郡山市・海老根地区で「秋蛍」開催 〜和紙灯籠が照らす静かな秋〜
福島県郡山市中田町海老根地区で毎年秋に開催される「秋蛍(あきほたる)」が、今年も多くの来場者を魅了しました。海老根伝統手漉和紙で作られた約1,000個の灯籠が、山里に淡い光を灯し、静かで穏やかな時間が流れました。今回は、その歴史や会場の様子、地域に息づく伝統について詳しくお伝えします。
海老根伝統手漉和紙―江戸時代から続く郡山の技と心
海老根伝統手漉和紙の歴史は江戸時代に遡ります。当時この地域は水資源に恵まれており、和紙の原料となるコウゾの栽培が盛んに行われていました。農閑期の副業として和紙作りが始まり、かつては80戸以上が従事していましたが、昭和63年には生産者が途絶えてしまいました。しかし、住民の熱意により平成10年に「海老根伝統手漉和紙保存会」が結成され、伝統の技が復活。平成15年には福島県の伝統工芸品にも指定されました。
「秋蛍」〜秋の夜に灯る和紙灯籠の幻想世界〜
「秋蛍」は、地域住民や子どもたち、学生などが思い思いに描いた絵や文字が飾られた和紙灯籠に火を灯し、宵闇のなかで幻想的な景色を生み出す地域主催のイベントです。2003年(平成15年)から毎年秋に開催され、今年(2025年)は9月13日(土)・14日(日)の夕暮れ時、中田海老根和紙工房周辺で行われました。灯籠の数はおよそ1,000点にのぼり、淡いあかりが徐々に里山の田園風景を包み込みます。
- 開催期間:2025年9月13日・14日 17:30〜20:30
- 会場:中田海老根和紙工房周辺(郡山市中田町海老根)
- 入場料:無料
- 雨天順延:両日雨天の場合は9月15日(祝)に延期
会場の様子と参加者の声
会場では、ずらりと並んだ灯籠が夕暮れとともにひとつひとつ灯され、来場者は足を止めてじっくりとそれぞれに描かれた絵やメッセージを楽しみます。和紙独特の柔らかな質感が、灯りの温かみを一層引き立てていました。家族連れやカップル、高齢の参加者まで幅広い世代が集まり、「ふんわりとした光が心を落ち着かせてくれる」「地域の伝統を身近に感じる貴重な機会」という声が多く聞かれました。
地域とつながる伝統文化の新たな息吹
海老根の和紙は、単なる伝統工芸品の枠を超え、地域アイデンティティと世代継承の象徴として根強く息づいています。子どもたちは保育園や学校単位で灯籠の制作に参加し、地域の高齢者は紙漉きや灯籠作りを指導します。会場には、過去の作品や紙漉き工程の展示コーナー、和紙の販売所も設けられ、来場者はものづくり体験を通して文化を肌で感じることができます。
今後への展望と地域の誇り
近年は地元以外からの参加希望も多く、イベントは県外からの観光客にも認知が広がっています。海老根の住民にとって、この「秋蛍」は、伝統を守るだけでなく、地域活性化にもつながる大切な行事となっています。運営ボランティアや保存会のメンバーは、「伝統の技をさらに次世代につなげていきたい」「和紙文化がこれからも海老根の宝であり続けるよう努力したい」と意気込みを語ります。
アクセス・問い合わせ先
- 会場:中田海老根和紙工房周辺(郡山市中田町海老根字北向地内)
- 問い合わせ先:海老根秋蛍実行委員会
- 電話番号:024-941-3513
関連イベントのご案内
- 「柳橋歌舞伎」も同時期(9月15日)に開催予定。郡山市中田町ならではの伝統芸能もぜひ合わせてお楽しみください。
郡山市海老根の「秋蛍」は、地域に根ざした優しい光と文化を体感できる秋の風物詩です。秋の宵、和紙灯籠のほのかなあかりのなか、地域の誇りと歴史、そして未来へ続く温かなつながりをしみじみ感じてみてはいかがでしょうか。