パンダなき白浜、観光客1万人減――町が挑む「依存脱却」と新たな白浜の未来
パンダ返還で揺れる白浜――1万人減の衝撃
2025年夏、和歌山県白浜町の観光業界はこれまでにない大きな変化に直面しています。アドベンチャーワールドのパンダ4頭返還から約2カ月が過ぎ、観光地白浜町に劇的な影響が現れています。
7月のホテル宿泊者数は前年比約1万人減
- 旅館「むさし」女将は「まだまだ部屋が空いている。秋まで影響が続けば経営が厳しい」と語る
- 民宿「innしらはま海の宿」では予約キャンセルが相次ぎ、客数が半減
- 「瀬戸の小宿 大源」女将も「パンダ目当てのお客が多かったので今後が不安」と漏らす
観光業者からは「パンダの返還によって客足が遠のいた」という現場の声が相次ぎ、町としても非常に重大な事態と受け止めています。
「パンダのせい」に頼らない――町長の決断と危機感
多くの事業者が「パンダがいないせい」と嘆く中、白浜町の大江康弘町長は現状の打開を目指しています。
町長は、「1万人減少という数字の前に立ちすくむのではなく、『パンダがいなくなったせい』という循環を止め、新しい魅力をつくる挑戦の必要性」を強調しています。
実際に、町役場前に掲げていたパンダ看板を7月に撤去し、「今までできなかった新しいことをやっていこう」と前向きな姿勢をみせています。
- 町長は「今後は世界のリゾートを目指す」と宣言
- 地元有志は「パンダだけに頼る循環から抜け出すべき」と声を揃える
ただし、中国パンダ再誘致に向けて与党議員団が春に交渉を行っていた事実もあり、町としても観光資源再編に苦悩しつつ多面的対応を探っています。
パンダ消失の背景――観光都市・白浜の強さと弱点
パンダは1988年からアドベンチャーワールドのシンボルとして長く親しまれ、白浜観光の中心的役割を担ってきました。家族連れを引き寄せ、町の宿泊業を潤し、毎年多くのメディアがパンダを巡る取り組みを報道してきました。
しかし、パンダ人気が高まりすぎた結果、観光業が「パンダ依存」の構造になったと指摘されています。地方創生・観光活性化の好例でもあったものの、パンダ返還という想定外の事態が白浜町の経済基盤・観光戦略の脆弱性を露呈させました。
盆の白良浜と地元の新たな活気
一方、夏の白良浜は例年どおりテントやパラソルで賑わい、美しい砂浜や海を求める観光客で彩られました(ニュース内容3)。白浜温泉や自然、海を楽しむ来訪者は一定数おり、町は「パンダ以外の可能性」に目を向け始めています。
- 夏休みやお盆期間はファミリーやカップルを中心に海水浴客が多い
- インフラ整備を進め、SNSや地域イベントで魅力発信を強化
- 地元飲食店も新メニューや体験型サービスを導入
また、今月1日には白良浜に新しいバーガーショップがオープンするなど、「パンダ以外」へのチャレンジも始まっています。
観光業者の苦境――危機感と模索する未来
宿泊施設関係者からは存続の危機感が色濃く語られます。宿泊予約の減少は経営直撃となり、「このまま客足が戻らないと廃業もやむなし」と悲痛な意見も聴かれます。
一方、町長は「新たな挑戦で”パンダ頼み”から脱却する」とし、観光資源の再建・拡充に動き出しています。
- 白浜温泉、アドベンチャーワールド以外の施設・体験・イベント拡充
- スポーツ大会や音楽イベント、ご当地グルメの普及
- 地域住民・事業者との連携を強化し、地元主体の観光戦略を模索
「パンダロス」のインパクトは大きく、地域をあげて構造転換が求められており、町全体が正念場を迎えています。
全国が注目する「白浜危機」――観光の持続可能性とは
白浜の現状は、全国の観光地からも注目されています。人気動物や施設への依存が深まれば、天災・返還・閉鎖などの外部要因で一気に基盤が崩れるリスクがあり、持続可能な観光地づくりの重要性を示しています。
町長の「循環を断ち切る」決意は、白浜のみならず日本各地の観光地にも新たな議論を提供しています。町がこの危機を乗り越え、”パンダがいなくても光る白浜”に生まれ変われるか――。今後の白浜の動向に注目が集まります。
町民・観光客・経営者――それぞれの想い
町民は「寂しいが、パンダ以外にも白浜には魅力がある」と前向きな声もあります。一方、子ども連れの観光客は「パンダ目当てで来ていたが、海や温泉もゆっくり楽しみたい」と話しています。
また、白浜町内外の経営者・専門家からは、「今こそ観光の分散化を進め、地域資源を再評価するべき」と提言も出ており、町の今後に大きな期待が寄せられています。
これからの白浜――「失われた1万人」をどう取り戻すか
- パンダ依存からの脱却、新しい観光資源の開発
- 地元主体の観光戦略、イベントや地域体験の充実
- 白良浜など自然と温泉の魅力発信
- 協働による危機乗り越えと「持続可能な観光地」モデルの確立
新たな白浜の物語は、まだ始まったばかりです。パンダのいない白浜が、どのような未来を描いていくのか。地域の自主性と創意工夫が問われる、かつてない転機となっています。