愛知県豊明市、「スマホは1日2時間まで」の条例案提出へ
豊明市が全国初の全住民対象スマホ利用目安条例案を議会に提出
2025年8月21日、愛知県豊明市は「仕事や勉強を除くスマートフォンなどの使用時間を1日2時間以内に抑えることを目安とする」条例案を、9月の定例市議会に提出する方針を明らかにしました。この条例案は、小中学生や家庭だけでなく、市内すべての住民を対象とするものとして、全国でも初めての試みとみられています。
条例案の内容と目的
- 条例名:「豊明市スマートフォン等の適正使用の推進に関する条例」
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規定内容:
- スマートフォン・パソコン・タブレットなど、生活必需品としてのデジタル機器の利用を「仕事や勉強等の目的以外」に限って1日2時間以内とする目安を市全体に推奨。
- 18歳未満の子どもに対しては、睡眠時間確保のため、
- 小学生以下は午後9時以降、
- 中学生以上は午後10時以降の利用を控えること
を盛り込む。
- 罰則規定はなく、あくまで目安として「スマホ利用について考えるきっかけ」を提供するための条例。
- 市・学校・保護者が連携し、家庭や社会での「適正利用」を推進。
条例制定の背景
近年、スマホやタブレットなどのデジタル機器が生活必需品となり、SNSや動画視聴、ゲームなどが急増しています。特に若年層や子どもの夜更かし・学力低下・家庭内コミュニケーションの希薄化・健康への悪影響が社会問題となってきました。豊明市では、スマホの長時間利用が及ぼす生活や健康へのリスクを重く捉え、「社会全体で適切な使い方を考え直す契機をつくりたい」としています。
担当者は「全住民を対象にすることで、大人自身が手本を示すこともできる。家庭や地域社会で話し合い、現状を見直すきっかけになれば」と述べています。
香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」との違い
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香川県では2020年、「ゲーム・スマホ依存対策条例」が制定されていますが、豊明市の条例案とは対象や内容に大きな違いがあります。
- 香川県:青少年(18歳未満)がネットやゲームをする場合、1日60分までを目安とした制限。条例には「努力義務」規定。
- 豊明市:年齢を問わず、すべての住民に“1日2時間”という目安を示し、市民全体の行動変容を目指す。罰則・義務化はなく、各家庭・本人の自主的判断に委ねる。
市長は「特定の世代だけに求めるものではなく、大人も含めた地域全体で健康な生活を考える条例」と説明しています。
条例案に対する市民や専門家の反応
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市民の声:
- 「ルールが明確で家庭での話し合いに活かせる」「子どものスマホ利用を制限するのは難しくなっていたので、よいきっかけになる」など肯定的な意見。
- 一方で、「日常の連絡や情報収集も多い中で、厳密な時間管理は現実的でない」といった実効性に疑問の声も。
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教育・医療現場の意見:
- 「長時間のスマホ利用は睡眠不足や学力・身体発育に影響する」「大人もスマホ依存気味の人が増えており、全世代で生活習慣の見直しが必要」と専門家が指摘。
- 「家庭や地域で会話する機会を増やすきっかけとしては効果があるが、社会全体の意識改革が重要」とアドバイス。
今後の動きと展望
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今後のスケジュール:
- 条例案は9月の豊明市議会に提出。
- 可決された場合、2025年10月1日に施行予定。
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今後の課題:
- 条例が罰則なしで自主的な取り組みであるため、市民の協力と各家庭の理解が不可欠。
- 子どもだけでなく大人も巻き込む「全住民条例」としての実効性や、市民の生活スタイルにどう浸透するかが注目されている。
まとめ
豊明市の「スマホ1日2時間目安」条例案は、全国初となる全住民対象のスマホ利用時間に関する自治体ルールとして、生活習慣病や依存症予防、家庭や地域社会のつながり強化を目指しています。罰則を設けず自発的な行動変容を促すスタイルは、現代社会のスマホ依存への新しいアプローチといえます。
今後、この条例をきっかけに豊明市民の生活がどのように変化していくのか、また他の自治体にも波及するのか、大きな注目が集まっています。