中谷防衛大臣がジブチを訪問、自衛隊拠点の整備と隊員支援を強化――ヨルダン国防相と会談し邦人退避協力に謝意

はじめに

2025年8月18日、中谷元防衛大臣はジブチ共和国にある自衛隊拠点を訪問しました。現地での臨時記者会見や、ジブチおよび周辺諸国の要人との意見交換を通じて、中谷大臣は拠点の強化や隊員支援の拡充、そして地域安全保障の重要性について強調しました。その背景には、中東・アフリカ地域での安全保障環境の変化と、在外邦人保護のさらなる充実への取り組みがあります。また、同時期にはヨルダン国防相との会談も行われ、日本人の安全な退避に向けた協力が確認されました。

ジブチ拠点の重要性と自衛隊の役割

ジブチはアフリカ東部に位置し、紅海とインド洋を結ぶ海上交通の要衝です。この海域は世界的な物流の大動脈であり、海賊やテロなど多様な脅威が存在することから、多くの国が戦略的に重視しています。日本は2011年に自衛隊の海外拠点をジブチに設置し、主にアデン湾における海賊対処行動や、突発的な邦人の輸送・退避任務の拠点として活用してきました。

自衛隊拠点が設置されてから約14年が経過し、インフラ面や隊員の生活環境の老朽化が懸念される中で、現地の緊張や急変にも対応できるよう、拠点の維持・強化が不可欠となっています。

中谷防衛大臣の現地視察と会談の概要

中谷大臣は8月18日(現地時間)、ジブチ自衛隊拠点を訪問し、臨時会見を行いました。会見では以下のようなポイントが語られました。

  • 拠点施設の改修工事や、生活環境の改善など拠点機能の底上げ
  • 隊員処遇の見直し、メンタルケアや通信環境整備など多角的支援の推進
  • ジブチが担う“戦略的拠点”としての役割拡大と、「自由で開かれたインド太平洋」の実現への意欲
  • 酷暑下や厳しい任務環境で任務を果たす自衛隊員への誇りと謝意

これらの発表に先立ち、中谷大臣はゲレ大統領ハッサン国防大臣代行ディレイタ国民議会議長らと相次いで会談を行いました。長年にわたる拠点提供や現地政府の協力に対し、日本政府を代表して深い謝意が伝えられました。

また、ジブチが欧州とアジアを結ぶ交通の要衝であることから、今後も安全保障面でのパートナーシップを強化し合い、現地の安定化に寄与するとの姿勢が確認されました。

自衛隊拠点整備・隊員支援の具体策

ジブチ拠点の今後に向け、中谷防衛大臣は施設改修や新たな機材導入のほか、隊員への総合的な支援強化を表明しました。特に以下のような点が重視されています。

  • 生活インフラの整備(居住棟・水道・電力・衛生設備等)
  • 長期派遣者のための福利厚生や休養体制の充実
  • 遠隔地医療体制の強化、および心理的ケア・相談体制の拡充
  • 無線通信やインターネット、ITインフラの整備
  • 想定外の事態にも即応できる指揮・輸送体制の強化

これにより、日本の安全保障や周辺国への貢献だけでなく、現地で職務に従事する自衛隊員が安心して任務を果たせる環境の実現が目指されています。

ヨルダン国防大臣との会談と、邦人退避協力への謝意

また、中谷大臣はジブチ訪問の前後にヨルダン国防大臣と会談しました。近年、中東地域では不安定な情勢が続き、イスラエル及びイラン間などで軍事的緊張が高まっています。これらの地域で安全確保が重要となる在外邦人や企業関係者の“緊急退避計画”の実効性は大きな課題です。

日本は過去に中東・アフリカ各地でC2輸送機による邦人輸送を行った実績があり、ヨルダン政府も中継・支援拠点や協力部隊の提供などで重要な役割を担ってきました。

今回の会談でも、日本側からヨルダン側に対し、邦人の安全な退避への協力への深い謝意が伝えられ、引き続き二国間の緊密な連携体制を維持し、安全保障分野におけるパートナーシップの強化が確認されました。

現地自衛隊員の声と日本国内の反応

ジブチ拠点で活動する自衛隊員からは、今回の大臣訪問により「現場の声に直接耳を傾けてもらえた」「職場環境のさらなる改善に期待したい」といった前向きな声も聞かれました。

また日本国内でも、派遣隊員の家族や関係者を中心に、処遇・生活環境の改善や隊員のメンタルヘルス支援の実現を求める動きが活発になっています。防衛省としても、積極的な情報発信や現地自衛隊員の声を政策形成に反映させていく方針です。

「自由で開かれたインド太平洋」とジブチの未来

中谷大臣が記者会見で繰り返し述べたのが、「自由で開かれたインド太平洋」の推進というビジョンです。これは、日本が掲げる外交・安全保障戦略の一環であり、多様なパートナー国と共に法の支配・開かれた貿易・平和的秩序を維持拡大するものです。

ジブチ拠点の強化と現地部隊の支援は、この戦略の中核をなす施策であり、今後も地域の安定に貢献しながら、日本とジブチや中東・アフリカ諸国との信頼と協力を深めていくことが求められています。

おわりに

2025年8月18日の中谷防衛大臣ジブチ訪問とその一連の会談は、日本の海外安全保障戦略における大きな節目となりました。拠点整備や隊員支援の強化は、厳しい現地任務に従事する自衛隊員の士気を高めるとともに、国際社会における日本の責任と存在感を示すものです。

そしてヨルダンなどパートナー国との連携によって、安全保障環境が日々変化する中でも、邦人や日本企業の安全、ひいては地域と世界の平和と安定に日本が主体的に関与できる基盤が着実に築かれつつあります。今後もこうした努力の積み重ねが、多くの命と平和な暮らしを守っていく原動力となることでしょう。

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