億円(同30.5%減)と減少しました。
この業績悪化の主な要因として、円高の進行と自動車市場向け製品の出荷減が挙げられています。特に自動車業界では電動化の進展に伴う需要変動や、グローバルな自動車市場の不確実性が影響を与えているとみられます。しかし、売上高の成長は維持されており、長期的な事業基盤の堅実さを示唆しています。
株価推移から見る市場の評価
TDK株の最近の値動きを詳しく見ると、9月に入ってから大きな変動を繰り返していることがわかります。9月9日には年初来高値となる2,106円を記録した後、一時1,985円まで下落するなど、ボラティリティの高い展開が続いていました。
しかし、9月5日の1,952.5円を底値として反転上昇に転じ、今回のアナリスト評価見直しを契機に、再び2,000円台後半の水準まで回復しています。年初来では1,165円(4月7日)の安値から約80%の上昇となっており、市場がTDKの中長期的な成長性を評価していることが伺えます。
同業他社との比較で見るTDKの位置
電子部品業界では、TDKの他にも複数の企業がアナリストから高い評価を受けています。同じく9月17日には、イビデンがモルガンMUFG証券から目標株価を8,300円から9,500円に引き上げられ「強気」レーティングを継続されたほか、特殊陶業も5,700円から6,300円への目標株価引き上げとなりました。
これらの企業と比較すると、TDKの目標株価引き上げ幅は相対的に大きく、業界内でも特に注目度が高いことがわかります。電子部品業界全体がデジタル化やEV化の恩恵を受けると期待される中で、TDKは特に有望視されている企業の一つと言えるでしょう。
投資家が注目すべきポイント
TDK株への投資を検討する上で、投資家が注目すべきポイントはいくつかあります。まず、同社の主力事業である電子部品事業において、5G通信、IoT、電気自動車といった成長分野での需要拡大が期待されることです。特に車載用電子部品については、一時的な出荷減があるものの、電動車普及に伴う長期的な需要増加が見込まれています。
一方で、為替変動による業績への影響も無視できません。円高の進行が利益圧迫要因となっているため、今後の為替動向と同社のヘッジ戦略の効果が業績を左右する可能性があります。
また、同社は通期見通しについて不透明な状況が続いているとして、レンジ予想を据え置いています。これは慎重な姿勢の表れとも取れますが、一方で上振れの余地があることも示唆しているとの見方もあります。
技術革新とビジネスモデルの進化
TDKが長期的な成長を持続するためには、技術革新とビジネスモデルの進化が不可欠です。同社はコンデンサ、インダクタ、センサなどの基幹技術を活かし、新たな用途開発を進めています。特に、AIや機械学習の発達に伴うデータセンター向け需要や、再生可能エネルギー関連での応用拡大が期待されています。
さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みも投資家評価に大きく影響する要素となっており、TDKの環境負荷低減技術や持続可能な事業運営が、機関投資家からの資金流入を促進する要因となる可能性があります。
まとめと今後の展望
TDK株価の大幅な続伸は、モルガンMUFG証券による目標株価引き上げとトップピック選定が直接的な要因となっています。短期的な業績については円高や自動車市場の影響による減益となったものの、売上高成長は維持されており、基本的な事業基盤の堅実さが評価されています。
今回の株価上昇により、TDKは再び投資家の注目を集める銘柄となりました。電子部品業界を取り巻く環境の変化を踏まえつつ、同社の技術力と市場対応力が真価を問われる局面が続くと予想されます。投資を検討される方は、業績動向はもちろんのこと、業界全体のトレンドや為替動向なども総合的に勘案して判断されることをお勧めします。