筑肥線の現状と課題、期待される未来 ~佐賀県と沿線自治体の取り組みに焦点を当てて~

はじめに

筑肥線は、佐賀県唐津市から伊万里市までを結ぶJRの路線で、長年地域の生活・移動・通学を支えてきました。しかし近年の利用者減少や少子高齢化、公共交通全体の課題から、筑肥線の存続や活性化に向けた取り組みが強く求められています。
本記事では、2025年9月現在、公共交通活性化協議会による施策や自治体・JR九州の協働、通学定期券補助などの最新情報を中心に、筑肥線の現状と課題、今後への展望を丁寧に解説します。

筑肥線の概要と地域での重要性

筑肥線は、佐賀県唐津市から伊万里市区間を中心に運行される非電化単線で、沿線住民の通学・通勤、観光利用、生活の足として重要な役割を担っています。特に福岡市方面に近い前原駅・筑前前原駅周辺はベッドタウンとして発展し利用者も増加した時期がありましたが、唐津~伊万里区間は利用者減少が続いており、ピーク時に比べ輸送密度が大きく低下しています。

利用者減少と存続への危機

  • 筑肥線の山本~伊万里区間では、2019年の輸送密度が1日あたり214人という水準まで落ち込んでいます。これは九州管内でも利用者減が顕著な区間であり、将来的な合理化や廃止の検討対象となりかねない状況です。こうした危機感から、唐津市・伊万里市・佐賀県はJR九州とともに「筑肥線活用に関する検討会」を複数回開催するなど、存続に向けた地域連携が進められています。
  • 地域公共交通活性化協議会も設立・活動が活発化しており、沿線住民の足を守るための知恵や制度設計、施策の検討が続いています。

公共交通活性化協議会の役割と最近の動き

  • 公共交通の維持・利便性向上を目的に、佐賀県や各自治体では地域公共交通活性化協議会(正式には「佐賀県地域公共交通活性化協議会」「唐津市地域公共交通活性化協議会」など)が設置されています。
  • これらの協議会は、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」(活性化再生法)に基づき、地域の実情に応じた持続可能な交通網の形成を目指しています。協議会では路線運行ダイヤ・運賃・サービス向上策に加え、通学定期券の補助、運転士の確保策など現場に即したきめ細かな施策も議論されています。
  • 輸送サービスの維持・改善事業は国土交通省の認定を受け、予算措置やワンストップ特例など特別な支援も活用されています。こうした体制の強化により、筑肥線の具体的な維持・利便性向上策が進行しています。

通学定期券の補助と利用促進キャンペーン

近年の大きなトピックとして、筑肥線・唐津線を利用する学生向けに通学定期券の半額キャンペーンがスタートしました。これは、将来を担う若者の交通費負担軽減と鉄道利用促進を目的として実施されています。鉄道利用の経済的なハードルを下げることで、沿線の学生や保護者から反響も大きく、地域活性化にもつながると期待されています。

  • 通学定期券補助は、佐賀市を中心に唐津線・筑肥線の全通学者を対象に展開されており、申込み方法や対象期間なども自治体やJR九州の窓口で丁寧に案内されています。
  • キャンペーンの開始を受けて、利用者数や定期券購入ペースに変化が見られるなど、実効性の評価も協議会や鉄道事業者の間で行われています。

運転士の確保策とサービスの維持

鉄道業界全体の課題として、運転士不足と高齢化が挙げられます。筑肥線沿線でも人材の確保と働きやすい環境づくりは大きなテーマです。佐賀県の公共交通活性化協議会ではこの問題に重点的に取り組み、地元出身者の採用や研修強化、職員の処遇改善など多岐にわたる対策案も出ています。

  • 運転士不足への対策は路線の安定運行・ダイヤ維持、そして将来的なサービス改善にも直結します。協議会では鉄道事業者だけでなく自治体・国も一体となり、地域ならではの人材活用案を議論・実行しています。
  • コロナ禍以降の働き方の変化や若い世代へのアプローチ、職場環境・福祉制度の充実なども盛り込まれ、鉄道サービスの継続的な提供を目指しています。

今後に向けた筑肥線関連施策・展望

筑肥線の持続可能な活用に向けて、関係自治体・鉄道会社・国土交通省などが連携し、以下の施策が現在も検討・実施されています。

  • 線区利用実態の把握・情報共有—定期的なデータ収集と分析を実施し、沿線利用者の生活実態やニーズの変化を継続的に追いかけています。
  • 利用促進キャンペーンの継続強化—定期券補助やイベント、観光資源の活用などを組み合わせ、地域ぐるみで利用増をめざしています。
  • 路線サービスの改善—ダイヤ改正・車両更新・運転士確保策、さらに地域の声を反映した柔軟な施策が実現されています。今後も市町村とJR九州が意見交換・合意形成を適時重ねていく方針です。

筑肥線に寄せられる地域の期待と活性化への想い

筑肥線は、これまで長い歴史のなかで多くの人々の暮らしや思い出を支えてきました。利用者減少・地域人口の変化・鉄道を取り巻く環境課題は容易ではありませんが、通学定期券補助や協議会による維持策を通じて、まち全体で公共交通の未来を育てていこうとする希望と熱意が感じられます。
今後も筑肥線を守り育て、より住みやすく移動しやすい地域社会を目指して、行政・鉄道事業者・住民が一丸となって取り組みが進むことを地域を挙げて期待したいところです。

まとめ

  • 筑肥線(唐津~伊万里区間)では利用者減少といった課題に対応するため、地域公共交通活性化協議会や「筑肥線活用に関する検討会」など多彩な取り組みが進められています。
  • 佐賀市・唐津市・伊万里市・佐賀県・JR九州・国土交通省が連携し、通学定期券補助や運転士確保策など具体的な施策を展開しています。
  • キャンペーンや補助政策は地域の交通利便性向上や若者の移動の支援につながり、今後も持続可能な公共交通像の実現に向けて、地域ぐるみの協同が続く見通しです。

参考元