東京エレクトロン株価、急落と中長期展望を巡る今後の行方 ~半導体セクター全体にも揺れる余波~
はじめに
半導体業界の重要企業である東京エレクトロン(証券コード:8035)は、2025年秋に入り大きな注目を集めています。これは株価の急落、業績見通しの下方修正、さらにAI半導体分野への期待と不安が複雑に絡み合っているためです。本記事では、最新の東京エレクトロンの動向と共に、半導体セクター全体を包む「4つの不安」、そして今後の展望について、できるだけわかりやすく丁寧に解説します。
東京エレクトロンの最新株価動向とその背景
2025年夏から秋にかけた急落
東京エレクトロンの株価は、2025年7月末に発表された2026年3月期の業績見通しの下方修正をきっかけとして、大きく下落しました。特に7月31日の決算発表以降、わずか2週間で株価は20%以上も急落しました。これは、同社が見通しを下方修正したためで、「顧客の設備投資が後ずれする」との見解が投資家の不安心理を高めたと分析されています。日経平均株価が記録更新で盛り上がる中、東京エレクトロンはその潮流から取り残される形となっています。
具体的な株価水準
2025年9月11日現在、東京エレクトロンの終値は21,405円となっています。これは最近の高値から大きく下落した水準です。一方、証券アナリストの平均目標株価は27,726円とされており、今後株価が約30%ほど上昇すると予想する声もあります。
- 前日比:+0.6%(9月10日終値 21,150円→9月11日終値 21,405円)
- 出来高:3,863,400株(9月11日)
- 信用買い残:4,624,300株(9月5日)
決算内容と業績見通しの下方修正
2026年3月期第1四半期決算まとめ
- 売上高:5,495億円(前年同期比1.0%減)
- 営業利益:1,446億円(前年同期比12.7%減)
この要因の一つが、中国市場での設備投資の落ち着きや研究開発費の増加でした。AI関連の半導体需要は好調を維持したものの、全体としては減収減益となりました。
業績下方修正の背景
東京エレクトロンは、2026年3月期通期見通しも下方修正し、配当予想も業績に連動して引き下げました。この背景には、主要顧客の設備投資意欲の弱まりや先送り、さらに地政学的リスクといった複合的事情が影響しています。
半導体セクターをとりまく「4つの不安」
東京エレクトロンはもちろん、アドバンテストやレーザーテックなど、日本の半導体企業は業界共通の4つの大きな不安に直面しています。それぞれの不安と現状を解説します。
- 顧客の設備投資動向:半導体サイクルにおける市況変動の影響を受けやすく、足元では中国を中心に投資の一巡感が出ています。
- 地政学的リスク:米中対立や台湾を巡る緊張の高まりは、部品調達や販売先の見通しを不安定にします。
- 技術トレンドの変化:生成AI需要などで特定の分野は伸びている反面、シリコンサイクルの波の影響は不可避です。
- 事業コストの上昇:研究開発費や人件費の増加、エネルギー価格の変動なども無視できません。
他社の動きとセクターとしての注目度
アドバンテストやレーザーテックの快進撃
半導体分野ではアドバンテストの株価が連日最高値を更新するなど、明るい話題もあります。生成AI関連の需要拡大が市場全体の活況につながり、「半導体」は再び資金を集める注目テーマとしてランキングされています。しかし同じ業界でも企業ごとに明暗が分かれ、東京エレクトロンは中短期の一時的な停滞に直面しています。
アナリスト評価と今後の期待
それでもなお多くのアナリストは、東京エレクトロンについて「買い」または「強気買い」と評価しています。現在の株価からみて平均目標株価は約30%の上昇余地があるとの見方が優勢です。長期的にはAIやEV、IoTといった次世代技術の進展が、再び半導体需要を押し上げるというシナリオも根強く残っています。
東京エレクトロンの財務面と株主還元
株価急落や業績下方修正があったものの、東京エレクトロンの自己資本比率は74%まで上昇しており、財務基盤自体はむしろ強まっています。配当については業績連動となり当面は慎重な姿勢が予想されますが、安定した財政状況が仮にさらなる回復局面を迎えた際にもプラスに働くと考えられます。
半導体業界全体を巻き込む「AI半導体ブームの賞味期限」
2023年以降、AI半導体の需要が世界的なブームとなり、東京エレクトロンを含む多くの関連企業の株価や業績が好調となっていました。しかしブームの持続性を疑問視する声も増えており、成長の持続力や「賞味期限」が今後の焦点となってきています。AIや次世代通信、パワー半導体分野など新たな成長ドライバーにどこまで対応できるかが、東京エレクトロンおよび業界全体の未来を大きく左右します。
まとめと今後の展望
半導体セクターは世界経済をけん引する一方で、変化のスピードも非常に速い分野です。東京エレクトロンは足元では下方修正による株価下落など逆風にさらされていますが、堅固な財務基盤やアナリストからの高評価、AI分野の成長期待が下支えとなっています。目先の不透明感が払拭されれば、再び活躍の舞台に戻る可能性は十分にあるでしょう。株価動向や国内外の需給、市場環境などを注視しつつ、今後の動きから目が離せません。