MUFGをはじめとする日本のメガバンク、グローバル資産運用拡大へ本格始動

2025年8月現在、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)を中心とした日本のメガバンクは、グローバルな資産運用事業の拡大に積極的に舵を切っています。みずほフィナンシャルグループなど主要銀行も含め、海外の運用会社との提携・買収や独自のサービス拡充を通じ、国際競争力の強化と長期的な収益基盤の確立を目指す流れが加速しています。

グローバル資産運用分野への進出の背景

資産運用分野へのグローバル展開は、急速な市場変化が背景にあります。

  • 世界的な金利上昇:これまでは低金利環境が続いていましたが、直近の世界経済では金利が上昇傾向にあります。これに伴い「金利ある世界」の到来と呼ばれる新たな潮流が到来し、資産運用に対する関心が高まっています。
  • 国内市場の成熟と競争激化:国内の預金ビジネスは成長の余地が限られており、持続的な成長のためにはサービスの多角化とグローバル展開が不可欠となっています。
  • デジタル化と顧客ニーズの多様化:金融サービスに対するデジタル化の進展や、相続・資産承継、多様な投資ニーズへの対応が求められています。

これらの要素を踏まえ、MUFGは「世界が進むチカラになる」というパーパスを定め、中長期的な企業価値向上と安定的な収益基盤の強化に取り組んでいます。

MUFGの戦略とグローバル拡大の具体策

MUFGは、これまでに以下のような施策を展開しています。

  • グローバルネットワークの拡充:約25ヵ国・9,200人以上のグローバル役職員と拠点を持ち、国際事業の基盤を整えています。これは、「アンカー投資」や中東・欧米などの多様な金融ネットワーク拡大の成果です。
  • 資産運用サービス強化:三菱UFJ信託銀行をはじめとするグループ会社が連帯し、高度なアセットマネジメント機能やソリューション提供体制を構築しています。
  • 積極的な海外事業のポートフォリオ拡充:ウェルスナビ、eスマート証券、マネーツリー、全保連といった関連企業の完全子会社化や持分拡大を実現し、グループ内機能を統合しています。
  • デジタルバンクの企画・設立:リテール戦略の一環として、新しいサービスブランド「エムット」を立ち上げ、26年度には共通IDやポイント制度、デジタルバンクの展開も見据えています。
  • ウェルスマネジメント新サービスの推進:プロ・個人投資家双方に向けて、デジタル&対面のベストミックスを追求する「Wealth Canvas」など先進型サービス開発に取り組み、資産承継や事業承継、資産管理の一括ソリューションを提供しています。

みずほなど他銀行の動向と市場競争

MUFG以外にも、みずほフィナンシャルグループをはじめとする日本の主要銀行が、海外運用会社の買収や海外事業強化に動いています。手法としては、欧米ファンド会社の買収・提携や、米国やアジアでの資産管理業務拡充が進行中です。

  • みずほは、グローバルアセットマネジメント領域で米国や欧州、アジアの運用会社との提携交渉や出資拡大に注力しています。
  • MUFGも、米国ユニオンバンク売却による資本の再配分と共に、海外投資マネージャーとの協業やファンド事業の設立を進めています。
  • 各行ともに、質(収益性やリスクマネジメント)・量(資産残高)の両面で成果が表れており、経営指標としてROE(自己資本利益率)はコロナ禍以前の2倍規模まで改善しています。

デジタル化・金融DXの加速と新たな価値提供

日本の資産運用市場ではデジタル化の波が加速しており、MUFGはフィンテック企業との協業や独自サービス開発を通じて金融DXの新時代を切り拓いています。

  • デジタル銀行の設立や共通IDシステムの導入で、顧客利用体験を向上。
  • 資産運用に関する情報発信やコンサルティングサービスをオンライン化し、顧客との深い“つながり”を構築している。
  • 若年層からシニア層まで、幅広い世代・顧客層に対して多様な運用・承継ニーズに応えるソリューション提供が進行中。

今後の展望と課題―より繋がるMUFGの姿

MUFGをはじめとするメガバンク各社は、「家族、世代を超えて、ずっとつながるMUFG」をビジョンに掲げ、個人のライフステージ・企業の成長戦略に寄り添う金融サービスの提供を拡充しています。

  • 共通ポイントやロイヤリティプログラムの導入で、顧客との長期的な関係維持を図っています。
  • 海外資産管理残高やグローバルネットワークの拡大により、国際競争力を保持。海外法人顧客や機関投資家向けの高度な資産運用サービスにも成長余地があります。
  • 一方、「量の拡大」から「質への転換」も重視し、手数料収益の多様化など事業ポートフォリオの最適化が課題です。
  • 持続可能な資産運用のためのリスク管理機能強化や、環境・社会・ガバナンス(ESG)投資への対応も求められています。

まとめ:MUFG・日本のメガバンクの新たな成長局面

日本のメガバンクは、グローバル資産運用事業の展開・強化を通じ、持続的な成長と安定的な収益基盤の追求に本腰を入れ始めました。MUFGを中心に多様な金融機能とネットワークを生かし、「つながり」を軸とした新たなアプローチ、デジタル化の推進、サービスブランドの刷新によって、個人・法人の多様なニーズに応える金融グループへと進化を続けています。今後も国内外の金融市場での競争力強化、および中長期的な企業価値創出に向けて、大型投資・サービス開発が加速する見通しです。

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