つくばエクスプレス開業20周年──常磐線と歩んだ地域の20年

2025年8月24日、つくばエクスプレス(TX)は開業20周年を迎えました。首都圏の交通を大きく変えたこの路線は、いまや地域社会や通勤文化そのものに深い影響を与え、毎日の暮らしに欠かせない存在となっています。その背景には、「JR常磐新線」構想から「つくばエクスプレス(TX)」誕生までの経緯や、沿線のまちづくり、そして次の時代を担う取り組みなど、歴史と挑戦が刻まれています。本記事では、そうしたTXと常磐線にまつわる20年の物語をやさしく振り返ります。

なぜ「つくばエクスプレス」は「JR常磐新線」にならなかったのか

「つくばエクスプレス(TX)」は、計画初期の段階では、「JR常磐新線」として整備される案もありました。常磐線は長らく首都圏と北関東・東北を結ぶ大動脈でしたが、戦後の高度成長期、常磐線一本に依存する地域交通では人口増に伴う需要や混雑、遠距離の通勤需要に十分応えることが困難となっていきました。そこで新線建設案が持ち上がったのです。

しかし、1980年代から90年代にかけて、JR東日本は既存の常磐線の混雑緩和策などを重ねる一方、バブル崩壊や国鉄民営化後の経営方針の転換もあり、第二の常磐線となりうる新路線投資へのリスクを敬遠する判断を下します。「新線開業は第三セクター等に任せ、JRとしては“手を引く”」という明確な方針により、のちに第三セクター方式で首都圏新都市鉄道会社(現・TX運営会社)が設立されました。こうして、JR直轄ではなく、全く新しい方式での「TX」として路線計画が引き継がれ、「JR常磐新線」ではなく「つくばエクスプレス」として2005年に開業する運びとなったのです。

開業20年で変わった街と暮らし──つくばエクスプレスがもたらしたもの

TX開業前、常磐線は沿線の中心でしたが、隣接地域の三郷中央駅や流山おおたかの森駅など、新たに誕生した駅や再開発が続々進行し、人口も上昇しました。
例えば三郷市内の三郷中央駅は、TXの開業によって爆発的な街の発展を経験し、住宅や商業施設が集積する新しい都市の核となりました。住民の生活圏も拡大し、かつては“遠い”と感じられた都心やつくば市への通勤・通学も大幅に便利になったのです。

つくばエクスプレス沿線の11市区の人口推移をみても、

  • 2017年には231万人
  • 2025年には248万人超

に増加し、住宅地としての魅力は年々高まっています。

また、沿線の高校・大学進学や、秋葉原〜つくば間を最速45分で結ぶ高速運転ダイヤが人々の時間や移動感覚を根本から変え、街の利便性や暮らしの質そのものを大きく向上させました。研究学園都市つくばや流山・三郷は、いまでは子育て世代にも魅力的な住環境としてみなされ、TXによって地域コミュニティや経済圏までも広がったのです。

地域に愛される路線へ──黒字に転じたTXの経営と成長

TXは開業当初から需要予測を上回る利用が続き、2025年現在、堅調な黒字経営を実現しています。これを支えているのは、

  • 効率的な高速車両運用
  • 他の路線と直接競合しない独自のネットワーク形成
  • 沿線再開発と居住人口の増加

など、現代的な鉄道運営の手法です。開業時、第三セクター方式という新しい試みが不安視された時期もありましたが、20年を経てTXは優等生路線として国内外から注目される存在へと成長しました。

今後も沿線開発や混雑対策、ダイヤ改正、新型車両の導入等で、利用者サービスや利便性向上への挑戦が続くとされています。

TX開業20周年記念イベントと特別施策

2025年8月24日には、秋葉原駅イベント広場で盛大な「開業20周年記念ステージ」が開催されました。ジャズ演奏ライブや「こども一日駅長」任命、新マスコットキャラクター「ユニール」のお披露目、TXとプロスポーツチームのコラボ発表など、多彩な催しが行われ、多くの人でにぎわいました。

あわせて、秋葉原・八潮・流山おおたかの森・つくば駅から発行される「開業20周年記念乗車券」も2000セット限定で発売され、20年の歴史を振り返る台紙や記念写真付きでファンの注目を集めました。

他にも、

  • 三郷市をはじめとする沿線自治体でのイベント情報発信
  • プラレールTX新製品、記念グッズの販売
  • 特設サイトや記念動画の配信

など、鉄道ファンのみならず、地域住民みんなでTXの節目を祝う20年の集大成のような、心温まるイベントが展開されています。

「街を変え 人生を変えた」TXのインパクト──今後の注目点

TXは単なる交通インフラではなく、「街づくり」そのものに大きな影響を及ぼしてきました。秋葉原からつくばへと横断するダイナミックな路線は、多くの人のライフスタイルや将来設計の選択肢を広げてきました。今後も

  • 混雑緩和のための列車増発
  • 駅施設・商業開発の更なる進展
  • 次世代技術を活用した運行・サービスの高度化
  • 災害時のレジリエンス強化

など、多様な課題と向き合い進化を続けていくことになります。

また、沿線11市区の人口推移のデータや、駅ごとの乗車人員の変化からみても、TXの存在が生活圏や経済圏、教育・子育て・医療・文化など、さまざまな分野にポジティブな影響を及ぼしてきたことがわかります。

さらに、TXが今後どのように地域社会や経済を牽引していくのか、「常磐線」との役割分担や新たなネットワーク構築も注目されています。

さいごに──「感謝」の先にある未来へ

つくばエクスプレスは20年もの間、地域とともに成長を続けてきました。これまでの歩みを支えたのは、利用者の皆さんの「毎日の通勤・通学」という暮らしの営みであり、地域の想いでした。
運行会社からのメッセージとして、「これまでの感謝の気持ちとこれからの期待を胸に、今後も進化し続け、社会から愛される鉄道を目指す」とされています。TXのこれからの20年も、地域や利用者の皆さんと共に歩み続け、新しい物語を紡いでいくことでしょう。

「街も人生も通勤も変えたTX」。その足跡を胸に、TXはこれからも私たちの「夢を乗せて」走り続けます。

参考元