維新の会 衆院議員3人が離党届提出 ― 吉村代表が「議員辞職」を要求、その背景と波紋
衆院維新3議員が電撃的な離党届を提出
2025年9月8日、日本維新の会(以下、維新)に所属する現職の阿部弘樹衆院議員(福岡4区・比例九州)、斉木武志衆院議員、守島正衆院議員の3名が、突如として党執行部に離党届と会派離脱届を提出しました。3人は同日午後2時から記者会見を開き、その場で離党の意志と新会派結成の意向を表明しました。「既成政党に不満を持つ人の受け皿になる新しい政治の動きを作りたい」という意欲が理由とされています。
離党届提出の理由 ―「保守政党に変わってしまった」
今回離党を決断した3人は、維新内で「与党との連立」に前向きな声が強まる状況を問題視しており、「本来の維新は、既成政党への批判票や変革を望む市民の受け皿であり続けるべき」という意見を持っていました。また、会見では「維新が保守政党へと変質してしまった」とまで言及し、「今、国民が真に求めているのは、既存政党の形式的な公約ではなく、国民生活を豊かにする実質的な政策だ」と訴えました。阿部議員は次回衆院選でも「無所属での出馬を検討している」と説明しました。
吉村代表による強い慰留と「議員辞職」要求
これに対し、維新代表の吉村洋文氏(大阪府知事)は即座に記者会見を実施。「離党届は簡単には認められない。撤回してほしい。どうしても撤回しなければ『議員辞職』が筋だ」との強い意向を示しました。吉村代表は「有権者は“維新”として議員を送り出してくれた。その民意を裏切ってはならない。離党という選択には大義が通らない」とコメントしています。また、「今回の3議員による離党は党に対して反党行為と評価せざるを得ない」と厳しい言葉で批判しました。
- 離党届を受理するかどうかは1週間ほど検討する方針とし、即時の決定を見送る考えも示されました。
- 藤田共同代表も「気持ちを改めてほしい」と記者会見で述べ、慰留の姿勢を崩していません。
離党の背景 ― 党の運営や路線に対する不満
この離党劇の背後には維新執行部による党運営のあり方や、政策路線の変質についての深い意見対立があると見られています。これまで維新は「統治機構改革」「しがらみを断つ政治」など、既存政治への批判精神を強みに拡大してきました。しかし国会で存在感を増し、第3党としての地位を固めつつある中、政策協議が与党・自民党寄りにシフトしているのではという危惧が、内部に生まれていました。
実際、斉木議員は「安易な与党連立を良しとする今の空気に強い違和感がある」と明言しています。「“身を切る改革”や“市民目線の政治”という原点を見失いかけている」との声も聞かれます。個々の政策判断や党の意思決定プロセスの透明性も論点となっている模様です。
今後の動向と波紋 ― 新会派結成や無所属での再出馬
離党した3議員は今後独自の新会派結成を目指す意向を表明していますが、「国会における維新の勢力図」にも影響を与える事案です。阿部議員は「次期衆院選には無所属での出馬も検討」という姿勢を明確にし、あくまで既成政党色を排して行動する意志を強調しています。
一方で「維新の躍進は個々の候補者ではなく、党の掲げた改革ビジョンと組織的な活動力に支えられてきた」とする見方も党内外に根強く、離党組がどこまで支持を広げられるかは不透明です。また、地方議員レベルでは、維新の「保守化」傾向に否定的な意見も一定数あり、今後同様の動きが広がる可能性もゼロではありません。
- 3議員の今後の国政活動や、離党に踏み切った理由の説明責任を求める声が強まっています。
- 「比例区で当選した議員が離党する場合、議席を返すべきか」という議論も再燃する見通しです。
維新執行部の対応と政界への影響
日本維新の会は地方での勢力拡大を進めてきましたが、首都圏や九州・西日本ブロックで大規模な選挙を経験するごとに、幅広い支持層を取り込むべき政策調整が進められてきました。この過程で、「組織決定への異論」や「結束力の希薄化」への懸念が一部で高まっていたことは否めません。
今後、吉村代表や執行部は「党のアイデンティティの再確認」と「規律の徹底」、さらに「民意との距離感をどう保つか」という難題への対応を迫られます。全国政党へと成長を進める中で、理念の共有や党内ガバナンスのあり方が、再び大きな注目を集めることとなりました。
まとめ ― 民意と政党、個人の信念が交差する維新の現在地
3人の衆院議員による同時離党表明は、維新にとって試練の局面です。個々の議員による「民意への忠実な対応」と、組織としての「規律と一体性」が真っ向からぶつかる形となっています。“変化を求める有権者の心に寄り添う政治集団”としての原点回帰が求められる中、「どこまで自己改革を実行できるか」が、党の未来を左右すると言えるでしょう。
今後1週間の執行部判断や3議員の新たな政治行動、さらには国民や他会派・政党の動向が注目されます。既成政党批判を旗印に掲げてきた維新のアイデンティティと、拡大基調の中で揺らぐ内部対立。その行方は、政界再編を含む日本政治の今後にも影響を及ぼす可能性があります。