ガソリン税をめぐる与野党協議の行方――財源巡る隔たりと国民生活への影響

2025年9月現在、日本の政治の中でガソリン税に関する与野党間の協議が大きな注目を集めています。特に、ガソリン暫定税率の廃止と関連する減税措置に対する合意形成が難航しており、国会での議論は5回目を迎えてなお、平行線のままとなっています。エネルギー価格高騰が続くなか、国民生活や企業活動への影響も懸念されています。

ガソリン税・暫定税率とは何か?

ガソリン税は、自動車用ガソリンなどを対象に課される税金で、大きく「本則税率」と「暫定税率」から成り立っています。暫定税率は1974年、石油危機を受けて道路整備や財政確保のために設けられ、本則に上乗せされていましたが、「暫定」とされながら長年維持されてきました。この暫定税率部分のみでも、リッター当たり25.1円(ガソリン税)、17.1円(地方道路税)と、合計でリッターあたり約41円の負担増となっています。

エネルギー価格高騰と減税の議論

2022年以降のウクライナ危機以降、世界的な原油価格高騰が続き、日本国内のガソリン価格も連日最高値を更新しました。多くの国民にとって家計の大きな負担となる中、与野党ではガソリン税の減税措置が議論されてきました。なかでも「暫定税率部分の廃止」が現実的な政策選択と位置付けられており、2025年現在に至るまで断続的な与野党協議が続いています。

  • 野党は「ガソリン暫定税率の早期廃止」を強く求める立場
  • 与党側は「減収額への懸念」や「代替財源の具体的な裏付け」を重視する姿勢。
  • 協議は平行線をたどり、国会内でも合意に至らない状況が続いている。

2025年の協議経過:5回目でも溝埋まらず

2025年8月29日に行われた第4回実務者協議に続き、直近の第5回協議でも意見の隔たりは依然大きいままです。
与党である自由民主党・公明党と、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、日本共産党など野党の代表が参加していますが、両陣営の間で主に「財源の確保」という点が最大の争点となっています。
野党側は「暫定税率廃止のための具体的な財源案がなければ議論が進められない」とし、与党に合意可能な財源案の提示を強く要求しています。

  • 与党は「金融所得課税や研究開発減税の見直し」などが財源となりうるという見解を示すのみで、具体的な数字を提示していない
  • 野党は「納税者の立場に立った政策議論が必要」と主張し、現行の暫定税率が「課税根拠を失っている」と鋭く批判。
  • 与野党間の信頼関係や議論の進め方にも課題が残る。

ガソリン暫定税率廃止に向けた野党の動き

野党7~8党は「ガソリン暫定税率廃止法案」を共同で国会に再提出し、2025年11月1日からの減税実施を目指しています。
同時に、軽油引取税の暫定税率についても翌年4月からの廃止を想定しており、全体で約1.5兆円の減収が見込まれると説明しています。

これは、エネルギー価格高騰の緩和や消費喚起、地方経済への波及効果などを期待する声もある一方、「1.5兆円の減収をどう補うか」については与野党ともに決め手を欠いているのが現状です。

代替財源をめぐる議論と各党の主張

野党は以下のような代替財源案を検討する必要性を指摘しています:

  • 研究開発減税の見直し ─ 大企業の優遇措置を縮小することで財源捻出
  • 金融所得課税の強化 ─ 富裕層を中心に負担増を求める

一方で、与党側はこれらの案について「対象になり得る」としつつも、現時点では具体的な金額や施策内容を示せていません。
日本共産党の山添拓政策委員長は「例えば金融所得課税をどうすればどれだけの財源になり得るかなど、具体的に示すべきだ」と繰り返し要求しています。

ガソリン税減税が国民生活と自治体に及ぼす影響

ガソリンの小売価格が下がれば、家計の負担軽減や物流コストの低減などが期待されます。その一方、道路維持や防災対策で用いられる地方交付税などの財源が減少するため、自治体財政への影響も懸念されています。自治体によっては予算編成やインフラ整備の見直しを迫られる可能性が高く、特に地方では反発も起きています。

今後の見通しと課題

現段階では、与野党間の意見の溝が依然として大きく、協議再開の目途も立っていません。秋の臨時国会を見据えた次回協議では、「財源案の具体的提示」が最重要課題となっていく見通しです。

  • エネルギー価格の先行き、国内外経済状況、地方自治体からの意見なども今後の重要な判断材料となる。
  • 最終的な折衷案や「段階的廃止」などの妥協策が模索される可能性もある。
  • 国民生活への即効性と将来的な持続可能性をどう両立するかが問われています。

まとめ:ガソリン税減税をめぐる協議は岐路に

連日の物価高で苦しむ国民にとって、ガソリン税をめぐる政策協議は強い関心事です。しかし、歳入の大幅減を伴う税制改正をめぐる合意形成は容易ではなく、エネルギー・経済・社会保障といった広範な政策分野にも影響を及ぼします。今後、政府および国会議員が国民生活や社会全体への影響をどのように考慮し、議論を深めていくのかが注目されます。

ガソリン税に関する与野党協議の今後を見守る

現状、ガソリン税を巡る与野党協議は財源問題を最大の障壁として膠着状態にあります。今後も国民の声や地方の意見を踏まえながら、合意形成に向けた真摯な議論が続けられることが期待されます。国民の生活を守るために、政治の現場でどのような解決策が見いだされるのか、引き続き注視していく必要があります。

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