「発達障害」の子どもが増える社会で、私たちにできること―子どもたちの「ありのまま」を受け止めて

近年、「発達障害」の子どもが増えている背景

近年、「発達障害」と診断される子どもが急増しているというニュースがたびたび取り上げられています。実際、特別支援教育を必要とする子どもの数は、少子化が進む一方でここ10年ほどで2倍近くまで増加しています。また、精神科や児童精神科の外来は「半年待ち」が当たり前になるほど多くの子ども達や保護者が相談に訪れるようになっています。この現象は単に「発達障害」自体が急増したというよりも、社会や教育現場、そして私たち一人ひとりの意識が大きく変わってきたことが背景にあります

発達障害の「増加」の本当の理由

  • 社会の理解と認知度の向上

    かつては「変わった子」「落ち着きがない」「勉強が苦手」などとされていた子ども達が、今では発達障害という枠組みで配慮され、支援を受けるケースが増えました。医療や教育現場での発達障害に対する意識が進み、「これは個性ではなく、特性への支援が必要かもしれない」と早期発見・早期支援の流れが強まっています

  • 診断・支援体制の整備

    発達障害への注目が高まることで、教育現場では「通級による指導」や「支援学級」に在籍する子どもの数がここ10年で2倍以上になりました。またADHDやASDといった診断名も一般的になり、多様な支援が用意されるようになっています

  • 子どもの生きづらさと社会の変化

    現代社会は「空気を読む」「みんなと同じことをする力」が以前より余計に問われる場面が増えたとも言われています。これまでは目立たなかった特性が「課題」として浮かび上がりやすくなったのも一因です

発達障害の「特性」とは?

「発達障害」とは、一般的には「生まれつき脳神経系に独自の特徴があり、その結果、社会生活や学習において支障が出るとされる状態」を指します。代表的なものに自閉症スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などがあります

しかし、これらの特性は決して「できない」「劣っている」わけではなく、その子自身の「個性」として尊重したいものです。

「褒め方」「声かけ」が子どもに与える影響

最近の話題では、「頑張ったね」と褒めることも実は子どもにとって過度なプレッシャーになることがあると指摘されています。発達障害の子どもは努力の度合いやゴールの感覚が大人と異なることが多く、漠然とした「頑張ったね」では、かえって「自分はもっと頑張らないと受け入れてもらえないのでは」と不安を抱くこともあります。

子ども本来の「できたこと」「工夫したこと」を具体的に認め、「楽しかったね」「ここが面白かったね」といった、行動や気持ちに寄り添う声かけが大切です。また、「できないこと」に目を向けてしまうと「怠けている」「わがまま」だと感じてしまいがちですが、そうしたラベル付けは子ども自身の自己肯定感を大きく傷つけてしまいます。

「できない」に寄り添う、新しい子育ての考え方

  • 「できない」のは子どもの責任ではない

    何度教えてもできないことでイライラしてしまう──そんなときこそ、子どもの特性を「努力不足」や「甘え」ではなく「特性」や「発達段階の違い」として考えてあげる発想の転換が必要です

  • 小さな進歩を喜び合う

    今日、ひとつだけ片づけができた。きのうより5分早く玄関に立てた。そんな小さな一歩を「大きな成長」ととらえて、保護者も一緒に喜ぶことが何よりも大切です。

  • 比べない子育て

    他の子と比べて「なぜできないの」と思うよりも、「この子にとって必要な道筋は何か」を一緒に模索するスタンスが、子どもにとっての安心感と自信につながります。

発達障害と向き合う社会の機運

SNSや書籍を通じて「発達ユニークな子」の思い、そのご家族の体験談がこれまで以上に多く発信されるようになりました。最近では『「発達ユニークな子」が思っていること』という書籍が発売からわずか1週間で重版が決まり、Amazonや楽天ブックスでもベストセラー1位となるなど、社会全体として「発達障害の子どもたちの声を聴く」意識が高まっています。

これは、これまで課題とされがちだった「違い」を前向きにとらえ、互いに学び合い、理解し合う時代へと社会全体が進み始めていることを示しています。

なぜ今、「精神科を受診する子ども」が増えているのか

現代は情報があふれ、子どもに求められる「生きづらさのハードル」が高くなっています。その結果、発達障害の特性を持つ子ども達だけでなく、より多くの子どもが不安や悩みを抱えて精神科を受診するケースが増えています。その一方で、専門医や支援体制はまだまだ充分とは言えず、半年待ちや一年待ちが当たり前、といった状況が続いています

今後は「診断」がゴールになるのではなく、「診断の有無を問わず、それぞれの子が安心できる場をつくる」ことが求められます。

「できる」「できない」を超えて——大人ができる小さな工夫

  • 「うまくできなかった」ときに無理に褒めたり、叱ったりしないで、一緒にどうしたらいいかを考える
  • 失敗を「次のチャレンジ」へのヒントとして前向きに共有する
  • 子どもが自分の気持ちを話せる雰囲気づくりを心がける
  • 保護者自身も「完璧じゃなくて大丈夫」と自分を認め、安心して助けを求める

まとめ──「違い」が「強み」になる社会へ

私たちは今、「発達障害」という言葉や診断をきっかけに、これまで見過ごされがちだった子どもたちの「生き辛さ」に気付きはじめました。そして、違いを「課題」とするのではなく、「強み」に変えながら、一人ひとりが自分らしく育つ社会の実現を目指す時代に入っています。

保護者も先生も、何より子どもたち自身も、悩んだり迷ったりしながら進む道のり。その中で「わが子はこのままで大丈夫」「できないことを責めないでいい」と感じられることが最大の支えとなるでしょう。これからも、一人ひとりの個性に寄り添い、それぞれが安心して学び・暮らせる社会づくりに向けて、私たち大人ができることを一歩ずつ積み重ねていきたいと思います。

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