マルハニチロがサンマ養殖に事業化レベルで成功――未来へつながる新たな挑戦

サンマ養殖の歴史的快挙――マルハニチロの技術と挑戦

2025年9月9日、マルハニチロは事業化レベルでのサンマ試験養殖に成功したと発表しました。これは単なる研究段階を超え、商業化に向けて実用的な養殖技術が確立されたことを意味します。サンマ養殖の成功は、日本の水産業界にとって極めて革新的な出来事です。

この成果は、マルハニチロ養殖技術開発センター(鹿児島県南さつま市)と福島県のふくしま海洋科学館との連携によって達成されました。サンマ卵の提供や水槽内繁殖における高い飼育技術の支援を受け、2023年10月から本格的な研究を開始。2024年6月には出荷目安である100gを超えるサイズへの成長、さらに8月には人工授精にも成功しています。

なぜサンマ養殖が重要なのか?

サンマは秋の味覚として古くから日本人に親しまれてきた魚ですが、近年その漁獲量は深刻な減少傾向にあります。

  • 2008年には35.5万トンだった天然サンマの水揚量が、2021年には2.0万トンと10分の1以下に低下。
  • 卸売価格も同じく2008年の65円/kgから2021年には621円/kgへと約10倍近く高騰。

こうした状況の中、安定した供給と価格維持のためのサンマ養殖に大きな期待が寄せられていたのです。

サンマ養殖の技術的挑戦

サンマは光や外部環境の変化に敏感な魚であり、水槽内での長期飼育は非常に難しいとされてきました。水槽の壁に衝突したり、ストレスを感じやすいことから、従来は養殖が困難というイメージが強かったのです。しかし、マルハニチロは次のような課題に取り組み、その克服に成功しました。

  • 水槽内の光環境や飼育設備の最適化
  • サンマに適した餌・飼育密度の検討
  • 他の養殖魚(クロマグロ、ブリ、マダイなど)で培った人工種苗生産技術の応用
  • ふくしま海洋科学館からの卵提供・飼育技術協力

これらの積み重ねにより、事業化可能なレベルの養殖技術が確立されたのです。

100g超のサンマ実現――事業化のインパクト

出荷目安である100g超のサンマの養殖成功は、商業化に向けた大きなステップです。人工授精にも成功し、安定的な種苗供給と持続可能な生産体制の基盤が整ってきています。

  • 2024年6月に100g超サンマの成長を確認
  • 2024年8月に人工授精の成功で繁殖技術も確立

これにより、今後サンマの完全養殖から流通、消費者への安定供給の道筋が具体化され始めています。

サステナブルな水産業への貢献

マルハニチロは、独自の「養殖的視点」と、ふくしま海洋科学館の「生物的視点」の共創によって、サステナブルなサンマ養殖技術の開発を今後も進めていく方針です。資源管理や環境配慮の観点からも、今回の養殖成功は未来の漁業や食品供給に大きく貢献する挑戦です。

  • 天然資源の枯渇リスクへの対応
  • 消費者に対する安定した秋の味覚の提供
  • サンマ生産の持続可能性向上

市場への影響と今後の展開

これからは、サンマ養殖技術の商業化・普及により、水産市場の変化が予想されます。これまで「獲れる年によって美味しさも値段も大きく動く」という天然依存体制から、「安定した品質・量を供給できる産業」としての進化が期待されます。

  • 卸売価格は安定化し、消費者にとっても手頃な価格のサンマが供給可能に
  • 技術進化により、新たな養殖魚種の開発も促進

サンマ養殖は、日本の食卓を支えると同時に、国際的な水産資源管理のモデルとなる可能性もあります。

今後の課題と展望

事業化に向けた今後の課題としては、量産体制の確立やコスト削減、市場流通システムの整備などがあげられます。また、消費者への養殖サンマの認知向上やブランド化も重要となるでしょう。

マルハニチロは、これからも技術開発や自然環境への配慮を重視しつつ、安心・安全で持続可能なサンマ養殖事業の拡大に取り組んでいくとしています。

まとめ――新しい水産業の夜明け

今回のマルハニチロによるサンマ養殖の事業化成功は、日本の水産業に革命的な光をもたらしました。今後も技術革新と産業発展により、私たちが秋に楽しむサンマが、安定した品質と量で食卓に並ぶ未来が期待されます。これからのサンマ養殖、そして水産業の新しい時代に、ますます注目が集まることでしょう。

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