Craifの最新研究とCOO水沼未雅氏の講演——尿中マイクロRNAによるがん予測の最前線

はじめに

近年、がん研究の分野では、早期発見や個別化医療がますます注目を集めています。2025年8月、Craif株式会社による尿中マイクロRNA(miRNA)の活用に関する新しい発表と、COO水沼未雅(みぬまみか)氏による専門セミナー講演が話題を呼んでいます。本記事では、最新研究内容とその社会的意義、また水沼氏の講演内容をやさしく解説します。

尿中マイクロRNAとがん予測の最新研究

2025年8月27日、尿路上皮がん患者の治療において、免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測する新たなバイオマーカーとして、尿中マイクロRNAが有望である可能性が発表されました。この発見は、がん治療の効率化や副作用の軽減、さらには患者ごとに最適な治療法の選択に繋がるものとして期待されています。

  • 従来の方法では個人差を考慮した治療選択は困難でしたが、miRNAという分子を使うことで、より細やかな患者の状態把握が可能になりつつあります。
  • 尿中miRNAは、がん細胞の状態や変化を間接的に反映するため、簡単な検体採取で高精度な診断が見込めます。

Craifの独自技術「NANO IP®」とAIによるリキッドバイオプシー

Craifは、尿などの体液からmiRNAを高感度に検出する「NANO IP®(NANO Intelligence Platform)」を開発しています。さらに、このプラットフォーム上でAI技術を組み合わせることで、大量のmiRNAデータを解析し、がんの有無や病態を自動的に判定する技術を確立しつつあります。リキッドバイオプシーは血液や尿などを使った「切らない生体検査」のことで、体に負担をかけずに詳しい検査ができる点が特徴です。

  • 尿中miRNAのパターンをAIで機械学習させることにより、がんの早期発見や効果予測がより正確に実施可能になります。
  • 患者にとっては、負担が少なく、定期的に検査しやすい利点があります。
  • 医療現場では、治療経過のモニタリングや、効果が現れづらいケースでの迅速な治療方針切替に貢献します。

免疫チェックポイント阻害薬とバイオマーカー探索の重要性

がん免疫療法、とくに免疫チェックポイント阻害薬(例:PD-1やPD-L1阻害薬)は、ここ10年で劇的な進歩を遂げました。ただし、すべての患者に高い効果があるわけではなく、どの患者に効くのかを事前に見極める「バイオマーカー探索」が課題とされてきました。その中で、尿中マイクロRNAの発見は大きな前進といえます。

  • バイオマーカーは「病気や治療効果の指標となるもの」。特に体液から検出可能なバイオマーカーは臨床応用もしやすいです。
  • 尿サンプルは、非侵襲的・痛みがない・自宅でも採取しやすいといったメリットがあります。

水沼未雅COOによる講演:最新セミナーの内容

2025年8月21日、CraifのCOO水沼未雅氏が、グローバルなバイオテクノロジー企業QIAGEN(キアゲン)社が主催する「miRNA(マイクロRNA) シーケンシング関連ウェビナー」にて、「尿中miRNAを活用したリキッドバイオプシー」について基調講演を行いました。

  • 参加者は日本国内外の医療従事者や研究者が主で、最先端研究の共有と意見交換が行われました。
  • 講演では、NGS(次世代シーケンサー)で解析した尿中miRNAデータの意義や、AIを用いた解析の可能性が強調されました。
  • Craifが提唱するNANO IP®技術による高感度・高精度のmiRNA検出の具体例や、これまでの研究成果も紹介されました。

Craif株式会社について

Craif株式会社(東京都新宿区、CEO:小野瀨隆一)は、体液中miRNAを精密かつ簡単に測定できるプラットフォームをベースに、AI解析を組み合わせたリキッドバイオプシーの産業化を目指しています。特に尿がんやその他複数のがん種における早期発見サービス「マイシグナル®」などを展開しています。

  • 2025年8月時点で「マイシグナル®」の導入医療機関は全国1,500軒を突破し、地理的な制約を超えた検診率向上の事例も増えています。
  • 地域の薬局やギフト提案といった新しい健康見守りサービスにも積極的に取り組んでいます。

社会的意義と今後への期待

がんは日本人の死因で最も多い病気であり、「早期に見つけて、早く治療を始める」ことが生存率向上の鍵です。尿中miRNAの簡便な検査が普及すれば、自覚症状がない段階からがんリスクをキャッチできる社会の実現が見えてきます。また、免疫治療薬の個別最適化による無駄の削減と患者負担の軽減は、継続可能な医療システム構築にも寄与します。

  • 世界的にも尿検査を使ったがん診断はまだ発展途上であり、日本発のCraifの技術が国際標準になる可能性もあります。
  • 「健康の見守り」が家庭単位で実現することで、早期対応・重症化回避へのインパクトは計り知れません。

まとめ

本記事では、Craifがもたらす尿中マイクロRNA技術と、免疫チェックポイント阻害薬の効果予測という最新テーマ、そしてCOO水沼未雅氏の講演内容について分かりやすくご紹介しました。「がんの早期発見」「最適な治療の選択」「患者と社会の負担軽減」という3つの観点から、この分野のイノベーションは今後も目が離せません。

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