日・モザンビーク首脳会談とLNG開発協力の現状
2025年8月22日、神奈川県横浜市で開催された第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)の場において、日本の石破茂内閣総理大臣とモザンビーク共和国のダニエル・フランシスコ・チャポ大統領が首脳会談を行いました。この会談は両国の今後の協力関係、特にLNG(液化天然ガス)事業と経済開発における新たな展開を象徴する重要な機会となりました。双方は透明性と持続可能な成長を重視しつつ、国際課題への連携も確認しています。
首脳会談の概要と意義
- 短時間ながら実質的な意見交換が行われ、両首脳の信頼関係が再確認されました。両国は多角的な協力を進める意思を明確に表明しました。
- モザンビーク大統領は経済開発、とりわけガス開発事業の早期再開に強い関心と意欲を示し、日本としてもこの分野へのサポートを引き続き行うと約束しました。
- 国際的な課題――例として、気候変動やサプライチェーンの安定確保――についても両首脳は協力の幅を広げていく方針を確認しました。
日本とモザンビークのLNG開発への協力
モザンビークのカーボデルガード州で進むLNG事業は、同国の最重要経済プロジェクトの一つです。日本からは三井物産などの大手企業が出資し、国際的な協力体制が構築されています。会談では、LNG事業の2029年までの早期生産開始を両国首脳が強く後押しする姿勢が確認されました。
- 2023年11月の日・モザンビーク外相会談では、LNG開発が北部地域全体の成長に寄与するとの認識が共有されており、両国は引き続き同州への支援を継続することを約束しています。
- カーボデルガード州の治安維持・インフラ復興も重要な協力分野であり、ODA(政府開発援助)およびオファー型協力を活用した包括的な支援が継続されます。
アフリカ開発会議(TICAD 9)での展開
TICADは1993年に日本が主導して開始され、今やアフリカの40か国以上が参加する重要な国際会議です。TICAD9では「日本はアフリカと共に歩み、解決策を提供し合う信頼できるパートナーであり続けたい」との趣旨で、石破総理自らが日本の覚悟を示しました。
- 今回の会議では300件以上の協力文書が締結され、モザンビークとの経済・開発分野の連携強化もその柱の一つでした。
- 日本は今後も、投資と人材育成・現地産業の育成支援を通じてアフリカと共に成長していく姿勢を明らかにしています。
モザンビークLNG事業の歴史的な意義と現在地
モザンビークは豊富な天然ガス資源を活用し、経済発展の起爆剤としてLNG事業に国を挙げて注力しています。特にカーボデルガード州は埋蔵量が多く、世界的にも有数のガス田を擁しています。多国籍企業と連携した大規模開発が進められており、日本企業の参画は安定的な資金調達や先進技術の導入・人材育成につながっています。
LNGプロジェクトは一時、同州における治安情勢の悪化で停滞していましたが、治安維持・社会インフラ復旧が進みつつある中、日本のODAや企業投資を背景に事業の再始動が加速しています。2029年には本格的な生産開始が見込まれていましたが、今回の首脳会談とTICAD9で両国政府としても政治的に強く後押しする合意がなされました。
- LNG輸出はモザンビークの外貨獲得源となり、また日本にとっても新たなエネルギー供給源確保という戦略的意義を持っています。
- 持続的な地元雇用の創出や関連インフラの整備が、地域の安定と繁栄につながることが期待されています。
治安確保と開発支援――日本の役割
LNG事業の安定操業には、ガス田周辺地域の治安維持が不可欠です。日本は国連や国際機関、市民社会と連携し、カーボデルガード州の復興や治安維持体制の強化にも貢献しています。こうした多面的な支援により、LNG開発は単なる資源ビジネスにとどまらず、モザンビークの公正かつ持続的な開発と社会全体の発展にも波及効果を与えつつあります。
- モザンビークの質の高い成長を支える基盤が整いつつあり、経済安全保障・国際市場へのアクセス向上も視野に入っています。
今後の展望と課題
日・モザンビークの協力は今後、LNG事業を中心にエネルギー、インフラ、雇用・教育、治安維持まで幅広い分野で進展が予想されます。一方で、モザンビーク北部の安定化や現地住民への恩恵拡大、国際エネルギー市場の変動といった課題解決が求められています。官民連携を一層強化し、「パートナーとして共に歩む」姿勢を維持していくことが、双方の発展につながる鍵となるでしょう。
まとめ ― モザンビークと日本の協力の新局面へ
2025年夏に開催されたTICAD9と、それに併せて行われた日・モザンビーク首脳会談は、LNG事業を核とする包括的な協力の進化を鮮明に示しました。治安維持や人材育成も含め、長期的なパートナーシップを前提とした新たな局面を迎えています。日本はモザンビークと手を携え、アフリカの自立的成長と安定の実現を引き続き支えていく考えです。両国の協力は、資源・開発・人材・平和の各分野にわたり、両国民に新たな希望と未来をもたらすことでしょう。