良品計画、「無印良品」商標争いで中国に敗訴――25年に及ぶ攻防の節目と今後への影響
長きにわたる商標争い、ついに決着
2025年8月、良品計画(MUJI)が中国における「無印良品」の商標権を巡る争いでついに敗訴しました。これは、2001年に始まった「無印良品」ブランドの商標をめぐる複雑な問題に対し、中国最高人民法院が最終判断を下したもので、24年以上続いた法廷闘争に幕が下ろされることになったのです。
この結果、中国国内の「無印良品」の商標権は中国企業である北京棉田紡織品有限公司に認められ、無印良品の本家である良品計画が中国本土で「無印良品」という名称を自在に使用できなくなった形となります。
混迷の始まり:中国国内に2つの「無印良品」
この争いの原点は2001年までさかのぼります。当時、中国企業が日本側に先駆けて「無印良品」の商標を申請し、これが後に北京棉田紡織品有限公司に譲渡されました。良品計画は2004年から商標取消や無効を求めて中国当局や裁判所に訴え続けていたものの、2025年夏、中国最高人民法院は良品計画側の主張を退ける判断を下しました。
現在の中国市場には「2つの無印良品」が並立している状況となっています。ひとつは日本の良品計画による「MUJI」ブランド(英語表記が中心)、もうひとつは北京棉田による「無印良品」(中国語表記)です。消費者は不自然な“共存”に困惑し、ブランドの信頼性や識別性に影響が生じていました。
裁判所の判断背景と社会的影響
中国最高裁は、商標の登録日時が早かった北京棉田側の権利を認めました。「早い者勝ち」の商標制度が今回の結果を左右し、良品計画側には訴訟で決定的な証拠提出ができなかったことが、敗訴理由の一つとされています。
また、混乱防止の観点から、今後中国国内で「無印良品」という表示の使用には制限が生まれ、他社との市場境界がより明確化されることとなりました。これにより、消費者の混乱は一定程度解消されるものとみられますが、日本本社の良品計画にとってはブランド力や市場戦略の再構築が求められる重大な局面です。
商標「早い者勝ち」を防ぐための4つの備え
- 事前の商標調査:新たな国や地域に進出する際には、現地の商標権利状況を必ず調査し、該当地域で未登録の場合は即時出願する。
- 現地法令の把握:海外の商標制度(名称の言い換えパターンや異なる文字表記も含む)を理解し、日本での常識が通用しない場合のリスクも把握する。
- 継続的なモニタリング:商標の無断使用や類似申請の動向を監視し、必要に応じて異議申立や法的措置に迅速に移れる体制を敷く。
- 現地パートナーとの協業慎重化:信頼できるパートナー企業の選択や契約内容の厳格化を行い、情報漏洩や先取り出願を未然に防ぐ。
このような備えがあれば、「先に取った者勝ち」による商標トラブルを未然に防ぐことができ、今後同様の問題が生じた場合にも、損失を最小限に抑えることが可能となるでしょう。
市場と投資家への影響:株価の動きと今後の見通し
2025年8月26日の株式市場では、良品計画の株価は前日比+0.31%と小幅ながら上昇して始まりましたが、この商標訴訟敗訴確定のニュースを受けて、直近4営業日で大幅下落を記録し、投資家心理への影響もうかがえます。
今後、良品計画は中国市場におけるブランドの浸透方法や店舗運営、商品ラインアップの見直しなど抜本的な対応を強いられるでしょう。また英語ブランド「MUJI」を活用した戦略転換など、多様な方向性が模索されています。さらに、日本企業全般にとっても、海外商標管理の重要性が改めて認識され、一つの教訓事例として語り継がれる可能性があります。
現場の混乱と消費者の反応
判決確定以降、良品計画が運営する一部の直営店では、中国現地法人名「無印良品(上海)」や「无印良品」を用いた表示・広告が制限される事態となりました。この影響で、現場スタッフや消費者の間でも「どちらが本物か」「どの店舗が日本のMUJIなのか」といった混乱が生じています。
最近では、「MUJI」とローマ字表記のみに切り替えた店舗も登場し、良品計画のロイヤリティの高いファン層がSNSで現状をシェアするなど、ブランドのあり方そのものが問われ直されています。
中国市場での展開への今後の課題
今後、良品計画が中国で持続的な成長を図るためには、これまで以上に現地消費者やビジネスパートナーとの信頼関係構築、ブランド訴求の柔軟性、多言語・多文化対応のノウハウ蓄積が求められることになります。
一方で、知的財産権の戦略的管理、経営危機管理能力の強化は他の日本企業にも共通する国際ビジネスの大きな課題となるでしょう。中国ビジネスは法規制や慣習の変化が激しく、他社動向や新たな訴訟リスクにも目配りを欠かせません。今回の無印良品の事例は、グローバル展開を志すすべての企業に教訓と新たな課題を突き付けています。
まとめ:MUJIブランドの今後に注目
今回の判決により、日本の良品計画が中国市場で「無印良品」の名を自由に使えなくなるという厳しい現実に直面しました。今後、良品計画がどのようにブランドの信頼を守り、中国市場でのポジションを回復していくかに注目が集まります。また、他の日系企業にとっても商標リスク管理の在り方を再考する転機となりそうです。