ひやむぎの魅力と「ピンク麺」「緑麺」の裏側に迫る――揖保乃糸ブランドの手作業と歴史、そしてそうめんとの違い

はじめに

ひやむぎは日本の夏の定番麺料理として広く親しまれていますが、最近ひやむぎに入っている“ピンク麺”や“緑麺”が注目を集めています。なぜなら、そのカラフルな麺が、実は一本一本、人の手で丁寧に混ぜられているという意外な裏側が明かされたからです。また、「そうめんとひやむぎの違いが分からない」「間違えて買ったことがある」といった声も少なくありません。本記事では「揖保乃糸」ブランドに代表されるひやむぎの歴史や製造現場、そしてそうめんとの詳しい違いについて、分かりやすく紹介します。

カラフルなひやむぎ――“ピンク麺”“緑麺”の秘密

ひやむぎを買うと、多くの場合、ほんの数本だけピンクや緑色の麺が束の中に混ざっているのをご存知ですか?このカラフルな“ピンク麺”や“緑麺”には、一体どんな意味や背景があるのでしょうか。また、それらがどのように作られて私たちの食卓に届くのでしょうか。

  • ピンクと緑の麺が混ざっている理由について、「揖保乃糸」の販売元では“見た目”や“遊び心”を楽しんでもらう狙いがあると説明しています。
  • お子さまが「今日はどの色が入っているかな」と楽しみながら食事ができる工夫や、食卓を彩るアクセントにする狙いも含まれています。
  • 驚くべきことに、ピンクや緑の麺は工場で自動的に混ぜられているのではなく、実際には1本ずつ手作業でひやむぎの束に混ぜるという伝統的な方法が用いられています。

この手作業は機械で行うのが難しく、「ひやむぎ=特別な料理」「食卓のひとときを楽しんでもらいたい」という生産者の想いが込められています。こうした丁寧な手間暇こそが、ひやむぎの伝統と価値を守り続けている秘密なのです。

ひやむぎとそうめん――いったい何が違う?

「ひやむぎとそうめんの違いがわからない」「間違えて買ってしまったことがある」という人は多いのではないでしょうか。実際、両者は非常に良く似ており、お店でも隣同士で販売されています。そこで、「揖保乃糸」の手延素麺協同組合の担当者やメーカーの説明をもとに、その違いを整理します。

  • 見た目・太さの違い:
    • そうめん:一般的に直径1.3mm未満。とても細く、つるつるとした喉ごしが特徴です。
    • ひやむぎ:直径1.3mm~1.7mmほど。そうめんよりやや太めですが、うどんより細いです。
  • 原材料の違い: そうめん・ひやむぎともに主な原料は小麦粉、食塩、水でほとんど差はありません。しかし製造方法には違いがあります。
  • 製造方法の違い:
    • そうめん:多くは「手延べ製法」で、熟成と引き伸ばしを繰り返し極細に仕上げます。
    • ひやむぎ:同じく手延べ製法が主流ですが、太さに合わせた工程や熟成期間が若干異なります。
  • 食感の違い: ひやむぎは「もちもち」としてコシがあり、つるっとした喉ごしを楽しめます。一方、そうめんは非常に滑らかで軽い食感が際立ちます。

製造時期にも違いがあります。「揖保乃糸」を例に取ると、そうめんは通常10月から翌年4月にかけて製造され、寒い時期に熟成や乾燥を行うことで品質の安定を図っています。それに対し、ひやむぎの製造は5月と9月が中心です。これは、太さゆえに「のばし」と「熟成」の温度管理がより繊細であるためです。

また、地域による“なじみ”にも差があります。手延素麺は西日本で多く製造されています。そのため西日本では「そうめん文化」が強いですが、東日本では「ひやむぎ文化」が根付いてきました。しかし最近では、関東地方でも「そうめん」の認知度がひやむぎを上回るようになっています。

「揖保乃糸」ブランドのこだわり――変わらない伝統製法

兵庫県播州地方で作られている名高い「揖保乃糸」ブランドは、そうめん・ひやむぎともに伝統的な手延べ製法を守っています。材料は小麦粉(中力粉)、塩、水、そして乾燥防止の綿実油を使用。複数回の「こね」「寝かし」「のばし」「熟成」を経て、36時間以上の工程を重ねて作られています。

  • 生地は何度も寝かせながら、徐々に長く、細く仕上げられます。
  • 最後まで均一な太さに仕上げるため、熟練の技術が要求されます。
  • 最後は隙間なく麺を束にし、乾燥工程で最適な食感を作りだします。

また、「そうめん」は出来たて即出荷の「新(しん)」と、1年以上熟成させた「ひね」に分かれ、「ひね」はコシや喉ごしがさらに向上します。ひやむぎにも同様の管理技術が活きています。

ひやむぎとそうめんの使い分けと調理例

どちらも冷やしてつゆにつけて食べるのが代表的な方法ですが、実はひやむぎには温かいアレンジもおすすめです。特に、体が冷えた時や夜食にもぴったりです。

  • 冷製: うどんより軽やかな食感で具材や薬味との相性が抜群。
  • 温製: 温かいスープ仕立てやチャンプルー(炒め物)にも活用できます。
  • サラダ仕立て: カラフルな麺を活かして、見た目にも楽しい「ひやむぎサラダ」に。
  • 家庭用から贈答用まで: 伝統を守る「揖保乃糸」「大矢谷金魚印」などが根強い人気です。

食塩無添加タイプなど健康に配慮した商品も近年増えてきています。茹で時間や食感、麺の太さなどを比べて自分好みの銘柄を見つける楽しみもあります。

「ピンク麺」「緑麺」に詰まった生産者の想い

最近とくに話題になったのが、カラフル麺の混ぜ込み工程。本来食品製造の現場は効率が重視されがちですが、ピンク麺・緑麺の手作業は食卓を大切にする日本独自の文化・美意識が息づいているとも言えます。

忙しい現代において、手間暇かけられたひやむぎをいただくという事実。それ自体が、私たちの食体験や日常をちょっと豊かにしてくれる、小さな幸せなのかもしれません。

まとめ:知っておいしさ倍増!ひやむぎと日本の夏文化

ひやむぎは、見た目の美しさと食感の楽しさ、食卓を囲むワクワク感が込められています。その陰には、伝統的な手延べ製法や生産者の丁寧な手作業、細部までこだわり抜いた日本のものづくりの精神が存在します。“ピンク麺”“緑麺”はその象徴です。

また、ひやむぎとそうめんの違いを知れば、自分や家族にぴったりの一品を選ぶ楽しみも広がります。暑い夏の日、家族や友人と食卓を囲み、色とりどりのひやむぎで「小さな幸せ」を感じてみませんか?

これまで何気なく手に取ってきたひやむぎ――その一本にも、実はたくさんの“物語”と“想い”が込められていました。

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