大盛工業の株価急落、その裏側にある要因を徹底解説
はじめに
大盛工業(1844)の株価が2025年9月16日に急落し、投資家や市場関係者の間で大きな話題となっています。本記事では、その背景となる決算内容や業績見通し、株価推移と市場の反応、今後の課題について丁寧に解説します。特に株式初心者の方にも分かりやすくまとめていますので、投資判断の参考にお役立てください。
最新決算と株価急落の経緯
- 2025年7月期決算では、売上高64億4,300万円(前年同期比7.7%増)、営業利益7億8,500万円(同26.2%増)となり、増収増益を達成しました。
- 決算発表は2025年9月12日に行われ、それを好感する形で株価が注目されてきました。
- しかし直後の2026年7月期の見通しで、営業利益が前期比16.3%減の6億5,700万円になるとの予想が示され、市場にはネガティブ・サプライズとして受け止められました。
- その結果、2025年9月16日午前の株式市場で始値850円(前日終値1,135円)、一時は843円まで急落し、最終的に22.6%安の下落幅を記録しました。
なぜ増収増益決算でも売られたのか?
決算内容だけを見ると大盛工業は好調そうですが、なぜこれほど強く売り込まれたのでしょうか?
- 来期の大幅減益予想が材料視されました。完成工事高は増加し売上も伸びる一方で、利益率の低い受注案件が多い見通しとなっており、営業利益の大幅減が懸念材料となりました。
- 人手不足や資材コスト高の長期化も逆風となっています。業界全体に共通する課題ですが、特に公共事業依存度の高い大盛工業にとっては利益確保が一層難しくなっています。
- 収益性低下が一過性でなく、ある程度継続するリスクが見込まれたことも市場心理を冷やしました。
リアルタイム株価データと投資指標
- 2025年9月12日の終値は1,135円でしたが、16日は一時843円まで下げ、前営業日比-257円(-22.64%)となりました。
- 減益予想と共に投資家のリスク許容度が下がり、出来高は2,306,700株と急増。激しい売買が行われたことがうかがえます。
- PBR(株価純資産倍率)は3.61倍、PER(株価収益率)は49.1倍(2025年9月12日時点)。割高感も指摘されていました。
- アナリストによる目標株価、レーティングは市場にほぼ出ておらず、短期的な思惑で売買が集中しやすい状況でした。
市場の反応とPTS・板状況
- 16日寄り付き前の板状況を見ると、「売りトップ」に大盛工業がランクイン。多くの投資家が短期的な利益確定、あるいは損失限定のための売却に動いていました。
- 一方、PTS(時間外取引)でも大きく値を下げており、需給の悪化が通常取引前から明らかになっていました。
業績内容と将来見通し
- 2026年7月期見通しは、売上高71億9,000万円(前期比11.6%増)と拡大が示されたものの、営業利益は16%超減少を見込んでいます。
- 収益性が大幅に低下する最大の要因は、「利益率の低い手持ち工事案件」が増加していることです。完成工事高は増加しますが、完成工事総利益は伸び悩む見通しとなっています。
- 配当予想については、前期分を10円から11円50銭へ引き上げ、今期も同額と据え置き。配当維持の方針は示されたものの、減益とあわせてあまり評価されていません。
競合企業や業界全体との比較
- 大盛工業は土木工事、とくに下水道・地中工事で高い技術力を持つことで知られています。
- 競合他社である第一カッター興業、金下建設、大末建設と比べても、株価の割高感はやや目立ち、営業利益率の見通しにも不透明感があります。
- 業界全体が国土強靱化を背景に受注は好調ですが、深刻な人手不足やコスト高の構造問題で「売上増=純利益増」となりづらい状況が続いています。
投資家の視点から見た課題と今後
大盛工業への投資を検討する際には、以下のようなポイントを慎重に見極める必要があります。
- 減益トレンドがどこまで発展するか、今後の手持ち工事の受注内容が利益率改善につながるか注視する必要があります。
- 業界最大の懸念である人件費高騰、資材コスト上昇の影響をどうコントロールするかもポイントです。
- 経営陣の事業ポートフォリオ多様化や、技術革新による利益率の改善が求められています。
- 配当政策の持続性、今後の株主還元方針も見逃せません。
さいごに:まとめとアドバイス
2025年9月、大盛工業の株価急落は、単なる業績発表だけでなく、来期の減益見通しとその背後にある構造的な課題に対する市場の厳しい評価が背景にあります。「増収増益=株価上昇」とはならない現実が改めて浮き彫りになりました。投資をされる方は、数字の表面だけでなく、その質や会社の経営戦略も含めて、長期的視点で冷静な判断を心がけていきましょう。