JA会長が小泉農相に“怒りの苦言”、新米価格高騰の背景に迫る
各地で深刻化する米価格の上昇――5kgで7,800円の新米も
2025年夏、日本全国で新米の価格高騰が大きな話題となっています。中でも「週刊文春」が報じた、JA秋田会長による小泉農相への苦言は大きな波紋を広げました。秋田県内では新米5kgが7,800円という、ここ数十年見られなかった高値を記録し、「早く辞めてほしい」「まず生産者と話をしてほしい」といった声が現場から上がってきています。この一連の背景や現場の声、そして今後の見通しについて詳しく解説します。
新米価格がここまで上がった三つの主要要因
- 気象異常(高温・渇水):2025年は記録的な猛暑と水不足に襲われ、多くの地方で稲が思うように実らず、収穫量が減少しました。生産量の減少が米価格に直結しています。
- 動揺する流通・JAの集荷競争:不作による生産量減少に加え、JA(農業協同組合)などの集荷競争が激化。生産者が貴重な新米を手放さないよう、例年以上に高い買取価格(概算金)が提示され、結果として市場価格が大幅に引き上げられました。
- 備蓄米放出の遅れ:本来、不作時には政府が備蓄米を市場に放出し需給を調整しますが、2025年はこの対応が後手に回ったため、需給バランスが崩壊。結果として消費者向け価格にまで影響が及びました。
生産現場と消費者のリアルな声
- 生産者の切実な訴え:JA秋田会長は「まず現場の生産者と直接話をして実態を知ってほしい」と、小泉農相に対し強い憤りを示しています。価格高騰による消費者離れを危惧しつつも、厳しい作柄を前にこれ以上の値下げ交渉は困難という本音を語っています。
- 消費者の戸惑い:新米の5kgパックが7,800円を超える事態に、スーパーや小売店の消費者からも「お米が高くて手が出せない」「価格が安定するまで買い控えたい」といった声が寄せられています。
実際の価格事例――三重、但馬でも高騰が顕著
- 三重県のコシヒカリ:三重県産の主力銘柄「コシヒカリ」でも異常な価格高騰が続いており、2025年の出荷開始時点で概算金(農家への暫定買取価格)が3万円以上となりました。これは例年の1.5倍に相当し、県内量販店では5kgパックが例年の2倍近い価格で販売されています。
- 但馬(兵庫県)JAたじま「コウノトリ育むお米」:JAたじまの人気ブランド米でも概算金が5割以上引き上げられ、店頭価格への反映が懸念されています。実際、消費者への負担増が現実のものとなっています。
概算金(がいさんきん)とは?
米農家がJAなどに収穫した米を出荷する際、仮精算として受け取る「暫定買取金額」が概算金です。不作や需給変動が激しい年は、米の確保をめぐり概算金がつり上がりやすく、JA同士の「米争奪戦」につながります。2024年には3,000円前後だった新米の概算金が、2025年はほとんどの産地で4,500円~7,800円まで上昇しました。
なぜ国の備蓄米放出が遅れたのか?
需給ひっ迫時の価格安定策として国が保有している備蓄米ですが、2025年は放出判断が遅れ、市場全体の不安と価格高騰に拍車をかけた形です。JA秋田会長は「現場や消費者の現実をもっと見て、タイミングよく対策を講じてほしい」と国の対応の鈍さに苦言を呈しました。
今後の見通し――さらに高騰も?
- 天候や害虫の影響が長期化へ:高温障害やカメムシ等による被害の影響は、今後も数年続く可能性があるとの見方が流通経済研究所などの専門家から出ています。
- 消費者市場での“高値定着”懸念:多くの専門家は「しばらくは米価が高止まりしやすい」と指摘。特に新たな備蓄米放出や大規模作付支援なしには、当面は現状が続くとの予測です。
- 需要喚起策や価格調整策の重要性:今後は国・地方自治体の政策対応とあわせて、現場の声にもとづく対策がいっそう求められる局面となっています。
まとめ:今、私たちにできること
今回の米価格高騰は、異常気象や害虫、備蓄対応の遅れといった複合的な要因が重なり、過去に例のない事態と言えます。「生産現場の努力」や「消費者の理解」を繋ぐ新たな流通・行政の取り組みが求められており、国、自治体、そして私たち消費者がともに支え合うことの重要性が今ほど問われている時はありません。