緊急避妊薬、薬局で市販へ ― 年齢制限なし・親の同意不要 厚生労働省が新方針を決定

はじめに ― 望まぬ妊娠を防ぐ社会的な一歩

2025年8月27日、厚生労働省は緊急避妊薬(アフターピル)の薬局での市販について、年齢制限や親の同意が不要となる方針を決定しました。
この新しい仕組みは、今まで医療機関で処方箋をもらう必要があった緊急避妊薬が、
もっと手軽に、かつ適切なサポートのもとで利用できるようにするための重要な転換となります。
社会における性と生殖に関する健康課題や、若年層を含む幅広い世代のアクセス向上が強く求められてきた中、今回の決定は多くの注目を集めています。

新方針のポイント

  • 処方箋なしで、薬局で販売
  • 購入時の年齢制限なし
  • 親や保護者の同意不要
  • 販売は薬剤師による対面対応が必須
  • 薬剤師の目の前で服用「面前服用」の義務化
  • 市販されるのは「特定要指導医薬品」区分
  • オンライン販売や宅配は認められない

なぜ今、緊急避妊薬の市販が進むのか

今まで、緊急避妊薬は医師の診察を受け、処方箋をもらう必要がありました。そのため
「すぐに手に入りづらい」「病院受診のハードルが高い」「時間が限られている」といった課題が多くの人に指摘されてきました。
性交後の短時間内(通常72時間以内)の服用が必要な強い時間制約と、
望まぬ妊娠のリスク低減という社会的要求から、「誰でも」「すぐに」「安全に」手にとれる体制が求められてきたのです。

厚生労働省の新たな制度設計 ― 「特定要指導医薬品」とは?

薬局で市販される緊急避妊薬は、「特定要指導医薬品」という新しい区分に位置付けられます。
この医薬品区分は「安全性は認められているが、使用方法や注意事項について十分な理解が必要なもの」に与えられます。
薬剤師から医薬品の情報提供や適正使用説明が受けられ、相談しながら購入できる点が大きな特徴です。
そのため、薬剤師との直接対話(対面販売)その場での服用(面前服用)が義務づけられます。
オンラインでの販売や自動販売機での入手は認められません。

年齢制限・保護者同意は不要に ― 誰でもアクセスできる仕組みへ

今回の方針では、年齢による制限や保護者同伴・同意を必要としないと明確に定められました。
これにより、若年層や高校生も必要なときに自分の判断で医薬品を入手でき、より多くの方が公平に緊急避妊薬へアクセスできるようになります。
性に関する支援を受けづらい若年層や、家族に相談できない事情がある人にもきちんと届くことを意図しています。

なぜ「対面販売」「面前服用」が必須なのか

望まぬ妊娠のリスクを防ぐために、適切に薬を使うことが大前提です。
薬剤師が直接説明し、服用方法や副作用、注意点などを確認することで、誤った使い方や健康被害を未然に防ぐことができると厚労省は考えています。
また、不正な転売や「まとめ買い」による流出を防ぐ意味もあり、「面前服用」が必須となりました。
この運用は他の国ではあまり例がない日本独自の仕組みですが、市販化に伴うリスクへの丁寧な配慮となっています。

これまでの課題と今後の社会変化

これまで、日本では
・医療機関を受診しなければならない
・医師の診察待ちや薬が手元に届くまで時間がかかる
・未成年や家族の同意がないと入手できない場合が多い
といった障壁が指摘されてきました。
今回の市販化によって、これらの障壁が大きく取り除かれ、「ひとりでも、早く、必要なときに」薬を入手できる大きな変化となります。

一方で、「正しい知識の普及」や「性教育の充実」「相談しやすい社会づくり」といった取り組みもさらに強く求められます。
薬だけで全てが解決するわけではなく、安心して育てられる社会や、性に関する多様な悩みを抱える人へのサポートが今後の大きな課題として残ります。

現場薬剤師・当事者の声

  • 「命を守る選択肢が増えるのは素晴らしい。知識普及と相談体制を整えたい」
  • 「対面販売や面前服用は現場の負担増もあるが、まずは安全性と緊急性のバランスをとりたい」
  • 「若い世代も、自分の健康を自分で守れる社会につながる大きな一歩」

実際に薬局や薬剤師の現場では、「どうすれば分かりやすく伝えられるか」「困っている人を見落とさないか」といった新しい課題も生まれています。

国際比較と世界の動向

欧米諸国を中心に、緊急避妊薬はすでに薬局の店頭で手軽に購入できる国が増えています。
一方日本では、「薬剤師の対面販売」「面前服用」といった運用が独自に盛り込まれることで、より慎重なバランスが取られていることが特徴です。

正しい知識と相談先の案内

緊急避妊薬は、服用するタイミングや正しい方法を守れば高い効果が期待できますが、
100%妊娠を防ぐ薬ではありません。また、副作用やアレルギーが出る場合もあるため、
必ず薬剤師の説明や指示に従いましょう。
困ったときや悩みがあるときは、学校・地域の相談窓口や、専門家との無料相談も利用できます。

まとめ ― いま社会に求められること

今回の決定は、「必要なときに、必要な人が、命や未来の選択肢を守れる社会」へ向けた大きな一歩です。
一方、知識や制度、心のケアなど、社会全体で「支える」仕組みがますます重要になります。
今回の市販化をきっかけとして、正しい情報発信や、安心して相談できる環境づくりが広がることが期待されます。

何よりもあなたが困ったとき、安心して自分の体や人生の選択をできる社会となるために、みんなで一緒に考えていきましょう。

参考元