経産省ら、FeliCaの事例受け「脆弱性情報の無断開示自粛」を強く要請

2025年9月9日、経済産業省と関連各機関は、未公開の脆弱性情報を第三者にむやみに公開しないよう要請する声明を発表しました。先日話題を呼んだFeliCaシステムの脆弱性情報の報道が社会に波紋を広げる中、情報セキュリティの専門家や関係自治体、報道機関へ改めて注意喚起がなされています。本記事では、経産省が発表した内容の解説と背景、そして今後の情報管理のあり方についてやさしく解説します。

背景にあるFeliCa脆弱性報道と社会的な影響

FeliCaシステムは、交通系ICカードや電子マネーなど多様な社会インフラに利用されている非接触型ICカード技術です。近年、そのシステムに関連する脆弱性が発見された際、一部報道機関やSNS上において事前の対策や調整を経ずに情報が流布されたことで、悪用リスクや利用者の不安が急速に拡大する出来事が起きました。
情報テクノロジーが日常生活へ深く組み込まれる現代、脆弱性情報の伝達方法には慎重さと倫理観が一層求められています。FeliCaの事例を受け、経産省は情報管理の徹底を呼びかけるに至りました。

公表された経産省らの声明の要点

  • 未公開脆弱性情報を不特定多数に開示しないことを発見者・関係者全体に要請
  • 脆弱性発見時は、速やかに情報処理推進機構(IPA)等の指定機関へ届け出ること
  • 届出後、関係者以外へ情報を口外しないこと(開示が正当と判断される場合も関係機関へ事前相談)
  • メディアや報道機関、業界関係者にもガイドライン尊重と慎重な情報取り扱いを強く要望
  • SNSを含むあらゆる公開場所での拙速な情報発信を控え、社会的影響や悪用リスクを最優先で考慮

政府やJPCERT コーディネーションセンターも協調的な対応を改めて呼びかけ、
「技術検証や必要な対策が完了するまで」の間、不特定多数への開示を控えることの重要性が強調されています。

なぜ脆弱性情報の「管理」と「公表」が問題になるのか

情報セキュリティの分野では、発見された脆弱性を関係各所と調整しながら順次修正・対策が進められます。
対策が完了する前に情報が広く伝わってしまうと、その「手口」が悪意ある第三者に利用され、実際の不正利用や被害の拡大につながる危険があります。
また企業やインフラ運営者も、正確な情報共有と対策実施までの猶予が必要です。これらの事情から、
脆弱性情報は「適切な手順」で報告・管理・現場対応の後に公開されることが社会的な常識とされています。

この点で経産省らは「管理・開示に真摯に取り組む場合のみ公益性が認められる」と明確に位置付け、軽率な開示やSNS等への拡散を戒めています。

情報処理推進機構(IPA)への届出の流れ

  • 脆弱性を発見した場合は、IPA(情報処理推進機構)へ速やかに届出を実施
  • IPAは専門機関として届出内容を検証し、必要に応じて開発者・サービス提供者と調整
  • 社会的影響や対策内容を十分に確認し、リスクが低減した段階で「公開」を判断

このフローにより、ユーザーや組織に被害が及ぶ前に必要な措置が確実に行われることが期待されます。

報道機関・インフルエンサー・SNSユーザーの役割と責任

今回の声明は一般の報道機関やITメディア、そしてSNS上の有識者・インフルエンサーにも「慎重な対応」を呼びかけています。具体的には、

  • 対策が完了するまで詳細な技術情報や手口の公開を自粛
  • 必要に応じてIPA等・関係機関に相談し、公益性や安全性を慎重に判断
  • 誤解や過度な不安拡大を防ぐための冷静な情報提供と、社会全体の信頼維持

情報拡散のスピードが極めて早い現在、情報発信者一人ひとりが「セキュリティの守り手」としての意識と責任感を持つ必要があります。

ユーザー・市民として知っておくべきこと

  • セキュリティ関連のニュースに触れた際は、不確かな情報や憶測による拡散を控える
  • 信頼できる公式情報(IPAや経産省など発表)や、最新の対策状況を「待つ」ことも大切
  • パスワードやソフトウェアのアップデートなど、自分でできる範囲のセキュリティ対策を地道に実践

特にICカードやキャッシュレス決済、IoTデバイス利用の拡大に伴い、身近なサービスで脆弱性の話題が上がることは今後も想定されます。冷静に、状況を見極める力が求められています。

経産省・IPAが最後に強調する「協調と信頼」

経産省と情報処理推進機構(IPA)、JPCERTコーディネーションセンターらは「関係者全員による協調的な対応」こそが社会全体のリスク低減と信頼構築につながると繰り返し述べています。
現場で動くセキュリティ技術者やサービス運営者のみならず、「伝える側」であるメディアやSNSユーザー、受け取るユーザーや消費者も、みんなが「一緒に守る」という意識を持つことがより重要になっています。

まとめ

  • 2025年9月、経産省らが未公開脆弱性情報の無断開示の自粛を強く要請
  • FeliCa脆弱性事例を受け、悪用防止と社会不安拡大抑止のため慎重な運用を求める
  • 脆弱性発見時はIPAなど専門機関への届出が第一歩
  • 報道機関・インフルエンサーも取り扱い方法に最新ガイドラインの厳守が必要
  • ユーザーは冷静な対応と、公式発表や対策に注意を払うこと

今後も情報セキュリティをめぐる社会的な相互信頼を支え、暮らしの安全を守るため、関係各所での「協調」と「誠実な対応」が求められていきます。

参考元