日産「R35 GT-R」生産終了――18年の歴史に幕を下ろす名車、その美学と哲学
伝説的スポーツカー「GT-R」が2025年8月、生産終了
日産自動車は2025年8月26日、「R35 GT-R」の生産を終了したことを正式に発表しました。国内外のGT-Rファンにとっては衝撃的なニュースであり、18年間にわたり進化を続けた日本が世界に誇るスーパー・スポーツカーが、ついに「歴史の区切り」を迎えました。栃木工場で生産された最終モデル「Premium edition T-Spec」は、ミッドナイトパープルのボディカラーを纏い、日本の顧客に納車される予定です。
R35 GT-R――進化し続けた孤高のスーパーカー
「GT-R」は2007年にデビュー。R32~R34までの「スカイラインGT-R」から脱却し、「NISSAN GT-R」として開発されたR35は、単なる後継モデルではなく、世界基準で戦えるスペックを徹底追求した存在でした。デビュー当時の価格が777万円からという“バーゲンプライス”でありながら、ポルシェやフェラーリと並ぶ圧倒的なパフォーマンスを持ち、その「キング・オブ・スポーツカー」ぶりはグローバルで称賛されました。
R35 GT-Rは国内でのデビュー後、2008年には北米、2009年には欧州で販売が開始され、世界市場でも高い評価を獲得。18年間で約48,000台が生産され、多くの新規ユーザーと伝統的なGT-Rファンの心をつかみました。
GT-Rの開発思想と美学――「ミスターGT-R」ゴーン氏の采配
「GT-R」プロジェクトを取りまとめたのはカルロス・ゴーン氏。通称「ミスターGT-R」とも呼ばれた彼は、自らの想いを全権委任し、GT-Rに対する揺るぎない美学と哲学を追求しました。開発主査の水野和敏氏や後期モデルを進化させた田村宏志氏らエンジニアの強い信念のもと、“速さの探求”だけでなく、“乗り心地”や“会話ができる静粛性”、そして“量産モデルでありながら最高級のパフォーマンス”という、徹底したGTカーとしてのあり方が磨かれていきました。
- 「時速300kmでも普通に会話できる」快適な走行性能
- 絶え間ない技術革新――サスペンションや電子制御の最適化
- モデルチェンジなしで18年間進化し続けた希有な存在
- 日本車では珍しい“モデルイヤー制”を採用し、毎年改良を続行
GT-Rの社会的意義とその象徴性
R35型GT-Rは「日本発の孤高のスーパーカー」と称されます。欧州勢と肩を並べるほどの性能・ブランド力を誇り、スポーツカーの価値観そのものをアップデートしてきました。通常の乗用車ならば複数回のモデルチェンジを経る長期間でしたが、GT-Rは18年に渡りほぼ同一プラットフォームで改良を重ね続けました。
この“モデルライフの長さ”と“進化のあり方”は、「スポーツカー史」の新たなスタンダードを示し、日産そのものの象徴と言える存在でもありました。仮にR35 GT-Rがなければ、日産ブランドの存続すら危うかったという見方もあるほどです。
最後の一台――栃木工場でのオフライン式
2025年8月26日、栃木工場にて最後のR35 GT-Rのオフライン式(出荷式)が開催されました。世界中のファンが注目するこの式典では、「Premium edition T-Spec」が担当エンジニアによって自ら運転され、工場のメインゲートを通過。深い紫色の「ミッドナイトパープル」が最後の輝きを放ちました。
18年間に計約48,000台が世に送り出され、多くのオーナーと大切な時間、思い出が刻まれました。日産自動車のエスピノーサCEOは「今後のGT-Rの再登場を期待してほしい」とコメントしており、未来への希望も語られています。
GT-Rが与えた自動車文化への影響
GT-Rは、モータースポーツの舞台、一般公道でも“絶対的な信頼と憧れ”を集め、日本自動車史に確固たる地位を築きました。
- 世界の量産スーパーカーと同等以上のスペック
- 日本車の概念を塗り替えた性能と美学
- 幅広い層のユーザーにとって手の届く存在であり続けた
- エンジニア魂と開発哲学を象徴するブランド
さらに、GT-Rは自動車好きだけでなく、幅広い一般ユーザーやグローバル市場でも大きな存在感を発揮しました。スポーツカー愛好者はもちろん、GT-Rに憧れを抱く若者、そして「夢や情熱」を象徴するアイコンとして、文化・社会に深く根付いた名車です。
GT-Rファンへのメッセージとこれから
GT-Rは幕を閉じましたが、その魂は消えることはありません。18年間で培われた技術と哲学は、次世代の日産スポーツモデル、及び新たなGT-Rプロジェクトへ受け継がれることでしょう。「GT-Rを愛した人」「GT-Rに憧れた人」の思いは、クルマの歴史の中で永遠に刻まれ続けます。
最後のR35 GT-Rが生まれた2025年8月26日は、日本のスポーツカー史、日産自動車の歴史、そして世界の自動車文化にとって、記念すべき日となりました。
GT-Rとは何か――歴史と哲学の集大成
- GT-Rの系譜はR32~R34からR35へと進化し、別格の高性能スポーツカーとして進化を重ねてきました。
- その開発魂は「妥協なき挑戦」「常に進化」という日産の哲学そのもの。
- GT-Rの生産終了は、スポーツカーの一つの新しい時代の幕開けでもあります。
- 今後、GT-Rの精神を受け継ぐ新たなモデルの登場――日産ブランドの未来に注目が集まります。
まとめ
2025年8月、日産「R35 GT-R」がついに生産終了。そのニュースは自動車業界だけでなく、多くのクルマ好きにとっても大きな節目となりました。開発者たちの情熱とこだわり、そしてファンの愛情に支えられながら、GT-Rは“孤高の存在”として走り続けてきました。
R35 GT-Rの歩みは、日本の自動車産業、その技術力と美意識、そして夢を具現化した“至高の名車”の証であり、今後も語り継がれることでしょう。