三菱UFJ銀行がLayerXに出資、AIイノベーションで業務効率化と未来戦略を加速
はじめに
2025年9月、株式会社LayerXへの三菱UFJ銀行による出資と、その戦略的パートナーシップが大きな話題となっています。このニュースは、AI技術の業務活用や働き方改革、そして日本の大手金融機関がスタートアップと連携し、新たなソリューションや価値創造に本格的に取り組み始めた動きとして、国内外の関係者のみならず多くのビジネスパーソンの注目を集めています。
LayerXとはどんな企業か?
LayerXは2018年設立のテクノロジースタートアップで、ブロックチェーンや人工知能(AI)分野を中心に事業を展開。これまでにも「バクラク」シリーズをはじめとしたクラウド請求書処理、経費精算などバックオフィス改革のためのサービスを提供してきました。また近年はLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)や自社AIエージェント基盤「Ai Workforce」を軸に、企業業務の自動化・効率化支援を拡大しています。
三菱UFJ銀行とLayerXの協業の歩み
- 2019年からMUFGグループとLayerXは、ブロックチェーン技術の分野で協業を開始。
- 2023年にはMUFGが運営するVCファンドがLayerXへ出資、関係を一層強化。
- 2024年には業務提携契約を締結し、「バクラク for MUFG」サービスを三菱UFJ銀行法人顧客向けに提供開始。
- 2025年9月、出資および戦略的パートナーシップ覚書を締結。これまでの協業に加え、AI・LLM事業による生成AI活用や組織変革、さらには新規事業創出に向けた連携を本格化。
このような協力体制の深化は、金融業界全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進にも大きな影響をもたらしています。
三菱UFJ銀行によるLayerXへの出資の背景と目的
今回三菱UFJ銀行はLayerXに出資し、両社の強みを活かした協業によって業務効率化を目指しています。とくに注目すべきは、AIによる業務時間削減という成果です。例えば、パワーポイント資料作成などのバックオフィス業務の自動化により、年間約20万時間もの行員の業務負荷が軽減されることが試算されています。
これは銀行業務に限らず、さまざまなホワイトカラー業務の生産性向上に寄与するだけでなく、人材をより付加価値の高い業務へとシフトさせる可能性を持っています。三菱UFJ銀行はLayerXの「Ai Workforce」プラットフォームを活用して、社内データの一元化やナレッジシェア、営業活動の質的向上などに取り組んでいます。
LayerXのAIエージェント事業の加速と資金調達
2025年9月、LayerXはシリーズBラウンドで総額150億円の資金調達を発表しています。このラウンドでは、グローバル投資家のTCVのほか、三菱UFJ銀行、MUFGイノベーション・パートナーズ、Coreline Ventures、ジャフコグループ、Keyrock Capital Management、JPインベストメントなどが参加しました。
- LayerXは新たな資金をエンジニア中心の採用強化に活用し、AIエージェント事業のさらなる加速を図る方針。
- AI技術を基盤に世界でも競争力のある報酬体系構築を目指し、優秀な人材の獲得や育成にも力を注ぐ。
- 今回の調達額は日本のスタートアップ界でも異例の規模であり、成長期待が非常に高いことを示しています。
これにより、生成AIやAIエージェントによる業務改革・自動化のみならず、人事・報酬制度や組織文化の刷新にも踏み込む取り組みが始まろうとしています。
三菱UFJ銀行が進める「最速100億」戦略とは
今回三菱UFJ銀行のLayerX初出資は、「最速100億」とも呼ばれる大胆なDX戦略の一環です。従来の大企業出資案件をはるかに上回るスピード・規模でLayerXへの支援を決断した背景には、生成AIやデジタル技術による金融サービスの抜本的な効率化と、新規ビジネスの創出への強い期待があります。
三菱UFJ銀行は業界最大手として、競争優位性の確立や顧客体験向上を図る上で、AI技術を中心としたLayerXならではのイノベーション力に賭けているのです。大企業とスタートアップの協業事例としても、今後の金融業界をリードする象徴的なプロジェクトとなるでしょう。
LayerXによる業務変革と社会的インパクト
LayerXのAIエージェント基盤「Ai Workforce」を活用した三菱UFJ銀行のデータ管理やナレッジシェアは、既存の働き方や企業組織のあり方に大きな変革をもたらしています。単なる業務自動化だけでなく、人が創造性を発揮できる環境の整備や、顧客満足度向上につながる高品質な提案活動を実現しています。
- 人が担うルーチン業務の削減
- 属人化しがちな知識・ナレッジの共有促進
- 新規事業創出の土壌づくり
- 競争力強化に向けた組織変革
こうした取り組みは金融業界のみならず、他業界にも波及し、日本社会全体の生産性や競争力向上へとつながる可能性を秘めています。
この話題から見える未来――大企業とスタートアップが共創する時代
三菱UFJ銀行とLayerXの事例は、大企業とスタートアップが協力してイノベーションを生み出す時代の象徴です。従来の硬直した組織運営やサービス提供から一歩踏み出し、スピード感のある意思決定や先端技術の柔軟な活用が求められています。
LayerXは、AIによるバックオフィス・ナレッジワークの効率化だけでなく、組織風土の変革や人材戦略にも挑戦し、企業の価値創造を支えるプラットフォームとしてその存在感を増しています。今後も両社の動向は、企業の新しいモデルケースとして多方面から注目されることでしょう。
まとめ
今回の出資と協業によって、AIを中心としたビジネス変革が加速し、日本の金融・IT業界に大きなインパクトをもたらしています。三菱UFJ銀行はLayerXとの連携を通じて、業務効率化だけでなく、新たな付加価値の創造や未来につながるビジネスモデルの構築に取り組み始めています。LayerXの今後の活動と、双方のシナジーへの期待は、ますます高まることでしょう。