後期高齢者医療制度、現役世代負担が過去最高7.1兆円へ──「2割負担」「月1万8000円上限」改定の背景と課題

はじめに

日本の少子高齢化が進む中、後期高齢者医療制度の財政状況や現役世代への負担増加が大きな社会課題となっています。2023年度の厚生労働省公表データによれば、現役世代が担う交付金は7兆1059億円と、3年連続で過去最高を更新しました。また、75歳以上の人口増加・医療費の高騰などを受け、患者の窓口負担や保険料にも改定が加えられています。この記事では、現状と制度改定の背景、現役世代・高齢者双方の課題について、最新のニュースを解説します。

後期高齢者医療制度とは

後期高齢者医療制度は、75歳以上の方と一定の障害がある65歳以上の方を対象にした公的医療保険制度です。全国の広域連合ごとに運営され、医療費の一部は保険料や公費で賄われます。高齢者人口の増加に伴い、医療費・保険料・財政負担が拡大傾向です。

2023年度の財政状況と現役世代負担

  • 現役世代負担:7兆1059億円

    交付金(現役世代が負担する分)が前年より6.1%増加。75歳以上の医療費全体の膨張が背景であり、3年連続で過去最高を更新しています。

  • 全国の被保険者数:1989万人(前年比64万人増)

    高齢化の急速な進行により、制度利用者が増加。収支状況は年々厳しくなっています。

  • 財政収支:2023年度は単年度収支で198億円の赤字、繰越金等を含めて3490億円の黒字ですが、黒字幅は前年より縮小しています。

2025年の保険料改定と負担増加

  • 年間保険料上限額:80万円へ引き上げ

    2024年度の73万円から一気に増額。主に高所得者層で保険料負担が増加となります。所得割率も11.24%まで引き上げられ、公平性を担保しつつ制度維持を目指しています。

  • 負担増の理由:

    高齢者人口の増加による医療費の高騰、団塊世代の全員75歳超えなどが影響。保険料や現役世代への財政支援増加は避けられない状況です。

現役世代の“負担の限界”と制度維持の課題

現役世代の負担増は、単なる交付金の増額だけでなく、自ら支払う健康保険料の値上げや税負担にも繋がります。厚生労働省は、全体の医療費や被保険者数の伸びを見越し、保険料改定・負担均衡を図っていますが、制度存続のためには更なる財政基盤強化が必要です。

  • 市町村国保の赤字:1288億円

    2023年度、自治体運営の国民健康保険も赤字が拡大。積立金も前年より621億円減少し、医療制度全体の余力が縮小しつつあります。

  • 積立金の持続可能性:

    全国合計1兆3375億円ありながら、災害時など不測の制度減収では1.9か月分しか賄えません。制度の安定に向けた政策的対応が求められています。

2025年10月からの窓口負担改定─「2割負担」「1万8000円上限」

現在、後期高齢者の医療費窓口負担は原則1割ですが、一定の所得(年金収入等)がある方は2割負担に区分されます。2025年10月からは外来医療の月額上限が1万8000円に設定され、患者の経済的な過度な負担抑制策となっています。

  • 2割負担となる所得基準:

    単身世帯の場合、年金収入が211万円以上(一定の条件下では208万円以上など例外あり)で、現役並み所得者と判断されると外来・入院とも2割の自己負担となります。

  • 上限額の意義:

    高額医療費がかかった場合でも、外来分の自己負担が月1万8000円までに抑えられるよう制度設計が変更。慢性疾患・通院頻度の高い高齢者にとって負担軽減効果が期待されています。

制度見直しと今後の展望

後期高齢者医療制度は、社会保障の持続性・公平性を両立させる必要があります。財政赤字や現役世代の負担増は早急な制度見直しの契機となっています。今後は、

  • 給付の再設計(医療費適正化、予防医療の拡充)
  • 所得に応じた保険料増減、現役世代の保険料軽減策
  • 政府・自治体による追加財源確保、積立金の運用強化
  • 持続可能な医療体制づくり(医療機関や地域社会との連携)

など、さまざまな政策が議論されています。高齢化による財政負担はますます拡大するため、全国民に影響を及ぼす課題として注意していく必要があります。

まとめ

2025年にかけた制度改定で、後期高齢者医療制度は大きな転機を迎えています。現役世代の負担方法も見直しが進み、被保険者や家族、働く世代がどのように制度に向き合うべきか、一人ひとりが理解と関心を持つことが求められています。特に「2割負担」「月額上限」といった新ルールは、具体的な生活設計にも直結します。今後も国や自治体の動向、そして私たち自身の健康や暮らしの計画に目を向けていきましょう。

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